伊勢志摩めぐり(2)JR伊勢市駅

三重県中部の志摩半島の中心都市・伊勢市は、伊勢志摩観光と伊勢神宮が鎮座する町「神都」として、知られている。約13万人の人口を擁し、三方が海に囲まれた温暖な土地柄である。かつては、宇治山田市と呼ばれ、昭和30年(1955年)に現在の伊勢市に改称された。


(吊り下げ式駅名標。)

伊勢神宮の門前町として、古くから栄え、江戸時代には、一般庶民も全国から参拝に訪れた。当時は、「おかげまいり」、「お伊勢まいり」と呼ばれ、明治時代後半に鉄道が開通し、現在も年間数百万人の観光客や参拝客が訪れている。

明治30年(1897年)11月、参宮鉄道(津から宮川間)の延伸開通により開業した伊勢市駅は、山田駅と当時呼ばれ、10年後の明治40年(1907年)10月に国有化された。後の昭和5年(1930年)9月には、参宮急行電鉄(現・近畿日本鉄道/近鉄)が開業し、現在は、ふたつの鉄道会社が乗り入れる4面5線の大きな駅になっている。なお、JR線と近鉄線のホームは完全に離れているが、共同使用駅になっており、1・2・3番線のJR参宮線、4・5番線の近鉄山田線のホームを、長い跨線橋で結んでいる。


(参宮線2・3番線から、改札口周辺。)

JR参宮線の駅時刻表を見ると、日中は、1時間に上下2本程度、うち1本は「快速みえ」である。普通列車は一部の列車を除いて、ワンマン運転になり、上り列車の殆どが紀勢本線終点の亀山駅までの直通運転になる。なお、昭和34年(1959年)までは、亀山駅から鳥羽駅までが参宮線であった事や、国鉄時代の列車運用の名残であろう。


(ホームの駅時刻表。)

かつての東京からやって来る直通列車の大勢の参拝客を捌く為、2・3番線ホームの広幅の長いホームは、往年の栄華を感じる。なお、鳥羽方の幅広の跨線橋は、JR線のホーム間のみを繋いでいる。


(2・3番線ホーム。)

名古屋方を望むと、向かいの駅舎側1番線が上り本線、2番線が下り本線になっている。1番線ホームは土台や屋根が新しく、こちらの2・3番線ホームの方が古い。1番線側は、駅舎が建て替えられた際に、一緒にリニューアルされたらしい。なお、3番線は副本線になり、一部の当駅始発着列車に使用されている。


(駅舎側1番線と名古屋方。)

ホームに置いてある銘菓赤福の広告付き木製ベンチが、妙にレトロ感を放つ。座面の奥が低くなっているのが、古い国鉄時代のベンチの特徴である。

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(国鉄時代のままの木造ベンチ。置いたバッグは自分のもの。)

また、JR線と近鉄線のホームの間には、広大な敷地の伊勢車両区があり、ホーム端から一望出来る。架線が無い非電化路線の車内区の為、空はスッキリとしている。この伊勢車両区は、参宮線開業時からある古い車両基地で、JR東海の非電化路線の参宮線、名松線、亀山駅から新宮駅間の紀勢本線の普通列車用気動車が所属している。なお、亀山駅は、JR西日本管轄になる為、亀山車両区にJR東海の車両は配置していない。


(3番線からのJR東海伊勢車両区全景。)

奥の方には、国鉄キハ40系が、何両か留置されているのが見える。JR東海のキハ40系は、350馬力のカミンズエンジンと新しい液体変速機に交換されており、この車両区に23両が所属し、まだまだ主力である。なお、キハ40系の後の架線がある場所が、近鉄線のホームになっている。


(JR東海色のキハ40系。※望遠ズームで撮影。)

手前の留置線には、JR東海の軽快気動車、キハ11形0番台と100番台が留置されている。昭和63年(1988年)の新潟鐵工所(現・新潟トランシス/0番台のみ)製、18m級車体、330馬力カミンズエンジン1基搭載、セミクロスシート、トイレ無し車両である。

ちなみに、この2両編成の車番は、「キハ11-1」と「キハ11-111」で、”オール1”並びの洒落を利かしている。後ろの100番台は、寒冷地仕様になっており、同年・自社製造のJR東海名古屋工場製との事。元々は、岐阜県の太多線(たいた-)や高山本線で活躍していたが、温暖なこの地に転属して来たという。


(JR東海キハ11形軽快気動車。ローカル線の普通列車用車両である。)

奥に並んでいるステンレス車両は、違う形式ではなく、一番新しいキハ11形300番台である。平成11年(1999年)の新潟鐵工所製(現・新潟トランシス)、350馬力カミンズエンジン1基搭載、セミクロスシート車である。車内トイレを設置してあり、紀勢本線の長距離普通列車に使われている。乗降ドア下から手旗を出し、仕業準備中らしい。なお、キハ11形は、0番台9両、100番台6両、300番台6両の計21両が所属している。


(紀勢本線用のJR東海キハ11形300番台。)

名古屋方には、駅舎、JR線と近鉄線を結ぶ連絡跨線橋があるので、南口改札に向かおう。跨線橋付近の2・3番線ホームの屋根は、美しい梁構造の国鉄時代の大屋根になっており、大型広告付き時計盤も、国鉄のままで懐かしい。


(名古屋方の跨線橋と大型時計盤。)

南口には、近年リニューアルされたJRの駅舎があり、派手な装飾の無い、シンプルなデザインの高い吹き抜け天井の駅になっている。構内には、みどりの窓口の他、待合所、キヨスク、近鉄出札口や土産店も並んでおり、国鉄時代のままのキヨスク看板が懐かしい。なお、4・5番線ホームに隣接して、近鉄が管理する駅舎が別にある。


(JR改札口周辺。)

(駅舎外観。)

なお、鳥羽方600m先には、近鉄宇治山田駅があり、近鉄線の中心駅になっている。天皇陛下、皇族や内閣総理大臣の伊勢神宮参拝時に利用する駅でもあり、白いタイルの外装、コンコースにシャンデリアもある参宮急行電鉄時代の建物は、テレビの旅行番組等で紹介される事も多い。

(つづく)


2020年4月4日 ブログから転載・文章修正・校正。

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