屋代線紀行(13)松代駅 その3

この松代駅ホームの見所のひとつとして、駅舎側3番線ホームの屋代方に、大きな操作てこ小屋(操作てこ扱い所)跡があるので、見に行こう。ポイントや信号機を切り替え操作する為のもので、昔の鉄道では、電動ではなく、人力で動かしていた。また、てこ数が多いので、昔あった貨物側線用もあるのだろう。


(1・2番線ホームからの操作てこ小屋。)

大きな操作てこは11本あり、錘に書かれた白字を見ると、上り3本、下り2本の場内・通過・出発信号機用(※2)になっている。現在は、須坂方が上り、屋代方が下りだが、かつての屋代は国鉄信越本線と線路が接続し、屋代駅構内に0kmポストがある事から、当時は屋代方が上りであった。なお、この操作てこが使われていた当時の信号機は、現在使われている色灯式信号機(ランプ点灯式)ではなく、腕木式信号機である。


(操作てこを前後に動かし、ポイントや信号機を遠隔操作した。)

黄色い木製プレートが括りつけられており、字が褪せているが、解読すると、「松代駅 第二種桟械連動 集中 信号桟・転てつ器 て子◯(桟?)」と書かれている。(※「桟」=「機」の省略漢字。転轍機「てんてつき」=ポイントの事。)

第二種機械連動(装置)とは、相互関係のある転轍機(ポイント)と信号機を、機械的に同時に動かしたり、ロック(鎖錠)する仕組みの事である。人為的操作ミスによるポイント破損、脱線事故を防ぐ保安装置であり、ポイントの開通方向と信号機の現示を完全一致させ、複数あるポイント同士の誤った組み合わせを防ぐものである。


(黄色い木製プレート。)

操作てこの根本には、ワイヤーの端を固定する大きなドラムとその真下に空洞があり、ホーム下の切り欠きからワイヤーを線路脇に出す。更に、そのワイヤーが伸びて、転轍機や信号機に接続し、遠隔操作される。なお、今の自動転轍機や色灯式信号機は、電気動力と電気信号でコントロールされているので、これらの操作てこは使われていない。小屋も撤去される事も多いので、これだけ残っているのも貴重である。


(操作てこのドラム部分。)

1・2番線ホームから、駅舎と3番線を眺めてみる。駅舎本屋と操作てこ小屋の間には、屋根付きの大きなスペースがあり、鉄道手小荷物の集積や荷捌きに使われていたかもしれない。しかし、貨物ホームは残っていない。もしかしたら、現在のスーパーマーケット付近にあったのかもしれない。また、それを仮定すると、この駅が右側進行の特例駅であるのは、屋代方からの貨車を駅舎側の貨物ホームへ引き込み、東京方面と接続した屋代方に出す為かもしれない。想像が膨らむ所である。


(島式ホームから駅舎全景。)

改札口と待合室に向かおう。この松代駅も、白漆喰の壁と木目が浮き上がった柱部分の対比が、とても美しい駅舎である。改札口には、鉄製ポールの簡易な柵が設けられている。なお、元の客車ホームの高さの約76cmから、約30cmの嵩上げがされている為、改札口前に緩やかな傾斜がある。


(改札口周辺。)

改札口近くに掲げられた板書きの列車遅延案内や「定期券拝見」の木札がとてもレトロで、駅の長い歴史を感じさせる。


(古い手書きの列車遅延案内板。国鉄風であるが、少し違うのが面白い。)

(古い手書きの案内板。当時の駅員の手作りであろう。)

改札口の直ぐ横に出札口があり、木をふんだんに使った開業当時のものである。自動券売機はなく、硬券切符を発券しており、口座数(行先別種類)も多い。


(出札口。)

出札口の左隣は、鉄道手小荷物窓口(チッキ窓口)跡である。この危険物禁止のホーロー看板も、昔は窓口周辺で良く見る事が出来た。現在は、携行品一時預かり(一日300円)や、駅レンタサイクルの受付窓口になっている。駅レンタサイクルは、冬季を除く、朝9時から夕方17時までの貸し出しが可能との事。レンタル料金は無料で、傷害保険料100円の利用者負担のみで、借りる事が出来る。


(当時そのままの手小荷物窓口跡。)

(危険物持ち込も禁止のホーロー製看板。)

待合室の広さは、二十畳程と大きく、屋代線の他駅の木造駅舎よりも天井が高い。北東側須坂方の窓沿いには、木造ロングベンチが幅一杯に据え付けられ、地元の人が持ち込んだ手作りの座布団が並ぶ。採光の大きな窓や出入口はあるが、昼間でも少しばかり薄暗い雰囲気が、木造駅舎の落ち着く持ち味である。また、沿線の代表的な観光地になっているので、ガイドマップやパンフレット等も沢山置いてある。


(待合室と改札口。※同日早朝の撮影。)

(待合室のロングベンチ。)

改札口横の壁には、古い電光広告看板と使われなくなった列車案内表示器もある。これは幕式電動タイプらしいので、戦後に設置されたものであろう。

(つづく)


2019年9月19日 ブログから転載・文章修正・校正。

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