天浜線紀行(13)天竜二俣駅 その1

時刻は11時40分を過ぎた所である。この天竜二俣(てんりゅうふたまた)駅で、途中下車をしてみよう。

天竜二俣駅は、天浜線一の中心駅として、天竜浜名湖鉄道の本社も置かれている。遠州森駅から金指(かなさし)駅まで延伸開業した、昭和15年(1940年)4月に開業。起点の掛川駅から15駅目、26.2km地点、所要時間約40分、所在地は浜松市天竜区二俣町阿蔵、標高46mの社員配置の有人駅になる。なお、国鉄時代は、遠江二俣(とおとうみふたまた)駅と名付けられていたが、昭和62年(1987年)3月の第三セクター転換時に、駅名が改称された。

乗車してきた下り125列車・新所原行きは、上り126列車・掛川行きと列車交換をし、約3分の停車後に発車する。都会の駅の様な、けたたましい構内放送や発車ベルは無く、非常に静かである。お互いに短汽笛の発車合図をした後に、下り列車が先発になり、発車して行く。


(天竜二俣駅での列車交換風景。左が乗車してきた下り新所原行き列車。)

駅構内を見学してみよう。先に、改札口の中年女性の駅員氏に1日フリーきっぷを見せ、駅構内の撮影見学の許可を取っておく。天浜線で一番大きな木造駅舎等があり、見処も大変多い。勿論、駅舎やホームは国登録有形文化財に指定され、2面3線の堂々たる配置になっている。

2・3番線の掛川寄りの砂利ホーム上には、少し下手な文字の歓迎の看板があり、思わずほっこりする。裏側を見ると、国鉄風の駅名標になっており、錆び付いた中の「浜松市」のラベルが、妙に浮いて見える。ホームに対しての角度も斜めなので、建て植え替えられたらしい。なお、天竜二俣は、人口約2万人弱の天竜市であったが、平成17年(2005年)7月に浜松市と市町村合併し、浜松市天竜区になっている。


(少し下手な文字の歓迎板。)

(国鉄時代のものかと思うが、駅名改称後の第三セクター転換後に作られたもの。)

2・3番線ホームの掛川寄りから、駅舎とホームを眺めてみる。構内北側に駅舎本屋があり、駅舎隣接の単式ホームと2面の大型島式ホームが配置されている。3面5線が本来の配置であるが、現在使用されているのは、南側の3線分のみである。横に長い平屋の大型木造駅舎は、カメラのフレームに入り切らない程である。


(掛川寄りから、ホームと駅舎を望む。)

東側の掛川方を望むと、山が近くまで迫り、直ぐに右カーブをして行く。本線の南側には、大きな車両区があり、指令室、車庫、検修区や給油設備等がある。また、駅舎側ホームの1番線もこの2・3番線も、掛川寄りのホーム半分は砂利のままで、昔ながらの客車ホームになっている。なお、駅舎東側の掛川方に、貨物ホームと側線があったというが、撤去されている。


(掛川方を望む。)

(天竜浜名湖鉄道天竜二俣運転区。国鉄時代からの機関区をそのまま使っている。)

反対側の西側の新所原方は、貨物操車場跡と思われる広大な空き地が広がっている。何か車両が置いてあるので、後で行ってみよう。


(新所原方。)

この駅の最大の魅力は、上下線の2棟が並ぶ長い木造旅客上屋で、往年の国鉄風情が十分に楽しめる。勿論、昭和15年(1940年)開業当時のものであり、築70年になる。1番線の旅客上屋を、掛川方から眺めてみよう。柱の下部は、国鉄風の若草色に塗られ、その上端に黄色のペンキが塗られている。妻面に切羽板が付いており、屋根は山形のトタン葺きで、雪が殆ど降らない暖かな地域の為、屋根の傾斜が緩いのが特徴である。


(1番線ホームの旅客上屋。長さ40mある。)

◆国登録有形文化財リスト「天竜浜名湖鉄道天竜二俣駅上り上屋及びプラットホーム」◆

所在地 静岡県浜松市天竜区二俣町阿蔵字札木114-2
登録日 平成23年(2011年)1月26日
登録番号 22-0163
年代 昭和15年(1940年)1月
構造形式 上屋(木造平屋建、鉄板葺、建築面積205㎡)
プラットホーム(コンクリート造、延長94m)
特記 駅本屋の南に対面する島式プラットホーム。
東西に延びる94m長のプラットホームの西寄りに、
桁行40m、梁間2.6mの上屋を建てる。
小屋組は変形のトラスで、柱や梁の一部に古レールを転用する。
開業当初の建設技術を今に伝える。

※文化庁公式HPから抜粋、編集。

2・3番線ホームの旅客上屋を、新所原方のスロープ下の構内踏切から、見てみよう。ホームの嵩上げ工事が2回されているのが判る。向こうの砂利ホームの部分は昔のままなので、その段差も大きい。また、柱は短く見えるが、嵩上げ前の昔は、更にスマートに見えたはずである。


(2・3番線ホームと旅客上屋。1番線と同じ長さである。)

◆国登録有形文化財リスト「天竜浜名湖鉄道天竜二俣駅下り上屋及びプラットホーム」◆

所在地 静岡県浜松市天竜区二俣町阿蔵字札木114-2
登録日 平成23年(2011年)1月26日
登録番号 22-0164
年代 昭和15年(1940年)1月
構造形式 上屋(木造平屋建、鉄板葺、建築面積205㎡)
プラットホーム(コンクリート造、延長94m)
特記 上りホームの南に対面する島式プラットホーム。
94m長のプラットホームの西寄りに、
桁行40m、梁間2.6mの上屋を建てる。
小屋組は変形のトラス。同形・同規模の上下線のプラットホームと
上屋が並び立ち、中心駅としての風格を示す。

※文化庁公式HPから抜粋、編集。

この旅客上屋の下を歩く時の雰囲気が素晴らしい。基本的に1番線と同じ大きさと構造になっており、少しひんやりとした空気を感じるのは、木造旅客上屋の特徴である。なお、1番線は上り掛川方面、2番線は下り新所原方面、3番線はこの駅発着の列車や折り返しに使用されている。


(2・3番線ホームの旅客上屋下。)

また、ホームを繋ぐ跨線橋は無く、新所原方のスロープ下に構内踏切が設置され、自動車が通れる位に幅が広い。なお、かなり大きな駅であるが、遮断機は一切無く、接近警報機があるだけの簡易な設備になっている。


(幅広の構内踏切。)

また、1番線ホーム寄りの構内踏切の周辺に、面白いものが幾つか展示している。線路際でよく見る勾配標は、勾配を水平距離1,000mの高低差(m)を千分率で表し、「此処まで登り坂が続き、この先も25‰(パーミル)の登り坂が続く」という標示になる。腕木の上下で登り(上り)・下り勾配を示し、裏の黒い腕木がここまでの勾配、柱が現在地点、手前の白い腕木がここからの勾配を示す。なお、単線区間の反対側から見ても、正しく標示される様になっている。水平表示は「0」ではなく、水平を意味する”Level”の「L」と標示する。右隣の「丸にキ」は停止位置目標で、「キ」は蒸気機関車を示しているのであろう。


(勾配標と停止位置目標。)

渦巻き状の面白い装置は、通票受器(タブレット受け取り器)になる。特急等の優等列車や貨物列車が駅を通過する際、運転士がタブレットホルダーの輪の部分を受け取り器に投げ込む。高さをかせぐ為、木の柱の頂上に取り付けられている。


(2基の通票受器。)

金属製の通票渡器(タブレット渡し器)も置いてある。丁寧にペイントがされ、状態が良い物は、中々見られないと思う。タブレットを入れたタブレットホルダーを支柱の先端に装着し、運転士が手で受け取るか、運転席側窓や車体側面のタブレットキャッチャーに引っ掛けて、自動的に受け取る。なお、運転席の高さは車両によって違い、機関車は電車や気動車よりも高い位置にある為、支柱の上下で高さが調節出来る。なお、この受け取り器と渡し器は、同じホーム上にセットで置いてあり、ホーム端の入線側に受け取り器、出発側に渡し器を置き、時間的なズレを作る。
参考動画・YouTube「八高線のタブレット(貨物列車の通過受け渡し他)」※再生時音量注意。


(通標渡器。腕が上下二本の木製タイプもある。)

(つづく)


2020年5月26日 ブログから転載・・加筆・文章修正・校正。

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