近江信楽線紀行(2)彦根城、八日市へ

時刻は朝6時、とても寝心地の良いベッドなので、良く眠れた。ロビー横の食堂で、無料朝食が食べられるので、腹ごしらえに向かおう。テレビの天気予報では、今日は曇りらしいが、雨は降らない模様である。旅の最初の四日間は快晴続きであったので、春の天気周期的に下り坂になるのは、致し方無い。

ホテルを出発し、列車に乗る前に、有名な彦根城を小一時間散策しようと思う。彦根駅からは道一本、徒歩10分程で行く事が出来、駅の橋上コンコースからも城が見える。


(改札口前の歓迎看板。)

国宝の彦根城は、あの有名ゆるキャラ「ひこにゃん」でも、お馴染みである。駅のロータリーには、そのモデルになった、井伊直政(いいなおまさ)の騎乗像がある。一昨日に訪問した、天竜浜名湖鉄道金指駅(かなさし-)北側の井伊郷をルーツとする、徳川四天王のひとりで、この彦根35万石を治め、地元発展の基礎を築き、今でも地元信奉者が多い。


(駅前にある、井伊直政騎乗像。)

彦根城は琵琶湖水を引いた、巨大な水掘が張り巡らせてある、大きな水城になっている。内堀の内側や本丸の見学は、観覧入場料(大人600円)が必要であるが、早朝は無料の様である。市民の早朝散歩やジョギングの為に、開放しているらしい。

長い石段を上がると、有名な天秤櫓(てんびんやぐら)があり、その架け橋を渡った本丸に、大津城から移築されたと伝わる三重の天守閣がある。この天守閣は、慶長9年(1604年)築の本物であり、明治政府の廃城令を免れた数少ないものである。とても寒いので、本丸に植えられている梅の花は咲いているが、桜は開花していない。なお、本丸の北側からは、琵琶湖と対岸の山々も見える。
彦根市役所観光企画課「国宝・彦根城築城410年祭」公式HP


(天秤櫓。)

(慶長9年(1604年)築の国宝彦根城。意外に小さい。)

(本丸から、琵琶湖を望む。)

本丸周辺をぐるりと散策したら、彦根駅に戻ろう。ひこにゃんに、会えないのが残念であるが、市役所前の石材店で会えたので、良しとしよう。


(石材店のひこにゃん。)

彦根城から、彦根駅に戻ってきた。時刻は8時40分を過ぎた所である。JR彦根駅の東に隣接する近江鉄道彦根駅は、小さな出札口と鉄製のポール改札口の小さな駅で、この彦根駅が近江鉄道開業時の起点駅である。上り方面の彦根駅から米原駅間は、昭和6年(1931年)の延伸区間になる。


(彦根駅。)

また、大きな自社車両検修区と車両区を併設している。側線には、歴代の車両が多数展示され、鉄道資料館も併設する、本格的なものになっている。但し、公開日が決まっており、月1-3回程度との事。
近江鉄道公式HP・近江鉄道ミュージアム


(近江鉄道ミュージアム。左手が、車両検修区・車両区になる。)

小さな出札口で、1日フリー切符「びわこ京阪奈線フリーきっぷ」(大人1,000円)を購入。土日と祝日限定発売であるが、彦根から信楽までの往復運賃は、3,000円近く掛かるので、破格である。びわこ京阪奈線とは、近江鉄道起点駅の米原から、終点貴生川と信楽高原鐡道を経由し、JR片町線に至る新線建設構想線で、架空のものである。本物の切符に夢を託しているのも、関東の鉄道会社には無い洒落に感じる。なお、近畿日本鉄道の「けいはんな線(長田から学研奈良登美ヶ丘間)」もあるが、別線である。


(近江鉄道彦根駅改札口。)

(1日フリーきっぷ「びわこ京阪奈線フリーきっぷ」。)

この近江鉄道は、明治29年(1896年)に設立された、岐阜県内最古の民営鉄道である。東海道本線が琵琶湖畔を経由した事から、近江商人を多数輩出して栄えた湖東平野部の街々が、危機感を感じ、彦根から貴生川まで開通させた。近畿日本鉄道開業以前は、略して「近鉄」こと、「きんてつ」と言われ、走行音を捩って、「ガチャコン(電車)」の愛称とオリジナルゆるキャラもある。現在は、首都圏大手の西武鉄道グループの鉄道会社になっており、グループ創業者の故・堤康次郎氏が、ここの湖東出身である由縁らしい。

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彦根857======931八日市
近江鉄道本線下り普通列車・近江八幡行き
800形(807編成)2両編成
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既に到着している黄色い電車が、8時57分発の近江八幡行きらしいので、直ぐに乗車しよう。今日は日曜日なので、二両編成の乗客は数人だけである。


(近江鉄道800形807編成。)

(社章。近江の「近」をデザインしているらしい。)

彦根駅を発車すると、単線電化の線路をコトコトと走る。立派な木造駅舎がある彦根口駅(※)や、地元古刹の多賀大社に行く支線が分岐し、大きな曲線ホームに木造旅客上屋がある高宮駅等、沿線の木造駅舎は目をみはるものがあり、大変驚く。次回は、近江鉄道を本格的に取材したい。


(車内の様子。)

近江鉄道本線は、平野部を走る鉄道なので、カーブが少ない路線である。ジャンクション駅の高宮駅を発車すると、近江鉄道本線で最も長い犬上川橋梁(長さ243m)を渡る。琵琶湖に注ぐ大きな川で、橋梁の直ぐ上流には、キリンビールの滋賀工場が建っている。

高宮駅から八日市駅までは、住宅が点在し、田圃が広がる田園地帯を真っ直ぐに走る。線路の南隣に東海道新幹線が走っているので、時々、轟音を立てて通り過ぎて行く。この付近の新幹線はかなりの速度なので、平行時速差200km近いと思われる、近江鉄道との速度差も面白い。また、新幹線が出来る前は、鈴鹿山脈が良く見える区間であったが、今は新幹線の盛り土で見えなくなり、残念である。


(五個荘駅先の左側車窓。鈴鹿山脈が見える。)

国登録有形文化財で、本線二番目に長い愛知川橋梁(長さ239m※下記参照)を渡り切り、五箇荘駅(ごかしょう-)付近で新幹線と別れると、西から南へと線路の進路を変える。彦根駅から所要時間約30分で、八日市駅(ようかいち-)の3番線に到着。この列車は、八日市線直通の近江八幡行きの為、ここで乗り換えになる。

この駅は近江鉄道本線の中核駅で、JR東海道線近江八幡駅との短絡線である、八日市線が分岐している。八日市駅から近江八幡駅間の方がメインらしく、日中の時間帯は、本線の貴生川行きよりも、近江八幡行きの方が列車本数が多い。なお、八日市線は、地元資本の湖南鉄道が開業し、後に、近江鉄道に買収された路線である。


(八日市駅。)

また、二面三線のホームと中線や側線を擁し、地方の中小民鉄としては、大きな駅である。大きな三角屋根の近代駅舎が建てられており、乗降客も多く、活気がある。改札口前の時刻表を見ると、今度の貴生川行きは10時03分発になっているので、改札口横の待合室で待つ事にしよう。

【国登録有形文化財・近江鉄道愛知川橋梁】
登録・平成20年(2008年)10月23日、竣工・明治時代、明治31年(1898年)
構造・鋼製9連桁及び単トラス桁橋、橋長239m、橋台及び橋脚付1基。

愛知川の中流域に架かる橋長239m、単線仕様の鉄道橋で、9連プレートガーダーと単ポニーワーレントラスよりなる。J形スティフナーと、トラスの台形フレームや横桁の配置等にイギリス橋梁技術の特徴を表す。明治後期造の現役の鉄道橋として貴重。
(文化庁文化遺産オンラインより、抜粋編集。)


(※)彦根口駅の木造駅舎は、最近、老朽化の為に取り壊された模様。

2017年7月16日 FC2ブログから保存・文章修正(濁点抑制)・校正
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