岳南線紀行(13)吉原本町散策と富士宮へ

少しばかり、吉原本町駅周辺を散策してみよう。東海道が整備された当初の吉原宿は、現在の鈴川町こと、東海道本線沿いの毘沙門天で親しまれている、妙法寺の通りにあった。


(駅出入り口には、ユニークな似顔絵入り商店街観光案内板がある。)

この吉原本町は、江戸時代の地震による大津波の後に移転した、新しい吉原宿である。実は、2回目の移転地であり、1回目の移転地は、現在のジヤトコ駅南の富士警察署付近にあり、中吉原宿と言われていた。後年の台風の水害により、水没してしまった為、水没しなかった小高い現在地に再移転しており、かつては、新吉原と言われていた。

また、吉原という地名は、富士山南麓に広がっていた、浮島ヶ原(現・須津湖周辺)が由来である。湿原に育っていた葦「アシ」から、葦原(あしわら)と名付けられたが、「悪し」に通じるので、ヨシ(良し)と転じたとの事。この周辺も、富士川の大氾濫原であったが、江戸時代の治水事業による瀬替え(流路変更)により、居住や農耕が可能な広い加島平野が整備され、大きく発展した。その為、町の歴史的には、江戸時代以降に発達した新しい町と言える。

駅の裏手には、青陽山陽徳寺と言う小寺が隣接し、アスファルトで舗装された境内は、道路の様になっているが、狭いながらも本堂と鐘楼もある。江戸時代の頃、悪性の眼病が流行した時に願掛けをした所、身代わりになった地蔵の目がヤニでただれ、眼病が治ったと伝わる、身代わり地蔵尊が名物である。以来、体の弱い子やおできの子が願掛けすると、たちまち治ったと伝えられている。夏の縁日には、屋台や灯籠が所狭しと並び、秘蔵の大絵曼荼羅地獄絵図(おおえまんだら-)の公開もされるので、閻魔大王由縁の寺でもあるらしい。

この六地蔵の由縁は、駿東郡青野町(現・沼津市青野)の光命庵にあったが、ある夏の大洪水で浮島沼(現・須津湖周辺)に流され、それを吉原宿の人達がすくい上げ、この陽徳寺の本尊となった。なお、陽徳寺の開基時期は不明で、臨済宗の禅寺になっている。


(隣の小堂には、閻魔大王像が鎮座しているらしいが、訪問時はなかった。)

地蔵尊の境内を通り抜け、吉原南踏切を渡ると、小さな八幡宮【鳥居マーカー】がある。町内には、沢山の神社があるそうで、江戸時代から350年間続く吉原祇園祭も有名である。東海一の祇園「おてんのさん」と言われ、計21台もの山車や屋台が曳き廻されるという。商店街に200軒以上の露店が出店し、20万人程の人出がある初夏の風物詩になっている。

八幡宮前の路地をそのまま抜け、大通りに出て、北に歩いて行くと、長さ500mもある吉原本町商店街【赤マーカー】がある。他の地方の商店街と同様、半分はシャッターが降りている感じであるが、所々は営業している。地元B級グルメの「富士つけナポリタン」の店も、この先の商店街の中にある。


(吉原本町商店街。)

(商店街名物のお店。富士山に関連した商品のみのギフトショップである。)

駅から東側の岳南商店街を抜けた先の橋の袂には、平家越碑【名勝地マーカー】がある。治承4年(1180年)10月20日の源平の富士川の戦いにおいて、源氏軍と平氏軍がここで対峙し、夜半、飛び立つ水鳥の音を源氏軍の奇襲と勘違いした平氏軍が、不戦敗走した場所である。源頼朝の鎌倉幕府の成立にも、大きな影響を与えた戦であった。

現在の富士川よりも、東に位置するが、当時は治水がされていなかったので、川は大きく蛇行し、支流や川沼も広がっていた。今は、水量の多い和田川が流れている。なお、この石碑前のこの通りが、大津波後に迂回された旧東海道で、大きな石碑には「平家越」と刻まれている。手前の東海道の石塔は道標で、「鈴川驛(現・吉原駅)」や「静岡市」と刻まれているので、明治後期頃のものと思われる。


(平家越碑。)

吉原本町駅に戻ろう。15時を過ぎた所である。初日の岳南線訪問は、路線キロが短い事もあり、ほぼ終えた感じである。日没までどうしようかと考えるが、この富士市まで来たとなれば、あの場所にも行った方が良かろう。また、焼きそば好きに外せない所といえば、そう、富士宮である。

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吉原本町1511 岳南線 上り吉原行 7000形(7002)単行
1521
吉原1530 JR東海道本線 下り島田行 453M クハ312-2326
1534
富士1539 JR身延線 下り西富士宮行 3559G クハ312-3003
1601
富士宮
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岳南吉原駅まで戻り、改札の女性駅員氏にお願いして、記念に1日フリー切符をそのまま貰う。少し早い退去時刻であるが、岳南線の魅力を十分に楽しめた。

連絡跨線橋でJRのホームに直接行き、隣の富士駅から身延線に乗り換えて、富士宮駅まで行こう。約4分で富士駅に到着。手持ちの往復切符には、富士から富士宮間の往復分は入っていないので、一度、改札を途中下車して、切符を購入する。5分しかないので、少し急ぐ。


(西富士宮行きワンマン普通列車。3000番台は、313系のローカル線仕様になる。)

富士駅1番線から発車する、二両編成セミクロスシート車の313系3000番台・西富士宮行きワンマン普通列車に乗車。座席は満席、立ち席が若干ある混み具合で、富士宮までの利用客は多い。少し斜陽になった町の中を、富士山に向かって走って行くと、20分程で富士宮駅に到着する。

富士宮は、かつては、大宮と言われた大きな門前町であり、全国の浅間神社(せんげん-)の総本宮があるので、参拝もしよう。神社は、駅から徒歩15分位離れており、車の多い大通りを西に歩く。寺社の参拝終了時刻は、一般的に16時頃なので、少し急ぐ。

神社前に到着すると、岳南線沿線よりも大きく見える富士山と巨大な赤鳥居が迎えてくれる。この神社は、「駿河国の一之宮」として、また、全国1,300社の浅間神社の総本宮として、最高格式の官幣大社(かんぺいたいしゃ)のひとつとして列せられていた。富士山と密接に関連し、言い伝えによると、第11代垂仁天皇(伝説上の天皇とも言われる)が、紀元前27年に大噴火をした富士山を鎮める為、祀ったのが始まりとされている。なお、富士山の修験道と山岳信仰の歴史は、神仏習合が進んだ中世以降になると言われている。
富士山本宮浅間大社公式HP


(富士山本宮浅間大社大鳥居と富士山。)

(朱色に塗られ、随所に菊の御紋をあしらう、最高格の神社である。)

参拝後、大鳥居に面する通りに戻り、向かい側の「お宮横丁」と言う小さな屋台村に立ち寄る。その入口横には、富士宮やきそば学会直営のアンテナ店がある。町中には、富士宮焼きそばを提供している店が何十軒もあるが、今回はスタンダードな公式店で食べてみよう。時間があれば、有名店を梯子して、食べ比べをするのも楽しい。


(富士宮やきそば学会直営のアンテナショップ。)

店の右側は厨房兼受け渡し所、左側が椅子付きのイートインコーナーなっており、イートインは若い観光客で満席である。結構、流行っているらしい。外のテーブルでも食べられるので、注文札を貰い、出来上がりを待つとしよう。10分程待つと、外のテーブルまで、持って来てくれた。


(注文したのは、レギュラー税込450円。ラージ税込600円も選べる。)

注文を受けてから、ひとつずつ作るので、出来立てであるのが嬉しい。麺は半透明の角細麺で、柔らか目であるが、芯には腰があり、地場産の鰯削り節をトッピングしている。ソースは静岡らしいかなりの甘口で、後は引かず、スッと上品に切れるのが特徴である。ソース感が強くなく、かなりマイルドな味の焼きそばは、好みが分かれると思うが、とても美味しい。
富士宮やきそば学会公式HP

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富士宮1642 上り富士行 3570M クハ312-2331(ロングシート車)
1700
富士1713 下り浜松行 823M モハ210-5042
1748
静岡1831 下り浜松行 467M クハ210-5011 ※買い物の為。
1851
藤枝(泊)
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早足であったが、浅間大社参拝と富士宮焼きそばを食べる事が出来た。富士宮駅に戻り、静岡駅から数駅先の宿泊予定地である藤枝駅まで行こう。途中の静岡駅で途中下車をして、家電量販店に立ち寄り、新しいSDカードと駅弁を手配する。

19時過ぎに投宿。焼きそばだけでは、流石に物足りないので、先に夕食にする。今夜は、静岡駅の名物駅弁「特製鯛めし」(東海軒・税込850円)である。明治30年(1897年)発売の古典的駅弁「元祖鯛飯」に、おかずをプラスしたデラックス版で、巻き紙のイラストも豪華である。
東海軒公式HP


(静岡駅の名物駅弁「特製鯛めし」。)

下に敷いてある桜飯(茶飯)は甘くなく、弾力のある締まった感じが、駅弁らしく感じる。上に敷き詰められた鯛そぼろは、甘さがかなり強く、強い甘さの後に旨味がボリューム感を伴って広がる。塩っぱ目の煮物で、桜飯とバランスを取り、キンメの切身も厚くて美味しい。なお、小田原駅にも、有名な東華軒の鯛めしがあるので、食べ比べも面白い。


(ぎっしりと、鯛そぼろが敷き詰められていて、旨い。)

風呂に入り、明日に備えて、早めに休む事にしよう。起床時間は、朝4時の予定である。

(おわり/岳南電車編)


【参考資料】
アイラブ岳鉄(鈴木達也著・静岡新聞社刊・2001年)

【訪問日】2016年2月9日(本取材)と3月4日(追加取材)
【カメラ】PENTAX MX-1

2017年7月12日 FC2ブログから保存
2017年7月13日 文章修正・校正(全話分、濁点抑制と自動校正)

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