屋代線紀行(11)松代駅 その1

時刻は午前11時。須坂駅には、約一時間の滞在であったが、特急電車の全形式を見る事も出来たので、幸運と言える。屋代線に再び乗車して、朝の出発駅の松代駅に戻る事にしよう。松代駅まで、約20分間の乗車になる。

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【乗車経路】◇→列車交換可能駅
須坂1105========1128松代◇
下り413列車屋代行き(←3532+352・23500系O2編成2両編成)
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須坂駅4番線ホームに向かい、折り返し待ちをしている屋代行きO2編成・2両編成に乗車する。昼前なので、乗客は少ないと思いきや、続々と乗客が乗り込んで来た。発車直前には、40人近くにもなる。


(須坂駅4番線ホームで、折り返しを待つ3500系O2編成。)

(発車前の車内の様子。)

発車前に運転士が必ず行う、プレーキチェックの圧縮空気排気音が、床下から繰り返し大きく聞こえてくる。最近は、排気音の静かな電車ばかりなので、とても懐かしい。ロングシートが結構埋まり、運転士の肉声の発車案内の後、篭ったルルル音の民営鉄道風発車ベルが鳴る。大きなガラガラ音と共に扉が閉まって、定刻の11時5分に発車。駅構内を徐行通過後、屋代線に入り、スピードを上げて行く。

実は、屋代線の沿線風景は、住宅、果樹園や畑が混在する風景がずっと続き、車窓の大きな変化があまりない。線路も比較的平坦であり、河川堤防や鉄橋の前後や、大室駅周辺の山際に緩く長い勾配区間がある。なお、須坂から松代間は、五つの主な河川鉄橋を渡り、大室駅の前後にふたつの短いトンネルを潜る。


(須坂駅を発車し、屋代線に入る。)

須坂から井上間の築堤を上がると、百々川「どどがわ」を渡る。高低二種の側板のプレートガーター鉄橋が、二連架けられている。屋代線と交差するこれらの川は、全て千曲川に注ぐ支流で、本流は渡らない。また、線路が山側に寄っているため、車窓から千曲川の川面は全然見えないのが、少し残念である。


(百々川橋梁を渡る。上流に元鉱山が幾つもあり、強酸性河川になっている。)

パタパタと短尺レールの独特なジョイント音を鳴らし、車体をかなり揺らしながら走る。速度は意外と速く、直線の平坦部では、時速70km近く出ている。なお、須坂から松代間の列車交換可能駅は、綿内駅と信濃川田駅の二駅になっており、他の井上駅、大室駅、金井山駅は全て棒線駅(単式ホーム1面1線)で、近代的な待合室のみの小さな無人駅である。なお、若穂駅と大室駅は開通時の開業駅ではなく、戦後に追加設置された。


(井上から綿内間の田園町風景の中を快走する。)

(昭和51年に追加設置された大室駅を発車。)

(大室駅南の独立した小山を短いトンネルで潜る。)

長閑な北信州の田園町風景の中を軽快に走り、各駅に停車。金井山駅先の90度大カーブを曲がり、上信越自動車道の長野インターチェンジ横を過ぎると、線路の左右に住宅が多くなってくる。その中の緩やかな長い勾配を降った後、大きく右にカーブしながら、スプリングポイントを越えると、松代駅2番線に到着する。

乗客の殆どが、松代の地元住民や観光客であった模様で、この駅で下車になる。家族連れも多く、これからの観光を期待して、誰もが楽しそうな表情をしている。今朝、切符を発券して貰った駅長氏にフリー乗車券を見せ、撮影の許可を取ろう。


(松代駅2番線に到着。)

この松代駅は、屋代線を代表する途中主要駅で、有人駅になっている。屋代線前身の河東鉄道河東線開通時の大正11年(1922年)6月開業、屋代駅から5駅目、8.6km地点、所要時間約13分。須坂駅からは、7駅目、15.8km地点、所要時間約23分である。千曲川東岸の長野市松代町松代字殿町(とのまち)のあり、標高351mになる。

降りたホームの須坂方には、建て植え式駅名標と広告付き名所案内板が建っており、コカ・コーラでなく、ペプシコーラの広告であるのも珍しい。松代は旧城下町で、歴史観光名所が大変多く、屋代線沿線一の観光地になっている。


(建て植え式駅名標。)

(名所案内板。)

駅配置は、北東・南西方向に配された2面3線で、島式ホーム1面2線と駅舎に隣接した単式ホーム1面1線の組み合わせになる。1番線は初電と終電の当駅発着列車用、2番線は屋代方面行き、3番線は須坂方面行きに使われている。

島式ホームの旅客上屋には、開業当時の古い木造が残り、丁度、2両編成分の長さがある。なお、逆番線振り分け(※2)の上に、構内右側進行の特例駅になっている。単線路線の列車交換駅では、通常、進行方向の左側の線路に進行するが、須坂方からやって来た電車は、左側の駅舎側3番線ではなく、右側の島式ホーム2番線に進行する。稀に、タブレット受け渡しの名残から捻れる場合があるが、そうでは無いので、全国的に大変珍しい。


(島式ホーム1・2番線の木造旅客上屋。)

旅客上屋の下を観察すると、古い木製番線標や広告付き方面案内、ホーロー製の柱看板等があり、さり気ない小役に徹しているのが良い。


(行き先案内板と番線案内。)

(昭和時代と思われる吊り下げ広告板。)

(ホーロー製注意看板。)

柱に取り付けられたタバコの吸殻入れが、こんなに低い位置にある。おそらく、ホームの嵩上げの為と考えられるが、異様に低い。しかも、蓋や底は錆びて、抜け落ちてしまっている。ホーム中央の古いベンチやゴミ入れも、ローカル線らしさを醸し出している。背板の小ささや「ごみ入」の手書き加減が、妙に味がある。


(錆びた吸い殻入れ。)

(古いベンチとごみ入。)

(国土地理院国土電子Web・松代駅)

(つづく)


グーグルマップの線路部分は、廃線の為に削除されています。駅の所在地は正しいです。

※車窓から線路の写真は、全て、列車最後尾からの後方風景になります。

2019年9月4日 ブログから転載・文章修正・校正。

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