伊勢志摩めぐり(3)伊勢神宮 その1

早速、伊勢神宮に参拝しよう。同じ市内にあるが、外宮と内宮の大きなふたつの宮に分かれている。本来の伊勢神宮とは、三重エリア一帯の125社の総称であり、正式名称は、「神宮」になる。駅前の大型地図を見ると、伊勢市駅は外宮の最寄り駅になっており、先ずは、外宮に向かおう。古来からの参拝の手順も、先に外宮を参拝してから、次に内宮へ行く事になっている。


(駅前の案内地図。下の緑色の部分が、外宮。)

駅から南西に歩くと、500m程先に外宮がある。駅前ロータリーの歩道には、3階建て相当の高さのある巨大燈籠が建っていて、目を見張る。横断歩道の先に真っ直ぐ参道が伸びているが、駅からの参拝客や団体ツアー客が殆ど居らず、かなり空いている。


(駅前ロータリーの巨大灯籠。)

参道は近代的に整備され、土産店や観光客相手の飲食店は少なく、門前町の雰囲気は全く無い。昭和30年代頃までは、沢山の門前旅館が並び、路面電車が走っていたという。その後、観光バス・自家用車の普及や大型観光ホテルが郊外に開業したた為、段々と廃業してしまった。

その状況の中でも、参道の途中右手には、レトロな木造3階建て楼閣風の旅館が建っている。大正初期創業の老舗旅館「山田館」で、当初は、食堂兼旅館として開業した。中央部分の狭い玄関部分が創業当時のものになり、昭和2年(1927年)に左右の建物を増築している。なお、太平洋戦争中、国威発揚に伊勢神宮が利用されていた為、何回も市内は空襲されたが、幸運にも被害を逃れる事が出来たという。
伊勢の宿・山田館


(山田館全景。)

(宮形の庇が特徴の玄関。)

参道を抜け、徒歩10分程で、大通りの県道22号線に到着する。この大きな横断歩道の直ぐ先が、外宮の敷地になる。


(外宮前。)

森の中にある感じになっており、鳥居は意外に大きくない。堀と小さな火除け橋を渡り、参道途中の手水舎で清めた後、ニノ鳥居と参道を抜けると、神楽殿と正宮が見えてくる。また、一ノ鳥居の右手には、樹齢1000年、幹周り9mの楠の巨木「清盛楠(きよもりぐす)」がある。平安時代末期、平将門が天皇の勅使として訪れた際、この木の枝が冠に触れた為、怒って西側の枝を伐採させた言い伝えがある。神域の木を伐採する事は、大変な禁忌であり、当時の平家の大きな権力が判るという。


(外宮一ノ鳥居。森の中に吸い込まれる雰囲気がある。)

(二ノ鳥居と参道。)

二ノ鳥居の先は、森の中にぽっかりと広い空間が設けられており、ここに外宮や神楽殿などが鎮座している。境内の宮域図を見ると、川の跡といわれる勾玉池や御池に沿い、建物が配されている。


(外宮宮域図。)

(参道を抜けた場所にある神楽殿。一般的な神社の社務所にあたる。)

御正殿(ごしょうでん)前に到着したので、参拝をしよう。五つの門と四重の塀に囲まれていて、塀の中は撮影禁止になっており、普通の神社と違う威厳を感じる。一般参拝者は、外側からふたつ目の外玉垣南御門の前で、純白の絹の御幌(みとばり)越しに参拝をする。

内部の参道には白色、それ以外に黒色の拳大の玉石が、綺麗に敷き詰められている。更に、三つの門とふたつの塀が内部にあり、御正殿を直接拝観出来ない構造になっている。実際、正宮(本殿)の屋根の一部しか見えず、重要な所は隠すのが、日本的な奥ゆかしさに通じると感じる。


(外宮に参拝する人達。)

外宮の御祭神は、食物や穀物を司る女神・豊受大御神(とようけのおおみかみ)である。衣・食・住と、それから転じて、全ての産業の守護神とされている。また、豊受大御神の「うけ」は食物を表し、国産みの神イザナギの妻であるイザナミの死によって、その体の一部から生まれた「トヨウケビメ(豊宇気毘売神)」と伝えられている。

由来については、約1500年前の古墳時代、雄略天皇が夢の中で、内宮御祭神の天照大御神の御神託を受けた。元々は、丹波国天橋立付近の神社に鎮座する神であったが、天照大御神の食事を司る神「御饌都神(みけつかみ)」として、雄略天皇22年(478年)に、ここに移されたという。今も、朝夕の毎日2回、天照大御神に御饌(みけ)を奉る祭事が、執り行なわれている。

なお、正宮の左手には、同じ広さの新御敷地(しんみしきち)があり、平成25年(2013年)の式年遷宮(しきねんせんぐう)の際に正宮が移される場所になっている。前回は、こちら側に正宮があったので、古殿地(こでんち)とも呼ばれ、20年毎に東西の敷地を行ったり来たりしている事になる。なお、正宮の建物や調度品を新調し、御神体を遷す、最も大きな祭事である式年遷宮は、飛鳥時代の持統天皇の治世から始まり、戦国時代の一時期を除いて、約1300年間も執り行なわれている。建物の柱は地面に白木のまま立てられ、非常に重い萱葺き屋根の為、耐久性の問題がある。また、解体後の用材は再利用されたり、全国の末社に払い下げられている。古代の建築様式をそのまま今に伝え、学術的に貴重な一面もあるという。

御正殿前の池の近くに人が大勢集まっているので、覗いてみると、「三ツ石」と呼ばれる有名なパワースポットとのこと。石の上に手をかざすと、何か生暖かいものを感じる。「川原祓所」と呼ばれ、川の代わりに禊(みそぎ)が執り行なわれる場所である。なお、この付近一帯は、町の西部を流れている宮川支流の河原であったが、室町時代の明応7年(1498年)に起きた大地震で、大きく地形が変わってしまい、川は無くなってしまった。境内の大きな勾玉池や御池は、川の名残である。


(パワースポットの三ツ石。)

(つづく)


外宮(げくう) →伊勢市山田にある豊受大御神を祀る神社。別名・豊受大神宮。
内宮(ないくう)→伊勢市宇治にある天照大御神を祀る神社。伊勢神宮の中心。
別名・皇大神宮。
正宮(せいぐう)→最も尊い神社で、天照大御神と豊受大御神を祀る二つの神社のみ。
別宮(べつぐう)→正宮に次いで尊い神社で、正宮の分身とされる。
御正殿(ごしょうでん)→御神体が奉斎されている建物、本殿のこと。
神楽殿(かぐらでん)→神楽や祈祷などの受付、御札やお守りの授与を行う社務所。
宮域(きゅういき)→境内のこと。
御饌(みけ)→神に捧げる供物・食事のこと。


2020年4月7日 ブログから転載・文章修正・校正。

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