小布施めぐり(8)小布施から帰路へ

浄光寺薬師堂からの、長い石段を降りる。仁王門の前は、黄色の絨毯が広がり、自分の長い影がその上に落としている。奥の赤い屋根の建物が本堂で、小さな境内には、茶店や食事処もある。


(仁王門前にて。)

石段参道下の仁王門の仁王像は、左右で作者が違うといわれている。良く見ると、顔の表情も微妙に違う。また、門に向かって左が紅、右が白で、縁起の良い色に塗り分けたらしい。また、二体の内の一体は、寺の七不思議のひとつとして、土中から掘り起こされたと伝えられ、「出世仁王」と呼ばれている。


(左の赤い仁王像・吽形。)

(右の白い仁王像・阿形。)

この浄光寺は、ここ最近の訪ねた古刹の中でも、特に印象の残る古刹になった。観光地化されていない、深山幽谷な雰囲気が最高である。機会があったら、また、訪問したい。

夕刻になり、そろそろ、この屋代線と小布施の旅も終わりに近づいてきた。浄光寺から戻る道の途中に、小布施町6次産業センター【カップマーカー】がある。町公社の農産物直販所で、花卉や園芸用品も販売している。なお、6次とは、1次産業(農業)×2次産業(加工)×3次産業(宣伝・情報)の掛け算が由来で、地元農業の効率的な総合産業化を表すという。公衆トイレもあり、ここで、帰路の軽食や飲料水等を準備しよう。


(小布施町6次センター。)

店頭を覗くと、野菜や果物を格安で販売しており、観光客等に良く売れている様子である。また、手作りジャムや地場ワイン等の農産加工品も、沢山陳列してある。入り口近くに、懐かしい瓶入りの地元産牛乳「オブセ牛乳」を発見。購入して、試しに飲んでみよう。三日月に腰掛ける天使マークの紙製キャップも懐かしく、爪で引き上げるポッチが隅に付いている。

グイッと、飲んでみると、とても濃い味の牛乳で、ソフトクリームの半分位のコクがある。昭和25年(1950年)創業の地元牛乳メーカーで、殺菌温度と時間が80度・15分とやや低く長い為、まろやかなコクのある美味しい牛乳になっているとの事。小布施町内の学校給食や町中で見かける店頭のソフトクリーム原料に使われている。


(地元メーカーのオブセ牛乳。)

時刻は15時40分、西陽になって来た。1日目の自宅からの累計走行キロは、ここまでで、340kmを示している。帰りも高速道路は使わず、行路と同じ八ヶ岳高原ルートで帰宅したいと思う。実は、観光案内所で貰った観光ガイド本に気になる旧家の写真があり、案内係氏に場所を教えて貰ったので、帰りに立ち寄ってみよう。

小布施町中心部を通過、長野電鉄の踏切を渡り、その先の住宅地を右手に入る。やや奥まった場所に平松家【蔵マーカー】がある(国登録有形文化財・内部非公開)。
マピオン電子地図(小布施平松家・1/8,000)

右手の白壁が続く住宅が平松家で、かなりの大邸宅である。近くに車を停めて、南側の路地に回りこむと、黄土色の大きな土蔵が建っている。


(平松家住宅。)

(大柿と土蔵。)

(二階建て蚕室土蔵近景。)

この土蔵は、明治後期に建てられた二階建ての蚕室(さんしつ/蚕飼育部屋)との事。平松家は、大規模な栗栽培を江戸時代から行っていた豪農で、明治から昭和初期にかけては、信州一帯で養蚕業が大変盛んになった事に乗じ、蚕飼育も大規模に行った。当時の国内生糸生産量は長野県の圧倒的な日本一であり、小布施周辺も県内有数の産地になり、河東線(後の屋代線)の建設も、この生糸を東京まで運び、輸出する為でもあった。

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【小布施】15時44分発・累計走行メーター340km。※6次センター

(国道18号線/長野・上田経由)

【小諸】18時00分頃に通過・累計走行メーター415km。

(国道141号線/小海・野辺山経由→国道20号線)

【甲府】20時30分着・累計走行メーター504km。※夕食時
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10分程の見学後、県道まで戻り、千曲川に架かる小布施橋【橋マーカー】を渡り、国道18号線に合流する。この小布施橋は、長野オリンピック時に架橋されたオリンピック大橋が出来るまでは、長野県内最長の道路橋として、長さ約1kmの二車線の上路式ワーレントラス橋になっている。渡し船、舟橋、板橋を経て、現在の橋は昭和43年(1968年)に架橋された。また、この小布施周辺も、水害が特に多いエリアになっている。

このまま国道18号線を南下し、長野市東部を経由し、千曲に抜ける頃に日没となる。そのまま、千曲川回廊の上田・小諸方面に行き、八ヶ岳高原に上がろう。


(夕暮れの長野市街を抜ける。)

長野と上田市街の渋滞通過に、意外に時間がかかってしまった。小布施を出発して、4時間半が過ぎた。途中経由地の甲府で休憩し、夕食を摂る事にしよう。信州方面の旅帰りに何度か寄っている、ほうとう専門店「小作」に入る。
マピオン電子地図(甲府「小作・双葉バイパス店」1/21,000)


(ほうとう専門店小作。国道バイバス沿いにあり、夜の22時まで営業しているので、便利である。)

大玄関で履物を脱ぎ、今日は空いているので、好きな席で良いとの事。中央付近に座ろう。店内は、体育館サイズの大座敷が広がる巨大店で、畳の列を数えてみると、横6畳(10.8m)が縦24列(21.6m)あり、約75坪にもなる。

「ほうとう(餺飥)」とは、山梨県に伝わる煮込みうどんの一種で、いつもの「熟瓜(かぼちゃ)ほうとう」(税込み1,100円)を注文。10分程で、直径20cm位の熱々の鉄鍋のまま出てくる。


(名物の熟瓜ほうとう。)

早速、食べてみよう。とても熱々な香ばしい甘口仕立ての味噌味が、体に染み渡る。旨みたっぷりの野菜も盛り沢山で、大きな南瓜の甘みと味噌味のハーモニーが堪らない。麺はとても太く、強いコシと独特な粘りがある。かつて、米が殆ど食べられなかった、甲州庶民の最上の日常食であったという。


(独特な平たい太麺。)

また、戦国時代の武田軍陣中食としても、よく知られている。コシの強い、幅15mm・厚さ5mm程もある太い平麺を、濃い味噌味で煮立て、南瓜、ゴボウ、人参、わらび等の野菜をごっそり入れた、ボリュームのある煮込みうどんになっている。量は、普通のうどんの2-3人前分はあるので、副菜やおかず等は要らない。

店の話では、味噌はオリジナルブレンドで、各家庭や店によっても味が違う。この南瓜入りや豚肉入りが最も代表的であるが、他にも、辛口カルビ、ちゃんこ、小豆や、猪肉(税込み2,000円)や熊肉入り(同3,000円)等のスペシャルバージョンもある。
甲州ほうとう・小作公式HP


(メニュー表。他に、天ぷらやカツ丼等の定食もある。※表示価格は訪問時。)

とても満腹になり、体も温まった。小休憩後、21時40分に出発する。広大な甲府盆地を横断し、笹子峠下の長いトンネルを越えて行こう。

(おわり/小布施観光編)

小布施文化観光協会公式HP「信州小布施観光図録-小布施日和」


◆屋代線の旅 3日目 小布施観光編◆
全行程自家用車利用。屋代→小布施→自宅の走行距離は314.8km。
平均燃費10.3km/L(燃費計より)、ガソリン代約4,580円(3日目のみ)。
※全行程の走行距離は、602.6km。

【グルメ】
昼食/おぎのや 駅弁「峠の釜めし」(900円)、おぶせ林檎100%ジュース(263円)
間食/小布施堂「お抹茶栗鹿ノ子セット」(530円)、「オブセ牛乳」(瓶入り)
夕食/小作「熟瓜ほうとう」(1,100円/帰路経由地の山梨県甲府にて。)


【歴史参考資料】
「信州おぶせ」小冊子(小布施町発行)

2020年4月2日 ブログから転載・文章修正・校正。

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