この綿内駅の木造駅舎も河東線開業当時の古い駅舎で、北東側に倉庫と駅事務室、南西側に改札と待合室がある配置になっており、先ほど訪問した信濃川田駅と同じである。また、切妻の母屋に、二方向に伸びる旅客上屋と出庇、車寄せがあるのも全く同じである。
(2番船ホームから、駅舎近景。)
改札並びには、外壁に据え付けられた木造ロングベンチがあり、年季の入った良い感じを醸し出している。木造改札もそのまま残っており、今でも動かす事が出来、ロック機能も生きている。防寒用のホーム側引き戸も古いままなので、これが開業当時の改札周りの原形であろう。
(改札並びの木造ロングベンチ。)
(改札口。)
待合室に入ると、信濃川田駅と同じ位の十畳程の広さがある。床はコンクリートの打ち放し、南西の窓側に木造ロングベンチがあり、天井も高い。ベンチの隅に、こっそりと穴が開いているのも、ご愛嬌である。なお、天井の照明は蛍光灯であるが、当初のランプの吊り金具が、残っているのも珍しい。
(待合室内の木造ロングベンチ。)
(天井のランプ吊り金具。)
現在は、終日無人駅になっており、公文式の学習塾がテナントで入っている為、出札口やチッキ窓口は閉鎖され、駅事務室内は大幅に改装されているらしい。なお、長野電鉄本線接続駅の須坂駅を除き、屋代線内では、この駅のみテナントが入る。
(出札口・駅事務室跡。)
改札口上の時計も、一瞬見ると、驚く。遊び心があるオリジナルのもので、地元の電気工事会社が寄進したらしい。白漆喰壁は板張りに改装されており、駅近くの若穂幼稚園の子供達が描いた可愛らしい絵が、取り囲むように展示されている。
(名物の遊び時計と幼稚園生達の絵。)
木の格子ガラス窓と改札から差し込む陽が、のんびりとした秋の午前を感じさせ、引き戸の取手も黒光りしていて、とても渋い。
(待合室から、ホームを望む。)
(手書きも、今や珍しくなった。)
駅前に出てみると、車寄せ上のとても大きな駅名電光看板が目立つ。現在、夜間は点灯していないとの事。横窓の出庇も、積雪対策の為か急傾斜で、下から支える斜め梁がある。残念ながら、駅前側と待合室木造ベンチ側の窓と引き戸は、全てアルミサッシに交換されており、ホーム側のみ原形の木造窓枠が残っている。
(駅前からの全景。)
(駅前側の窓の出庇。)
駅前ロータリーは無く、真っ直ぐな広い道が接続し、国道403号線「谷街道」の交差点が見える。駅周辺は住宅が多く、商店や町医院が点在している。この綿内エリアは、須坂や長野市中心部のベッドタウンとして、住宅が増えているそうで、近くには、上信越自動車道のインターチェンジや工業団地も出来ている。
(駅出入口から、町並みを望む。)
なお、駅近くの観光地としては、駅南の天王山にあるアルプス展望地で、噴出した溶岩が急激に冷却して出来た奇岩・県指定天然記念物の「大柳の枕状溶岩」(所要時間は車で15分)や、町中に温湯(ぬるゆ)温泉と呼ばれる温泉も湧いており、駅の東に温泉センターもあるので、旅途中の一風呂に良いだろう。
湯〜ぱれあ 温湯温泉(ぬるゆおんせん)公式HP
また、駅から徒歩20分程の場所には、北野美術館がある。地元の北野家が収蔵した美術品を一般公開しており、県内初の私設美術館になっている。日本画を中心としたコレクションの他、なんと、シャガールやボナール等の洋画も収蔵しているとの事。
北野美術館 公式HP(※駅からの距離は、若穂駅の方が近い。)
綿内駅を十分に見学したら、長野電鉄本線との接続駅の須坂駅に向かおう。発車時刻の10分前には、地元の年配女性が4人やって来て、とても賑やかになる。ホーロー製の柱看板も、今では、なかなか見られなくなった。
(ホーロー製の注意標識。)
(つづく)
グーグルマップの線路部分は、廃線の為に削除されています。駅の所在地は正しいのです。
2019年7月13日 ブログから転載・修正・校正。
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