大鐵本線紀行(15)田野口駅

今春は、時間の都合で訪問出来なかったが、昨年訪問した田野口駅(たのくち-)を、簡単に紹介したい。駿河徳山駅と下泉駅の間にあり、大井川鐵道の木造レトロ駅の中では、外せない駅のひとつである。

映画のロケやテレビ番組でも、よく紹介される駅である。近年、全面的に復元リニューアルされ、往年の風合いや生活感が払拭されてしまったが、昭和30年頃の当時の雰囲気がよく再現されている。


(ホーム側から。改札口前の竹梯子は、架線補修用である。)

昭和6年(1931年)の延伸開通時開業、起点の金谷駅から31.0㎞地点、14駅目、所要時間約1時間、榛原郡(はいばら-)川根本町田野口、標高234m、1日乗降客数約20人の終日無人駅になっている。列車交換設備と貨物側線があったが、駅舎側の線路と側線は撤去され、島式ホームは単式一線のホームとして使われている。なお、開業以来の駅舎になっており、昭和45年(1970年)に無人化された。


(ホーム側改札口。)

大井川から少し離れた木立の場所に駅があり、ホームの向かいには、古い保線小屋も残っている。なお、駅舎側の線路跡は、植栽と駐車場になっている。


(ホームと金谷方。)

千頭方の線路は緩やかにカーブし、上り勾配になっている。その先には、田野口トンネルがある。


(千頭方。)

平成17年(2005年)に、映画やドラマ等のローケーション撮影を誘致するモデル駅になり、各部の補修復元が行われている。駅事務室、出札口や手小荷物窓口も閉鎖されず、中の様子もよく判る。

また、大井川に突き出た半島上の平坦地にある田野口は、集落と茶畑が広がり、四季折々の花等も多く見られる沿線屈指の撮影地になっている。駅前は県道に面しており、鉄道ファン常連の静岡おでんの店「みつや商店」があったが、先年に閉店し、とても残念である。なお、静岡おでんとは、真っ黒な汁と具に魚のダシ粉を掛けて食べるご当地おでんである。
静岡おでんの会HP


(出札口と鉄道手小荷物窓口。)

(駅前から。ロータリーはなく、直接、県道に面している。)


(国土地理院国土電子Web・田野口周辺)

なお、大井川鐵道本線には、19の駅あり、その内の10駅が、レトロな木造駅舎になっている。ゆっくり一日かけ、駅訪問するのも楽しい。

◆大井川鐵道本線の木造レトロ駅一覧◆

※赤字の駅は、この第一部で紹介記事あり。青字の駅は、第二部で紹介記事あり。

新金谷 有人駅。本社が入っている大きな木造駅舎。車両区と大鐵博物館。
五和 宅地化した市街地にあり、傷みが激しい。電鈴式構内踏切あり。
家山 有人駅。桜の名所。沢山の懐かしい電光式広告や六角形ベンチがある。
抜里 大茶畑のなかの小さな駅。
川根温泉笹間渡 有名撮影地の大井川第一橋梁と駅近くに温泉あり。
地名 北側に日本一短いトンネル。電鈴式構内踏切あり。
下泉 山が迫る狭い土地にある駅。本線の中でも、独特な雰囲気。
田野口 映画ロケやテレビ番組で有名。復元リニューアル済み。
駿河徳山 有人駅。家山駅と並ぶ桜の名所。電鈴式構内踏切あり。
青部 本線最北の木造レトロ駅。駅舎内が荒れているとの情報あり。

なお、支線の井川線は、沢間駅、奥泉駅、接岨峡温泉駅と井川駅が、レトロな木造駅舎になっている。

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抜里1647=家山=小和田=福用=神尾=五和=日切=代官町=新金谷=1725金谷
上り 普通 金谷行き 大井川鐵道16000系2両編成
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そろそろ、この抜里駅とも、お別れである。大井川第一橋梁を渡り、元・近畿日本鉄道16000系の上り金谷行きがやって来る。抜里駅を16時47分に発車。起点の金谷駅に向け、ラストスパートになる。


(上り金谷行き16000系がやって来る。)

今日、駅巡りで利用した「大井川線自由キップ」は、定期券よりも大きな切符になっており、昔ながらに、入鋏(にゅうきょう※)をする。大人3,620円もする高い切符であるが、本線往復の普通運賃と同額であり、地方民営鉄道のフリー切符としては珍しく、二日間有効になっている。

また、本線の硬券切符が入手出来る駅は、金谷・新金谷・福用(委託)・家山・地名(委託)・下泉・駿河徳山・千頭の7駅になる(※)。社員配置駅であっても、窓口営業時間が決まっていたり、委託駅の福用駅と地名駅では、駅前の商店が委託販売をしており、店休等で入手出来ない場合もある。


(大井川線自由キップ。)

列車は、抜里駅から4駅目の神尾駅に到着。大きな崖と大井川、駅の前後はトンネルで挟まれている上、集落まで1kmもあり、島式ホームと小さな待合室のみの秘境駅になっている。
グーグルマップ・大井川鐵道神尾駅

ホーム向かいの土手に「かみおたぬき村」があり、車窓の高さに、36匹もの信楽焼の狸が並んでいる。よく見ると、車掌の格好をした狸もいる。マイクを持った車掌狸は、「大鐵の名物を作ろう」と、このたぬき村を造った初代SL名物車掌の故・石原〆造氏を偲び、特注で作られた「石原狸」である。現在は、大鐵OBがその遺志を継ぎ、「たぬき村・村長」として、手入れをしている。


(神尾たぬき村。一段下がった列の左から二番目が、石原狸である。)

五和駅(ごか-)を発車し、夕暮れの金谷の町に入る。新金谷駅では、元・南海電気鉄道のズームカーが交換待ちをしている。団体ツアー客でごった返す昼の賑やかさは無く、静かなローカル駅の佇まいに戻っており、とても哀愁を感じさせる。


(五和駅付近を走る。)

(新金谷駅では、21000系と列車交換をする。)

定刻の17時25分に金谷駅に到着。今日は一日、十分に鉄道風味を補給する事ができ、とても満足である。自動車で言うならば、クラッシックカーに相当する蒸気機関車や、古い電車の整備や運転、木造駅舎の保存等の大変な苦労があると思うが、これからも日本の保存鉄道の代表として、頑張って欲しい。

駅のコインロッカーに預けた荷物を回収し、JRの上り列車に乗り換え、16スパン・約1,000mもある長い大井川鉄橋を颯爽に走り抜ける。今夜は、隣駅の島田駅前にあるビジネスホテルに泊まり、明日と明後日は、天竜浜名湖鉄道に訪問する予定である。


(東海道本線大井川橋梁を渡る。)

(第二部につづく)


(※)切符専用のハサミ。使用開始(使用済み)であることを示す切れ込みを入れる。
(※)有人駅でも、窓口営業時間があるので注意。時間外は入手できない。下泉駅は無人化された。

【取材日】平成22年(2010年)4月
【カメラ】PENTAX Optio S10

2017年7月31日 ブログから保存・文章修正・校正
2017年8月3日 文章修正・音声自動読み上げ校正

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