大鐵本線紀行(2)新金谷へ

牧之原公園から西に行くと、大茶畑散策と旧・東海道金谷坂の石畳を下る観光散策コースがある。鉄道開通以前のメインストリートであり、一刻、旧街道往来の頃の雰囲気に浸るのも良い。なお、一時間半から二時間程あれば、昔の東海道風情が十分に楽しめる。

一面に広がる茶畑の中を歩く。この周辺では、「静岡の茶草場農法(ちゃぐさばのうほう)」と呼ばれる伝統的農法が、今も行われている。茶の下に敷くススキや笹を刈り取る草刈り場が、茶畑と隣接してあり、この周辺の独自のものである。平成25年(2013年)には、貴重な生物多様性を維持する事から、世界農業遺産に認定されている。


(牧之原台地の上には、大茶畑が広がり、濃厚な茶の香りが漂う。)

(遠くの粟ヶ岳には、檜文字で「茶」と書かれていた。標高は532mある。)

暫く、一面に広がる茶畑の中を歩いて行くと、東海道金谷坂の石畳【赤色マーカー】がある。復元石畳であるが、旧・五街道では、東海道箱根峠、中山道十曲峠の「落合の石畳」と並び、全国に三箇所のみ現存し、貴重な史跡になっている。


(金谷坂入り口。長さは430mあり、歩くのもきつい位の急坂になっている。)

この石畳は30mしか残っていなかったが、一人一石運動「平成の道普請」を行い、山石を地元の協力で集め、430mまで復元延長した立派な石畳道になっている。坂の途中には、旅人の往来を見守った五つ子楠や六角堂のすべらず地蔵尊がある。なお、「すべらず」は、この急坂に滑らない石を敷いてある由来より、地元受験生の合格祈願も人気がある。

また、近くには、戦国時代末期に徳川家と武田家が攻防した諏訪原城址、お茶の郷博物館(入館は有料)や島田市公共施設の石畳茶屋(※)がある。この坂の下まで行くと、茅葺きの旧家造りの石畳茶屋【食事マーカー】がある。金谷や大井川、東海道の歴史等の展示の他、昔ながらの囲炉裏のある座敷では、休憩もできる。SL乗車前の小休憩をし、美味しい川根茶をご馳走になろう(入館無料、茶は有料)。
meguri石畳茶屋公式HP

一服後、石畳茶屋から急坂を下り、金谷駅に戻る。既に、駅コインロッカーに荷物を預け、貴重品とコンパクトデジタルカメラのみの旅装にしてある。JR金谷駅隣の大井川鐵道金谷駅に向かうと、プレハブ駅舎が建っており、鉄道駅らしくない感じになっている。


(大井川鐵道金谷駅。)

カラカラと引き戸を開け、中に入ると、待合室と小さな売店が併設され、午前中は駅弁も販売している。改札口の初老の駅長氏から、大井川鐵道本線のみのフリー切符である「大井川自由キップ」(2日間有効・大人3,620円)を購入する。

待合室の壁には、色々なポスターや、蒸気機関車の写真が沢山掲示してある。懐かしい電光式の駅時刻表を見ると、本線終点の千頭駅までは、1時間1本程度の運行となっており、終電時刻は21時15分発と早い。


(出札口。自動券売機もあり、普段は、改札口横の小窓で、フリー切符を発券している。)

(売店の上にある駅時刻表。)

先ずは、隣駅の新金谷駅に行ってみよう。SL急行列車は、この金谷駅から乗車できるが、新金谷駅を見学したい為、新金谷駅から乗車する。また、ホームに出ると、大きな観光案内板が二枚あり、沿線の見所がよく判る。昔、道路側にあった機回し線は、撤去されている。


(ホーム向かいの観光看板。先程の石畳の案内もある。)

(沿線観光案内看板。)

大井川鐵道のホームにある小さな鉄製駅名標は、国鉄風であるが、独特な感じがする。向こう側は、東海道本線のホームになり、長いコンテナ貨物列車が二本も通過して行った。


(独特な建て植え式駅名標。広告付きになっている。)

折り返しの新金谷行きが、やって来た。鉄道ファンならば、説明の必要は無い位の名車である。大井川鐵道では、古い電車も大切に使われており、動く鉄道博物館になっている。


(折り返しの電車が到着。)

この元・近畿日本鉄道16000系特急電車は、ローカル民営鉄道の普通列車としては、とても豪華な車両である。勿論、普通切符やフリー切符のみで、乗車できる(別料金不要)。シートもポワンポワンと勢い良く跳ね、床下からのコンプレッサーのコトコト音が響いてくるのを聞くと、懐かしい気持ちになる。


(元・近畿日本鉄道16000系の車内。)

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金谷945======948新金谷
下り普通・新金谷行き
大井川鐵道16000系2両編成
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定刻の9時45分に金谷駅を発車する。ウィーンとした懐かしいモーター音と共に、東海道線に暫く寄り沿い、レールのジョイントを踏みながら、時速40km位で島田方にのんびりと走って行く。忙しく走り抜ける東海道本線の列車とは、正反対の光景が面白い。また、山側の高台になっており、金谷の街並みが木立から見え隠れしている。

なお、高性能な特急用電車であるが、大井川鐵道の架線給電状況に合わせ、吊り掛け式電車並みに加速性能を抑えて運転している。その方が、車両も痛まなくて良い。


(のんびりと揺られながら走る。金谷駅から新金谷駅間。)

暫く、東海道線と並走した後、20‰(パーミル)の急勾配を下りながら、大きな左カーブを曲がり、高架橋を潜ると、大きな車両区が見えてくる。3分程で、新金谷駅に到着する。


(新金谷駅1番線に到着する。)

(つづく)


(※)その後、地元民間企業に委託された模様。

2017年7月31日 ブログから保存・文章修正・校正
2017年8月2日 文章修正・音声自動読み上げ校正

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