屋代線紀行(14)松代駅 その4

駅前に出てみよう。大きなガラス入りの木製引き戸の出入口が、そのまま残っている。出入口の右手には、外壁に取り付けられた木造ロングベンチ、左手に真新しい電光式案内地図が設置されている。ここだけが現代風であるが、一般観光客の利用も多い駅なので、致し方ないだろう。


(駅出入口。)

(電光式案内地図。)

朝露を置いていた早朝の駅舎は、陽が当たり、明るい表情になっている。軒下トタン壁の「安全」の大文字が印象的である。乗客が出入りする駅舎正面に鉄道現場の安全標語があるのも、珍しいかもしれない。また、松代町内の観光地を巡る、ミニ路線バス「松代ぐるりん号」のバス停もあるが、観光ハイシーズンの土曜日と日曜日のみの運行となり、この時期は運休になっている。


(駅舎と一本松。)

駅前ロータリーはないが、道幅はかなり広い。木造駅舎と松の木がさり気なく一本、日本的な風情を感じさせる。


(駅前からの駅舎全景。)

駅舎前には、童謡「汽車ポッポ」の石碑も鎮座している。作曲者の草川信氏は、この松代町出身であるそうで、記念に建てられたとの事。また、童謡「ゆりかごのうた」や「夕焼小焼」も、草川信氏の作曲である。この「汽車ポッポ」は、元々、日中戦争で出征する兵士を送り出す歌として作られ、戦後に改作されて、広まった曲になっている。素朴で日本的なメロディーは、この松代の風土に影響されているかもしれない。


(汽車ぽっぽの歌碑。)

傍らには、旧町名・字(あざな)の石柱もある。天辺が変わった形だが、松代城主だった真田氏の家紋「六文銭」をデザインしている。


(六文銭の旧町名案内柱。)

駅舎横には、屋根付きのスペースがあり、駅レンタサイクルの保管、自動販売機置き場や公衆電話ボックスに使われている。団体取り扱いや祭事混雑時などの臨時改札口跡と思われる。また、出入り口横の木造ベンチの上には、藍色の大きな暖簾が掛かっており、雰囲気を盛り上げている。


(駅出入口と外の屋根。)

(臨時改札跡。)

(駅出入口ベンチ上の紺暖簾。)

駅舎北東側の木枠窓もグラッシーで見事である。屋根で風雨がしのげるので、保存状態が大変良い。軒や天井が高い為、窓が他の木造駅よりも大変大きく、上部には連続小窓も付いている。


(駅舎妻面の大型窓。)

駅の向かいには、昭和の雰囲気がたっぷりな松代タクシーの車庫もある。松代町内で、一番古いタクシー会社との事。観光タクシーもあるそうで、グループ旅行や足腰の不安な場合の観光に便利だろう。
松代タクシー公式HP


(松代タクシー営業所。)

このまま、途中下車をして、午後は松代観光に出かける事にしよう。自家用車を駐めてある松代駅西の市営観光駐車場に戻り、支度し直した後に出発。所々の雲と青空が見え、気温も上がって、良い散策日和になっている。

丁度、正午を過ぎた所なので、その前に腹ごしらえと行こう。観光案内所に立ち寄った後、駅近くの真田宝物館の南に行くと、「おやきや総本家松代店」があり、奥に食堂もあるそうなので、ここにしよう。なお、店頭にベンチとお茶の無料サービスがあり、自由に寛げる。
おやきや総本家 公式HP


(おやきや総本家松代店。)

(店頭の大暖簾。)

出入口の左側が土産店、右奥が食堂になっている。お店の人にお願いし、足が伸ばせる座敷に座ろう。観光地であるが、肩肘が張らない町食堂の感じである。今日は、晩秋としては暖かく、少し汗をかく陽気なので、ざる蕎麦(680円)を注文。早朝から屋代線に乗車し、かなりの空腹でもあるので、看板商品のおやき2個(1個150円)と地元産林檎100%ジュース(300円)も追加する。10分程すると、蕎麦が出てきた。

普通のざる蕎麦であるが、瑞々しい旨みと、甘いのにさっぱりしている汁が美味しい。信州で食べる蕎麦は、関東の店屋のものよりも、断然に美味しい。箸を進めると、信州の清々しい秋日も合わさり、とても、さわやかな気分になる。


(信州そば。)

おやきは、粘りと厚みのある小麦皮の中に具が入った、扁平な形の饅頭の一種である。具の種類が沢山あり、店の人に聞いた所、野沢菜と切干大根が代表的と言うので、それを頼む。甘すぎず、塩っぱ過ぎずの素朴な味と、独自の粘りのある厚い皮が大変美味しい。林檎ジュースも、自然な喉越しと甘みがある。

おやきは、北信州エリアや善光寺周辺の郷土食になっている。山菜や野菜を味噌や醤油で味付けし、小麦粉で練った皮で扁平状に包み、蒸した後に、鉄板で焼き目を付けると出来上がる。昔、信州の寒冷で山がちな風土では、稲作は不適だった為である。有名な蕎麦料理と並んで、寒冷でも育つ小麦を使ったおやきが、各家庭でも作られる料理であった。


(おやきと林檎ジュース。)

食後、足を伸ばして、少し休憩する。観光案内所で貰った観光地図とパンフレットを、おもむろに確認しよう。お勧めの観光コースは、此処から南に、徒歩20分程にある象山地下壕までを往復するコースで、途中の観光名所の見学時間を入れて、所要時間は2時間から3時間かかるらしい。


(長電フリー乗車券と観光案内所で貰った観光パンフレット。)

(つづく)


2019年9月19日 ブログから転載・文章修正・校正。

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