伊勢志摩めぐり(4)伊勢神宮 その2

正宮前の御池の向こうには、正宮の分家にあたる別宮も鎮座している。宮域に3つの別宮があり、徒歩10分程離れた宮域外の場所にも、ひとつある。

案内板に従い、道を進むと、御池を渡る「亀石」と呼ばれる自然石の一枚岩の橋を渡る。その先の右手に土宮(つちのみや)、左手に風宮(かぜのみや)、石段を登った上に多賀宮(たかのみや)が鎮座している。


(亀石付近から見た御池と正宮。)

土宮は、古くからの地鎮の神社であり、平安時代末期に、別宮として飛び級で格上げされた。それ以降は、宮川の治水の神としても祀られている。この土宮だけ、東に向いているが、理由は詳しく判っていない。


(土宮。)

隣の風宮は、風水害を防ぎ、農作物の豊作をもたらす風の神が祀られている。鎌倉時代中期・弘文4年(1281年)の二度目の元寇襲来時に、神風を起こして蒙古軍を全滅させた由来の神社である。それ以降、幕末の欧米列強進出など、外敵の侵攻に対する国家加護の祈願も執り行われている。


(風宮。)

土宮と風宮に参拝し、土宮の向かいの百段程の石段を上がると、小高い場所に多賀宮が鎮座する。外宮内の一番格式が高い別宮になり、皇室の勅使は、正宮と多賀宮のみ参行するという。御祭神は、正宮と同じ豊受大御神の荒御魂(あらみたま)を祀っており、正宮と同時に丹波の国から迎えられたと伝えられている。


(多賀宮に続く石段を振り返って見る。)

(多賀宮。)

屋根の上には、輪切りの木「鰹木(かつおぎ)」と両端の交差した「千木(ちぎ)」があり、元々は補強材であるが、神社の尊厳を表す象徴になっている。なお、鰹木と千木は陰陽を表し、奇数の鰹木と外削ぎ(地面に対して垂直)の千木は男神、偶数の鰹木と内削ぎ(水平に削る)の千木は女神を表すとの事。本来、豊受大御神は女神であるが、御正殿の鰹木は9本、千木は外削ぎになっており、男神化の意味があるのではないかとされている。

なお、正宮も別宮も、唯一神明造(ゆいいつしんめいづくり)と呼ばれる、古式の神社造りである。土台や基礎も無く、柱は地面に直接立てられており、弥生時代の高床式建築を受け継いでいるらしい。なお、別宮も、20年毎に式年遷宮をする為、隣に新御敷地がある。


(多賀宮御正殿の鰹木と千木。)

多賀宮から石段を下り、戻る事にしよう。神楽殿では、笹に括りつけた鯉幟が授与されていて、子供連れの家族が購入している。この時期だけの初夏の風物らしい。


(神楽殿と鯉幟。)

外宮の参拝が終ったので、内宮に行こう。五十鈴川(いすず-)が、平地に出る山際に鎮座している。近鉄の宇治山田駅から徒歩でも行けるが、外宮前の大通りからの内宮行き連絡バスを利用するのが便利である。臨時のテント張りの乗車券売り場に行き、410円の運賃を前払いして乗車。利用客も多いので、定時運行ではなく、満席になると随時発車する。渋滞の中を10分程で、約5km離れた内宮前に到着する。

土産店が沢山建ち並んでいるバスターミナルを抜けると、内宮への出入口があり、有名な大鳥居と宇治橋が見えてくる。


(内宮大鳥居前。)

(観光歴史案内板。)

この大鳥居は、宇治橋の前後に設けられており、高さは約7.4mある。外側は外宮、内側は内宮の式年遷宮で取り壊された御正殿の柱を、20年間再利用している。その後も、宮域外の神社に移されて、鳥居として、20年間再々利用されるという。よって、御正殿20年、大鳥居20年、宮域外20年の計60年の間、この柱はリサイクルされている。


(内宮大鳥居。)

大鳥居前で一礼し、五十鈴川(いすずがわ)を渡ろう。現世と神世の架け橋とされる宇治橋は、長さ約100m、幅約8.4mの純日本風の反橋で、檜と橋脚の部分が欅(けやき)で造られている。式年遷宮と同様に20年毎に架け替えられ、平成21年(2009年)11月に架け替えられたばかりである。


(宇治橋を渡る。)

(神川とされる五十鈴川の眺め。)

内側の大鳥居を潜ると、直ぐに右に曲がり、神苑と呼ばれる日本庭園が広がっている。伊勢神宮を管理する神宮司庁も置かれ、参道は10m程の幅がある。


(神苑。)

内宮の宮域図を見ると、外宮よりも、スケールが遥かに大きく、参道は鍵型になっている。


(内宮宮域図。)

(神苑参道。)

広い参道の砂利をザクザクと踏みしめながら、真っ直ぐに歩き、三つ目の鳥居を潜ると、突き当たりに五十鈴川に下りられる場所がある。手口を清める御手洗場(みたらし-)で、この様に自然の川が本来のものという。五十鈴川の水深は浅いが、水量が多く、とても綺麗である。

また、近くには、滝祭神(たきまつりのかみ)と呼ばれる、五十鈴川守護の水神が祀られている。正式には、この御手洗場から奥が神域とされている。


(五十鈴川の御手洗場。)

(つづく)


外宮(げくう) →伊勢市山田にある豊受大御神を祀る神社。別名・豊受大神宮。
内宮(ないくう)→伊勢市宇治にある天照大御神を祀る神社。伊勢神宮の中心。
別名・皇大神宮。
正宮(せいぐう)→最も尊い神社で、天照大御神と豊受大御神を祀る二つの神社のみ。
別宮(べつぐう)→正宮に次いで尊い神社で、正宮の分身とも言える。
御正殿(ごしょうでん)→御神体が奉斎されている建物、本殿のこと。
神楽殿(かぐらでん)→神楽や祈祷などの受付、御札やお守りの授与を行う社務所。
宮域(きゅういき)→境内のこと。
御饌(みけ)→神に捧げる供物・食事のこと。
荒御魂(あらみたま)→神のもう一つの側面である荒ぶる魂のこと。


2020年4月7日 ブログから転載・文章修正・校正。

©2020 hmd
文章や画像の転載・複製・引用・リンク・二次利用(リライトを含む)や商業利用等は固くお断り致します。

This site is protected by wp-copyrightpro.com