わ鐵線紀行(3)相老駅

緩やかな半径400m程の右カーブに入ると、左側に東武線の線路が寄り添い、相老駅(あいおい-)に到着。東武鉄道桐生線との接続駅であり、時間は限定されているが、有人駅になっている。なお、わたらせ渓谷鐵道が、駅業務や管理を行っている。

所在地は、「相生(あいおい)」であるが、兵庫県にある相生駅(同音読み)との錯誤を避ける為、開業1年後に、「生」を「老」に置き換えている。かつて、全国にある幾つかの同じ漢字の駅名は、この様に置き換える場合があった。

第三セクター化されると、地元の意向を汲み、本来の漢字(字)に戻す場合が多いが、そのままの置き換え漢字を使用している。おそらく、変更をすると、東武鉄道全駅の運賃表等の交換費用負担が莫大に掛かる為と思われる。


(南側の跨線橋上から、駅と間藤方を望む。)

足尾鐡道が開通した明治44年(1911年)4月開業の古い駅になっており、起点の桐生駅から3.1km地点、2駅目、所要時間約5分、桐生市相生町、標高136mになる。周辺には、住宅や工場が多く、わたらせ渓谷鐵道、東武鉄道、上毛電気鉄道の駅と線路が集まる鉄道密集地になっている。何と、相老駅を中心とした半径約1km弱内に、6つも駅がある。

ローカル線の小さな乗り換え駅としては、利用客も多く、わたらせ渓谷鐵道は1日約180人、東武鉄道は約700人弱の乗降がある。工場や学校への通勤通学客や相互乗り換え客も多い。


(国土地理院国土電子Web・相老駅周辺。)

改札に行き、駅長に1日フリーきっぷを見せ、見学と撮影許可を貰っておこう。わたらせ渓谷鐵道のホームは相対式二面二線、東武鉄道は島式一面二線の計三面四線になっており、南北方向に並行して配されている。構内踏切は廃止され、ホーム南側の屋根の無い鉄骨製跨線橋が、各ホーム間を結んでいる。

先に、駅前に出てみよう。中規模の木造平屋駅舎が、東に面して建つ。最近、近代化工事がされたらしく、雨雪除けの新しい車寄せ屋根が取り付けられており、ロータリーも綺麗に整備されている。


(相老駅と駅前ロータリー。)

(駅出入口付近。)

駅出入口の右上には、開業前年の明治43年(1910年)の刻印がある建物財産標が残っている。大規模に補修や改修が行われており、一見、昭和風駅舎であるが、足尾鐵道時代の明治の駅舎である。


(国鉄時代の建物財産標。)

待合室はやや狭く、有人の出札口と小さな改札口、自動券売機が二台設置されている。東武線、JR線の連絡切符、わたらせ渓谷鐵道の切符も、自動券売機で購入できる。また、反対側には、コの字に配された古い木造ベンチがある。壁はベニアで補修されており、痛みが激しい。


(出札口と自動券売機。)

(待合室の木造ベンチ。)

改札口を通り、ホームを見てみよう。改札口に面した1番線ホームは、わたらせ渓谷鐵道の上り桐生方面ホームになってり、気動車6両分程の約120mの幅狭になっている。かつては、列車に乗り切れない程のラッシュがあり、長編成の通勤通学列車が運転されていた名残である。

間藤方を望むと、遥か北の彼方に群馬の県境を連ねる山々が見え、その山に向かって進んで行く線路は、ロマンを感じさせる。また、向かいのホームとの間には、朽ちた木枕木が残り、中線が1本あったらしい。


(間藤方と中線跡。)

1番線ホーム旅客上屋の柱には、二種類の柱駅名標が並んでいるのが面白い。明朝体のホーロー製とゴシック体の木製があり、改札側のホーロー製の方が古そうである。跨線橋側の木製の方は厚みがあり、文字の部分が彫刻されている。


(ホーロー製柱駅名標。おそらく、戦前のものと思われる。)

(木彫刻製柱駅名標。こちらの方が、国鉄風である。)

ホーム南側にある鉄骨製跨線橋を登り、2番線間藤方面ホームに降りると、東武鉄道乗り継ぎ用のIC乗車券簡易入出場機、わたらせ渓谷鐵道の沿線観光案内看板や、わたらせ渓谷鐵道オリジナルキャラクター「わっしー」の看板が設置されている。東武鉄道経由でやって来た観光客の玄関駅になっている。


(わっしー看板と新しい建て植え式駅名標。)

(わたらせ渓谷鐵道沿線観光案内看板。)

(ICカード簡易入出場機。わたらせ渓谷鐵道では、ICカードは使えない。)

2番線ホーム南端から、上り桐生方を眺めると、半径400mのカーブになっており、中線の道床も残っている。ここの木製電柱にも、明朝体ホーロー製柱駅名標が残り、砂利敷きの古いホームも残る。


(桐生方。)

この周辺の冬期は、赤城山からの冷たい空っ風「赤城おろし」が強く吹き付ける為、下り2番線ホーム中央部には、プレハブ建ての待合所も設置されている。待合所内は、木造ロングベンチが設置され、使われなくなった古い木机が、ぽつんと置かれていた。


(下り2番線ホームと待合所。)

(待合所内。)

西側にある3・4番線は、東武鉄道桐生線の島式ホームになっている。東武鉄道のローカル支線のひとつである桐生線は、足尾鐡道開業2年後の大正2年(1913年)3月に開通し、太田から赤城までの8駅・路線キロ20.3kmの単線電化路線になっている。

こちらは、近代的な設備となっており、わたらせ渓谷鐵道ホームとの対比も面白い。東武鉄道の古い鉄骨製トラスの架線柱も残っており、ホーム土台は、切り出し石材になっているのが特徴である。大谷石か、地元産の藪塚石(やぶつかいし※)であろう。


(東武鉄道桐生線3・4番線ホーム。)

(つづく)


(※藪塚石)大谷石に似ているが、区別は難しい。

2017年8月9日 ブログから保存・文章修正・校正
2017年8月9日 文章修正・音声自動読み上げ校正

この相老駅は追加取材。

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