樽見線紀行(15)高科駅

++++++++++++++++++++++++++++++
【乗車経路】〓;第◯根尾川橋梁、】【;トンネル
日当1638=〓8】【〓7=〓6】【〓5=鍋原=〓4=1643高科
上り26列車・普通大垣行(ハイモ230-312・単行)
++++++++++++++++++++++++++++++

定刻の16時38分に日当駅を発車、乗客は自分を含めて3人である。ハイライト区間の5つの鉄橋とふたつのトンネルがある急勾配を軽快に下って行く。

ハイモ230-312の車体は、バス車体を利用しているので、天井がマイクロバス並に低く、観光バスと同じ様に窓ガラスの下部が、横にスライドして開くタイプになっている。他、ベンチレーター(通風器)、蛍光灯カバーや車内放送スピーカー等、細かな部分を見ていくと、バス部品がふんだんに使われていて面白い。ロングシートも、レトロなエンジ色で、路線バスの雰囲気がある。


(レールバスのハイモ230-312の車内。身長170㎝位あると、天井に頭が付いてしまう。)

(二段ステップ、引き戸タイプの乗降口。非常ドアコックの表示も、バス部品である。)

(半開放型の運転席。後方下の開口部は、料金箱の操作用である。)

途中駅の鍋原駅(なべら-)を経て、乗車5分で高科駅(たかしな-)に到着する。列車は、直ぐに発車して、駅南側の9‰(パーミル)の堀割り勾配を下って行く。


(国鉄風の駅名標と観光案内板。)

(直ぐに高科駅を発車する。)

高科駅は、新線区間にある小さな単式ホームの無人駅で、地元の駅設置要請により、平成元年(1989年)3月の延伸開通時に開業した。起点の大垣駅から13駅目、25.2km地点、所要時間約45分、所在地は揖斐郡揖斐川町谷汲高科、標高98mの終日無人駅である。なお、この高科駅と隣の谷汲口駅(たにぐみぎち-)のみ、揖斐川町の所在になっている。


(国土地理院国土電子Web・高科駅周辺。)

この高科は、根尾川が大きく蛇行する両岸の比較的大きな平坦地で、明るく開けた印象がある。駅の周りは、田圃ばかりで人家は無く、ホームからは大きな水田が見渡せ、川が流れる大きな音もするが、一段低い為に川面は見えない。また、ふたつの小さな支流も合流し、激しく蛇行する金山渓谷の南側出口に面している。

ホームの観光案内板によると、この駅から南の伊野地区に新宮神社があり、樹齢1000年の「伊野の一本スギ」の巨杉(きょさん)があって、第三根尾川橋梁からも見える。御神木と県の天然記念物になっており、樹高35m、幹周り8.8m、モミジやネムの宿木もあるらしい。
グーグルマップ・新宮神社「伊野の一本スギ」

また、美濃藩の重臣であった斎藤道三により、下克上にて追放され、国を盗られた土岐頼芸(ときよりのり)の墓が、駅西方の岐礼谷(きれ-)地区の法雲寺にある。
グーグルマップ・谷汲岐礼・法雲寺

新線区間の為、近代的なコンクリートの単式ホーム二両編成程度の長さである。日当駅と同じログハウス風の小さな待合所が設置されている。また、道路を挟んで、大きな公園があり、公衆トイレや公衆電話ボックスが設置されている。

樽見方は、田園の中を真っ直ぐにに走り、金山渓谷の入り口に向かう。大垣方は、コンクリートの切り通し部を下ると、その先に第三根尾川橋梁が架かっている。また、この駅のホームにも、大きな桜が二本あり、春は鉄道ファンの撮影名所になっている。


(高科駅全景。)

(樽見方。)

(駅入口側から。あまり、駅の感じがしない。)

ホームの目の前には広大な水田が広がり、とても長閑な景色である。また、駅から離れた場所に幾つかの集落が点在し、北と南にある集落からの距離が、平等になる様に駅が設置されている様である。


(ホーム前の大水田。根尾川は低い位置になるので、駅からは見えない。)

暫く、静かな山里の雰囲気を楽しんでいると、遠くから鉄橋を渡る音がしてくる。下り23列車樽見行き17時17分発のハイモ295-516が到着し、直ぐに発車して行く。タイフォンが、周囲の山に大きくこだまし、紫煙を上げながら、金山渓谷の入り口に向かう。


(金山渓谷に向かう下り樽見行きハイモ295-516。)

山の陰に陽が隠れ、肌寒くなってきたので、小さな待合室内で列車を待とう。先程の青いハイモが終点樽見駅で折り返し、17時58分発の上り28列車・大垣行きがやって来る。とうとう、この樽見鉄道最後の列車に乗車になる。


(17時58分発の上り28列車大垣行きがやって来る。)

++++++++++++++++++++++++
【乗車経路】
高科1758======1846大垣
上り28列車・普通大垣行(ハイモ295-516・単行)
++++++++++++++++++++++++

夕暮れになり始めた頃、高科駅を定刻の17時58分に発車する。駅南の下り勾配を降ると、第三根尾川橋梁を渡り、軽快に根尾谷を下って行く。途中の神海駅(こうみ-)では、上り25列車樽見行きのハイモ295-617と、列車交換となる。乗客は、自分を入れて3人いて、今日は初めて、他の鉄道ファンを見かける。


(神海駅にて列車交換となる。)

主要駅の本巣駅や近くに学校がある北方真桑駅、ショッピングモールのあるモレラ岐阜駅から、勤め買い物帰りの乗客や高校生達が大勢乗車して来る。夕方の通勤通学の時間帯になるので、大垣駅到着前には、30人以上の乗客になり、のんびりとした樽見鉄道の日中の光景とは、違う雰囲気になっている。

大分暗くなった18時46分に、起点の大垣駅6番線に到着。運転士にお願いして、1日フリーきっぷを訪問記念に貰う。なお、路線バスの様に、乗客は一人ずつ清算して下車する為、時間が掛かる。ホームでは、大垣駅から乗車する大勢の人が、並んで待っている。最後に記念の撮影をしておこう。


(大垣駅に無事に到着する。)

樽見鉄道の旅もこれにて終わりとなる。また機会があったら、是非、桜の咲く頃に訪問したい。

このまま、上り東海道本線で名古屋に向かい、新幹線で東京へ帰るとしよう。名古屋駅では、2時間の待ち合わせがあるので、北陸本線富山行きの「しらさぎ」、紀勢本線新宮行きの「南紀」、中央西線長野行きの「しなの」の名古屋発の在来線特急の発車を見学する。この時間帯は、各方面の長距離特急の最終発車時間帯になっている。

特急列車の発車ラッシュを見届けた後、一度、改札を出よう。土産としてリクエストされた味噌かつソース2本を調達する。ホームに戻り、小腹が空いてきたので、ご当地きしめんの立ち食いうどん店に入る。やはり、名古屋では、全て「きしめん」の看板になっており、各ホームにずらりと建ち並んでいる。


(名代きしめん住よし。ホーム上に8店舗もある。)

食券の券売機を見ると、メニューはかなり多彩で、名古屋コーチンきしめん840円やチャーシュー入りきしめん530円が、関東人から見ると特徴的に感じる。なお、かき揚げ入りは500円、かけきしめんは340円になっている。駅うどん店であるが、ビール、冷酒、とうふ、おでんや串かつ等のつまみ類もあるのが、昭和風である。


(食券券売機。)

今回は、定番の「きつねきしめん」(410円)を注文。麺は平たく、独自の食感がある。ネギと鰹節を沢山乗せるのが、ご当地の決まりで、やや薄口味の出汁がよく効いている。なお、きしめんの起源は、愛知県刈谷市(三河国芋川)の芋川うどんと言われ、名称の由来については、幾つかの説があるらしい。


(きつねきしめん。)

次は、駅弁を手配しよう。高山本線の特急ホーム端に向かう。昨日の伊勢志摩めぐりの帰りに立ち寄った際は、完売であったが、「今日は色々あるわよ」と、売り子の年配女性も昨日と同じ人で、顔を覚えていてくれた。

お目当ては、松浦商店「松浦のみそカツ」(900円)である。熟成した柔らかいロースカツに、コクがある老舗カクキューの八丁赤味噌がたっぷり掛けてあり、海老カツや味付ゆで卵も付いて、なかなか豪華である。松浦商店は、大正11年(1922年)創業の名古屋駅を代表する老舗駅弁屋(調製所)で、この他にも、幕の内弁当「なごや」、鶏めし「コーチンわっぱめし」が看板駅弁になっている。
松浦商店公式HP

新幹線改札口を通り、名古屋21時23分発の上り532A列車・ひかり532号東京行きに乗車する。300系16両編成の6号車・普通車指定席であるが、乗車率は20%程度で、ガラガラである。それでは、気兼ねなく、駅弁を食べるとしよう。


(松浦のみそカツ。税込900円。掛け紙はない、ボックスタイプである。)

小振りに見えるが、駅弁は詰まっているので、大人男性でも結構な量がある。冷めても固くならない様に工夫された大きなロースカツ、濃厚でコクのある八丁赤味噌が美味しい。また、上蓋裏の「とん平のウンチク」を読みながら食すのも、楽しい。


(名物の松浦トン平のウンチク。)

(盛り付け。)

駅弁を食べたのと、明知鉄道、長良川鉄道、伊勢志摩めぐりと、今日の樽見鉄道の連続4日間の旅の疲れが出たのか、うつろうつろになって来た。窓の外は、高速で過ぎ去る町の灯だけが見え、300系新幹線のゴツゴツとした独特な走行感をシートから感じる。横浜までの所要時間は、たったの1時間30分である。

(おわり/樽見鉄道編/美濃三鉄めぐりの旅)


◆樽見鉄道乗車記録◆

【取材日】2010年5月6日(美濃三鉄めぐりの旅の4日目)
【乗車列車数】7本(下り3本・上り4本)
【訪問駅】6駅(大垣駅はホームのみ・本巣駅・樽見駅・谷汲口駅・日当駅・高科駅)
【途中下車観光等】2ヶ所(谷汲山・華厳寺、本巣機関区)
【旅カメラ】PENTAX Optio S10

名古屋に宿泊し、名古屋から大垣へ向かう。

名古屋752 東海道本線下り2105F・特別快速大垣行(313系8両編成・クモハ313-5010)
826
大垣840 樽見鉄道下り11列車本巣行・ハイモ295-516・単行
910
本巣941 下り13列車樽見行・ハイモ295-516・単行
1015
樽見1028 上り16列車大垣行・ハイモ295-516・単行
1050
谷汲口1350 上り20列車大垣行・ハイモ230-312・単行(谷汲山・華厳寺観光)
1400
本巣1538 下り21列車樽見行・ハイモ230-312・単行(本巣機関区見学)
1601
日当1638 上り26列車大垣行・ハイモ230-312・単行
1643
高科1758 上り28列車大垣行・ハイモ295-516・単行
1846
大垣(終)

【帰路・東海道新幹線経由】
大垣1854 東海道本線上り5128F・特別快速豊橋行(313系6両編成・モハ313-5010)
1925
名古屋2123 上り532A・ひかり532号東京行(300系16両編成6号車328-41)
2251
横浜


2017年7月29日 FC2ブログから保存・文章修正・校正
2017年7月29日 音声自動読み上げ校正

© 2017 hmd all rights reserved.
文章や画像の転載・複製・引用・リンク・二次利用(リライトを含む)や商業利用等は固くお断り致します。


[TrackBack]「昭和の鉄道員ブログ」より。
【186】樽見鉄道との付き合い1:国鉄樽見線時代
【188】樽見鉄道との付き合い2:第三セクター化後(前篇)
【190】樽見鉄道との付き合い3:第三セクター化後(後篇)