わ鐵線紀行(24)車両解説 新型気動車他

後編は、新型軽快気動車とトロッコ車両、ディーゼル機関車を解説したい。

【WKT-500形/WKT-501「けさまる号」・1両のみ】

平成23年(2011年)導入、新潟トランシス製軽快気動車NDC、18m級車体、自重32.0t、330馬力エンジン、定員119名、ロングシート、トイレなし。


(WKT-500形501。)

わ89形の老朽化により、順次更新される計画により、17年ぶりに導入された新型気動車である。今までの、わたらせ渓谷鐡道の気動車イメージを覆す程のお洒落さである。オリジナルカラーの銅色をベースに、窓周りはクリーム色のツートン塗色になり、窓下に金帯を装飾した高級感のあるデザインになっている。また、車体側面のイノシシのシャドーイラストの他、「Watarase」の英語ロゴとカエデの葉も描かれ、車体正面にも描かれている。

オールロングシートの車内は、シックなシートと床面、木目調の内装で明るい。電車と部品を共通化しており、今までの気動車とは雰囲気が全く違い、電車に近い印象がある。なお、トイレは設置されていない。


(WKT-500形501の車内。左側向こうのシートを隔てる大きな柱は、ディーゼルエンジンの排気管。)

(WKT-500形501のシート。細かなモザイク状の模様は、沿線名物の紅葉を模している。)

乗降扉は大型の片開き引き戸式になっており、従来よりもステップが更に低く、駅ホームに対しても、平行になっている。また、わ89形は、左右の扉位置がずれていたが、電車の様に揃う様になっている。扉横上の2号車の表示は、トロッコ併結時、間藤方がトロッコ気動車の1号車になる為である。

なお、単行運行が基本のローカル線用気動車は、床下機器が多く、大きなディーゼルエンジンエンジンも搭載しなければならない。気動車導入路線の一般的な高さ920mmホームの嵩上げをせず、車内床面の完全フラット化は難しい。しかし、技術革新により、ステップはかなり低くなっている。


(WKT-500形501の乗降扉。)

WKT-500形のディーゼルエンジンは、最大出力330馬力のみの公式発表であり、メーカーや主な諸元(しょげん/仕様)が公表されていない。おそらく、新潟トランシス製の新型軽快気動車NDCに搭載される標準エンジンである新潟原動機・DMF13HZ・排気量12,700c.c.・インタークラー付きターボ・燃料直噴式・直列6気筒横置きエンジンと思われる。わ89形のドッドッドッとワイルドな印象のある水平対向エンジンの音よりも、きめが細かく、シャカシャカとした高速で軽快な音に変わっている。


(WKT-500形501のエンジン部。)

屋根上の冷房装置は、薄型タイプを2基搭載している。同社製(元・新潟鐵工所)のJR東日本キハ110系に似ており、角型蓋タイプの通風器三基の他、信号炎管、列車無線アンテナ、カバー付き空気式汽笛を、運転室屋根上に装備する。また、より大音量で鳴る電車用タイフォンも併装している。


(WKT-500形501の屋根上部。)

運転台も電車風であり、気動車らしくないのが特徴である。列車制御系はTICS(ティクス)と呼ばれるシステムでデジタル化され、コンピューターでサポートされる。運転席前に大きなタッチパネル式液晶画面があり、車両全体の制御状況を表示したり、車内照明や冷房等をコントロールする事が出来る。

マスコン(マスターコントローラー/主幹制御器)やブレーキハンドルの操作は、コンピューターで電気的信号に変換され、制御される。液体変速機の変速段・直結段切り替えも、コンピューターが自動で行こない、きめ細かな制御と経済的な運転が可能になっている。なお、常用ブレーキは、電車と同じ電気指令式空気ブレーキであり、従来のSME三管式直通空気ブレーキ採用の「わ89形」と併結は出来ない。


(WKT-500形501の密閉タイプの運転室。扉下部は料金箱を引き込んで塞ぐ。)


(WKT-500形501の運転台。左がマスコン、右がブレーキは、従来の気動車と同じ配置である。)

この新型気動車は、群馬県、栃木県や沿線自治体の補助金で新製され、車両費は1両1億円弱掛かっている。この金額に驚くが、1両毎の製造の上、20-30年間使える高耐久性が必要であり、20年間運用した場合の車両費は、年間650万円程度になる。なお、気動車の法定償却年数は、11年になっている(※)。

トロッコ気動車の併結車両(悪天候急変時等の安全避難用)に使われ、単行の普通列車に運用される場合もある。また、愛称の「けさまる号」と車体イラストのイノシシは、廃車になった「わ89-202(わ89形200番台)」を受け継ぐものである。専用ヘッドマークはないが、乗降扉横に山のイラストと愛称名が塗装されている。

車体の塗装デザイン案は公募され、乗客の投票で決定された。なお、1年毎に1両を新製し、普通列車用の「わ89形」を更新する話もあり、今後の新製車両も、この塗装デザインになる予定である。

車番 愛称・由来 導入年 車体イラスト
WKT-501 けさまる/間藤駅西方の袈裟丸山(1,961m)から
※廃車された「わ89-202」から、愛称を受け継ぐ。
平成23年 イノシシと
カエデ(植物)

■トロッコ用車両■

2編成のトロッコ列車を所有し、全国の第三セクター鉄道会社の中でも、特に裕福な状況である。近年のハイシーズン時は、以前から運行している客車のトロッコ列車が満席になる場合が多く、対応しきれなくなった事や、将来の更新も踏まえ、平成24年春にトロッコ気動車を導入している。

【WKT-550形/WKT-551「わっしー号」・1両のみ】

平成24年(2012年)導入、新潟トランシス製軽快気動車NDC(トロッコ仕様)、18m級車体、自重32.7t、定員52名、木製ベンチシート(クロスシート配置・テーブル付き)、トイレあり(洋式バリアフリー・車椅子対応可能)、冷房なし、売店カウンターあり。


(WKT-550形551。)

(WKT-550形551のエンジン部。)

トロッコ車両ながら、自走単行も出来る両運転台の気動車になっている。銅色をベースカラーに、窓周りを赤と橙のストライプ、金帯付きとする派手な塗装であるが、これも画期的である。

メーカーやエンジン等の基本的な車両性能は、WKT-500形501「けさまる号」と同じになっており、車内は従来のトロッコ客車に準じた木製ベンチを、クロスシート状に配している。なお、WTK-501「けさまる号」を併結車(悪天候急変時等の安全避難用)にし、2両編成で運行されている。
わたらせ渓谷鐡道公式HP内「わっしー号案内」(車内写真の紹介あり)

勿論、側窓は全て開放されている。随所のデザインの細かな工夫と最新の接客設備を持つ車両になっており、わっしー号専用の大型円形ヘッドマークを掲げ、運行されている。


(WKT-550形551の特製トロッコわっしー号ヘッドマーク。)

冷房装置は無く、とても平滑な屋根になっている。両サイドには、細長い天窓が幾つもあり、採光と展望がより良くなっている。


(WKT-550形551の屋根上部。)

車内には、アテンダントの詰所を兼ねた売店カウンターも設置されており、間藤方運転席横には、子供達が楽しめる様に模擬運転台が設置され、速度計も動く仕様になっている。これは、廃車された「わ89-202・けさまる号」の運転台を再利用した。

第三セクター鉄道に納入されたトロッコ気動車としては、平成20年(2008年)に全線廃止になった宮崎県の高千穂鉄道以来と思われる。しかも、事実上のワンメイク車であり、中古気動車のトロッコ改造例はJRでもあるが、新製は大変珍しい。車両価格は、約1億6千万円になる。

冬季の12月から3月にかけては、脱着式の側窓ガラスを装着出来、トロッコ列車ならぬ、ワイドビュー列車としても、運行出来る工夫がしてある。客車のトロッコ列車は春から秋の運行になるが、このトロッコ気動車は通年運行しており、冷房は無いが、暖房は装備している。


(桃桜が競り咲く春盛りの神戸駅から、終点の間藤駅に向けて発車する「トロッコわっしー1号」。神戸駅2番線ホームから、後追い撮影。)

車番 愛称・由来 導入年 車体イラスト
WKT-551 わっしー/オリジナルキャラクター名から 平成24年 カエデ(植物)

【わ99形5000番台/トロッコ客車・合計4両】

第三セクター転換後の平成4年(1992年)から、渡良瀬川の風光明媚な渓谷風景を売りに、JR東日本からトロッコ車両を借り入れ、トロッコ列車を運行していた。その後、JRの都合により、一時中止となったが、平成10年(1998年)に客車を購入し、再開した。なお、トロッコ客車は、動力を搭載していない為、ディーゼル機関車に牽引される。

編成は足尾方から、わ99-5010(WR1/座席車)+わ99-5020(トロッコ車)+わ99-5070(トロッコ車)+わ99-5080(WR2/座席車)の4両編成になっている。前後の座席車は、悪天候急変時等の安全退避用になり、2両のトロッコ車両を挟む編成になっている。「かわせみ」と「やませみ」の愛称があり、車体にイラスト入りのマークが描かれている。

トロッコ車両の「わ99-5020(元・京王デハ5020)」と「わ99-5070(元・京王電鉄デハ5070)」の乗降扉は、全て撤去されている。なお、トロッコ車両への乗車は、前後の座席車の貫通路を使う。


(DE10-1537とわ99-5010+わ99-5020「かわせみ」。)

(桐生方からの編成全景。前後の座席車よりも、トロッコ車両の屋根は低い。)

JR東日本から譲渡された国鉄12系客車を、オリジナルカラーの銅色と装飾金帯に塗装変更し、そのまま使っている。また、この12系客車は、同形式の中でも最末期に製造された車両グループに当たり、スハフ12-150こと、わ99-5010に冷暖房・サービス用ディーゼル発電機を搭載している。なお、元の車番が床下機器に残っている。

トロッコ車両は、京王電鉄5000形電車を大改造した。辛うじて、戸締め表示灯が車体側面上部に残る位であり、電車の面影は殆ど見られない。冷房装置、パンタグラフや床下電装品の撤去、台車の交換、ブレーキシステムも、座席車の12系客車と同じものに交換してある。

車番 種車 愛称 特記
わ99-5010 国鉄スハフ12-150 かわせみ 緩急車・床下発電機搭載
わ99-5020 京王電鉄デハ5020 かわせみ 改造車両・乗降口なし
わ99-5070 京王電鉄デハ5070 やませみ 改造車両・乗降口なし
わ99-5080 国鉄スハフ12-151 やませみ 緩急車・大間々駅乗車口

[わ99-5010・5080の主な諸元]
元・国鉄12系客車(スハフ12-150・151)、緩急車、20m級車体、昭和53年(1978年)製造、新潟鐵工所(現・新潟トランシス)、冷房あり(集約分散式)、折戸式自動乗降扉、クロスシート、トイレあり。

[わ99-5020・5070の主な諸元]
元・京王電鉄5000形(デハ5020)・5050形(デハ5070)、昭和45年(1975年)製造、日立製作所、京王重機改造(平成10年)、自重15.0t、定員91名(わ99-5020)・94名(わ99-5070)、木製ベンチシート(クロスシート配置・大型テーブル付き)、冷房なし、トイレなし、飲料自動販売機あり(わ99-5020のみ)。

【DE10形ディーゼル機関車/1537号機・1678号機・合計2両】

1537号機は、平成10年(1998年)のトロッコ列車の自社運行開始時に、JR東日本より譲渡された国鉄DE10形ディーゼル機関車である。なお、1678号機は予備機関車として、平成12年(2000年)に追加譲渡された。

川崎車両・昭和46年(1971年)製造の1537号機は、トロッコ列車専用塗色の銅色に金帯をまとう。


(春の臨時列車・花桃号を牽引する1537号機。神戸駅にて撮影。)

日本車両・昭和49年(1974年)製造の1678号機は、国鉄色のままになっている。


(下りトロッコわたらせ渓谷号・1678号機。通洞駅にて撮影。)

[国鉄DE10-1500番台の主な諸元]
最高時速85km(高速側)/45km(低速側)、セミセンターキャブ(凸型車体)、全長14.2m、全幅3.0m、全高4.0m、自重65.0t、AAA-B軸配置、軸重13.0t、V型12気筒ディーゼルエンジン1基(DML61ZB 61,070c.c. 1,350馬力/1,550r.p.m.)。

これらのトロッコ列車は、わたらせ渓谷鉄道の看板観光列車として、大変人気がある。近年、テレビ等のメディアによく紹介され、一般観光客の間でも有名になり、ハイシーズンのトロッコ乗車整理券(500円)の入手が困難な日もある。全国の赤字ローカル線から転換した第三セクター鉄道の中でも、最も観光客誘致に成功していると言える。

なお、平成24年(2012年)春からの運行が始まった「トロッコわっしー号」は、両運転台気動車であり、折り返し駅での機回しが不要である事から、起点の桐生駅から終点の間藤駅までの全区間運転になっている。しかし、国鉄DE10形ディーゼル機関車が牽引する「トロッコわたらせ渓谷号」は、始発駅と終点駅での機回しが必要な為、大間々駅から足尾駅の区間運転になっている。

◆わたらせ渓谷鐡道新型気動車・主要諸元(平成24年夏現在)◆

※転載や商用利用は厳禁。

WKT-500形 WKT−550形
車両数 1両 1両
車番 501 551
発注会社 わたらせ渓谷鐡道 わたらせ渓谷鐡道
製造会社 新潟トランシス 新潟トランシス
導入年 平成23年(2011年) 平成24年(2012年)
車体構造 鉄道用車両 鉄道用車体(トロッコ気動車)
運転台 両運転台・密閉タイプ
前面貫通扉あり
両運転台・密閉タイプ
前面貫通扉あり
全長 18.5m 18.5m
自重(空車時) 32.0t 32.7t
エンジン・最高出力 330馬力/2,000r.p.m.(※) 330馬力/2,000r.p.m.(※)
台車 形式名不明・二軸駆動
軸距2,100mm 車輪径860mm
ボルスタレス空気バネ
形式名不明・二軸駆動
軸距2,100mm 車輪径860mm
ボルスタレス空気バネ
変速機 形式名不明・直結二段式 形式名不明・直結二段式
常用ブレーキ 電気指令式ブレーキ(※)
抑速ブレーキ
電気指令式ブレーキ(※)
抑速ブレーキ
塗色 銅色とベージュのツートン
窓下に金帯
ロゴ・シャドーイラスト付き
銅色に橙色と赤色の三色ストライプ
窓下に金帯
ロゴ・シャドーイラスト付き
座席・シート色 ロングシート・茶色 木製ベンチシート・木目仕上げ
(クロスシート・テーブル付き)
定員(立席含む) 119名 52名
冷房装置 あり なし
車椅子対応
車内トイレ なし あり
特記 新潟トランシスNDC
TICS搭載
最高時速95km/h
新潟トランシスNDC
TICS搭載
側窓ガラスユニットを嵌め込むと、
冬季運転が可能で暖房装備。
雨除けカーテン装備
天窓と売店カウンター設備あり。
WKT-500形 WKT−550形

(※)
新潟トランシスの新型気動車用ディーゼルエンジンは、新潟原動機製の330馬力と思われる。新潟原動機のHPで紹介されている鉄道用ディーゼルエンジンの内、330馬力のエンジンは、DMF13HZ、12,700㏄横型直列6気筒、インタークーラー付ターボディーゼルエンジン(330馬力/2,000rpm)が該当するが、このエンジン形式が搭載されているかは未確認。追記・2両目のWKT-502に、DMF13HZを搭載している事が、メーカーHPに発表された。
(※)
わ89形気動車とは、常用ブレーキ方式が違う。併結は不可。

(つづく)


在籍と車両データは、平成24年(2012年)夏時点。

(※鉄道車両の法定償却年数)
蒸気機関車と電気機関車は18年、電車は13年、気動車とディーゼル機関車は11年。実際には、20年から30年位は使っている。きちんとメンテナンスさえすれば、蒸気機関車は100年間使え、実際に全国各地の復活蒸気機関車として活躍している。なお、電車や気動車は、最長で40〜50年間程度。

2017年8月12日 ブログから保存・文章修正・校正
2017年8月12日 文章修正・音声自動読み上げ校正

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