大鐵本線紀行(9)千頭駅

新金谷駅から約1時間。大井川鐵道本線終点の千頭駅(せんず-)に到着する。昭和6年(1931年)12月に開業、起点の金谷駅から39.5km地点、18駅目(SL急行は4駅目)、所要時間約1時間10分、榛原郡(はいばら-)川根本町千頭、標高298m、1日乗車客数約400人の社員配置有人駅である。井川線の乗り換え駅になっており、「中部の駅100選」に選ばれている。


(建て植え式駅名標。後の車両は、お座敷車のナロ80-2。旧二等車の標記と青帯が付いているのは、ご愛嬌である。)

1,000m級の山々に囲まれ、大井川両岸に町が発達し、駅から大井川を渡った東岸が中心部になっている。かつては、川を挟み、駿河国(するが-)と遠州国(とおとうみ-)の国境の町であった。


(国土地理院国土電子Web・千頭付近。)

ホームは、南北に配された行き止まりタイプの頭端式二面四線が置かれ、井川線専用の中間改札とホーム一面一線も別にある。構内は大変広く、側線は12本もあり、多数の車両が留置されている。


(千頭駅に到着。昨年春に撮影。)

千頭駅構内南側には、イギリスから輸入された転車台が残っており、3番線ホームの南端から見える。通常時は使用していないが、イベント時に稼働している。新金谷駅の転車台は、留置線の確保の為に撤去されている(※)。


(英国輸入転車台と構内の一本桜。)

明治30年(1897年)製造、英国RANSOMES&RAPIER(ランソムズ・アンド・ラピア)社製である。国鉄東北本線用に輸入され、後に、新潟の赤谷鉱山専用鉄道東赤谷駅に設置されていたが、昭和55年(1980年)7月に保存移設された。

日本国内で現存している転車台のうち、製造会社や製造年が確認出来る最古の転車台である。銘板や設計図面もあり、平成13年(2001年)に国の登録有形文化財に指定されている。なお、最初に設置された国鉄の駅名や移設の記録は、不明である。

・形式:上路式(バランスト型/動力は人力・手動式。)
・長さ:50フィート(15,240mm)
・自重:17t
・積載荷重:最大95t(約65tのC11形を、大人二人の60kgの力で回すことが可能。)


(3番線南端からの転車台。再塗装がされ、銘板も取り付けられている。)

(C11-190号機を転車する。平成28年に撮影。)

旧型客車の編成を見ながら、ホームの南端から駅舎改札方向に行ってみよう。3番線ホームは、SL列車の長編成に対応する為、南側にデッキ風ホームが延長されている。乗客の下車後、数人のスタッフが車内の清掃を行ない、後補機のE10形(E101)も切り離される。なお、貫通扉右の小さな窓は、車掌室の後方確認用窓である。


(オハフの車掌用小窓。)

編成中のオハ35-459は、窓の上下のシルとヘッダーのリベットがあり、精悍な印象がある。中央窓下のサボ(行先表示板)も、差し込み式と吊り下げ式があり、大凡、半分ずつになっている。


(オハ35-459のリベットとサボ。)

ホーム頭端部に行ってみよう。到着後の暫くの間は、蒸気機関車の給水作業を行う為、その場に待機している。到着直後は、一般観光客の記念撮影で混むが、15分もすると静かになり、ゆっくりと撮影出来る。

オイルと鈍い光沢は、生きた蒸機としての存在感がある。細めのロッドとクロスヘッドが、軽快な小型蒸気機関車らしい。後補機のE10(101)が横に来て待機し、給水後に、2番線と3番線の渡り線を使い、機回しを行なう。


(給水を行うC56-44号機と、2番線に待機するE10形101号機。)

(C56-44号機の第一動輪とクロスヘッド。)

機関士に挨拶をし、C56-44号機の運転台を見学させて貰うと、如何にも、機械的なごつい雰囲気があり、沢山のレバーや計器が取り付けられている。空中の長いレバーは加減弁(自動車のアクセルに相当)、その下のタワーについている2本の短い金色のハンドルは空気ブレーキ弁(機関車と客車は別々)、左の赤色の回転ハンドルは逆転機(自動車のギアに相当)のレバーになる。


(C56-44号機の運転台。)

ホームの外側には、E10形(102)が留まっており、側窓を開けて整備中の様子である。その奥には、9600形蒸気機関車の49616号機と旧型電機のE10形(103)の静態保存機、レールや腕木式信号機等が展示された小さな鉄道公園がある。なお、49616号機は、SL復活運転時の機関助手の投炭練習に使われた。


(整備中のE10形102号機。)

改札に行ってみよう。改札前や待合ロビーは大変広く、近代的な駅舎になっている。大井川鐵道直営の駅蕎麦店、売店土産店、外にSL資料館(入館有料)や二階の軽食処もある。なお、改札手前から、左手の風防室を通ると、井川線のホームになる。改札横には、昭和の頃によく置かれていた記念メダル発行機と刻印機があり、懐かしい。


(改札口周辺。)

(記念メダル発行機と刻印機。)

金属パイプの改札を通ると、木製のテープルとベンチが置かれた30畳以上の広い待合室になっている。直営売店もあり、菓子・飲料から土産品まで、取り扱う品数も多い。また、この駅には、有人の出札口が二箇所設けられている。


(待合ロビーと出札口。)

(併設された直営売店。)

駅時刻表を見ると、上り金谷行きの終電は、19時57分発とかなり早い。本線の普通列車は毎時1本程度、1日16本が発車している。


(駅時刻表。)

北に面した駅舎正面に出てみると、屋根下のアールデザインが特徴になっており、側壁に木が使われている。なお、平成4年(1992年)に、駅舎が建て替えられた。駅前には、名産の川根茶を扱う茶葉店や飲食店等の数軒の店が集まり、寸又峡(すまたきょう)行きのバス発着場がある。


(千頭駅。)

右手に併設されているSL資料館は、大井川鐵道のSL写真、鉄道部品、ヘッドマークや大井川鐵道をロケ訪問したスターの写真やサイン色紙等が展示されている。時間があれば、立ち寄るのも良い(入館料は100円、年中無休・9時〜16時まで開館)。

(つづく)


(※)平成22年(2010年)秋に、新金谷駅に転車台が新設され、毎日、千頭駅転車台と対で使用されている。バック運転は取りやめになっている。

2017年7月31日 ブログから保存・文章修正・校正
2017年8月3日 文章修正・音声自動読み上げ校正

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