小布施めぐり(5)小布施中心部 後半の部

桝一市村酒造場本店前【A地点】の国道から、細道が延びている。ここを奥に歩いて行くと、小布施陣屋跡【青色マーカー】がある。江戸時代中期の元禄14年(1701年)から15年間、小布施は幕府直轄領であったので、陣屋(代官所)が置かれていた。今は、この陣屋小路と敷地内にあった稲荷社の祠だけが残っている。小布施周辺の39ヵ村・石高約1万9,000石を直轄地とし、陣屋の敷地は46坪あり、この祠の西側100mに主屋が建っていたという。なお、幕末の小布施は、松代藩の預りになっている。


(陣屋小路を歩く。)

(陣屋跡の史跡標示柱と稲荷社。)

国道に戻り、最も建物が建て込んでいる場所には、町を代表する特産の栗を使った和菓子店の小布施堂本店【カップマーカー】が構える。主屋横の江戸時代中期の宝暦年間(1750年代)に建てられたとされる正門は、葛飾北斎が何度も門を跨いだと伝えられている(敷地内部は非公開・無断立入禁止)。
北信濃・小布施/小布施堂公式HP

実は、葛飾北斎を小布施に招いた高井鴻山(こうざん)の本姓は市村であり、小布施堂を経営する、市村家先祖・市村作左衛門の孫にあたる。市村作左衛門は造酒屋・桝一酒造場を営み、天明の大飢饉(1782−1788年)の際、私財を提供して町民を救済した功績から、幕府より「高井」の姓と帯刀を許されたという。


(小布施堂。)

(市村家正門。)

折角なので、ご当地名物の栗菓子を食べてみよう。店頭の販売所の奥に食事処がある。甘味好きの女性客で大変混んでいたが、混雑の途切れる合間に快く案内して貰った。看板商品の「お抹茶と栗鹿ノ子(くりかのこ)」(税込み530円)を注文。お茶は緑茶と抹茶が選べるが、抹茶を選択。栗鹿ノ子は、小布施栗菓子の代表的な逸品で、栗だけで練り上げた栗あんに大粒の栗の実を入れた栗金時である。


(小布施堂栗鹿の子。)

(抹茶。)

栗味のクリームが、とても柔らかな栗にたっぷり絡んでいる。とても甘いが、不思議に諄くない上品さがある。抹茶との相性も良く、最後に飲むと、抹茶の渋みが甘さを引き締める感じに驚いた。

上品な雰囲気を楽しんだ後は、小布施堂を後にして、周辺を散策してみよう。こちらも、栗和菓子で有名な老舗・桜井甘精堂本店【水色マーカー】である。小布施堂と並び、町の二大栗菓子ブランドになっている。
北信濃・小布施/桜井甘精堂公式HP


(桜井甘精堂本店。)

桜井甘精堂本店が面している、観音通り周辺の住宅地の中には、美術館、ギャラリー、寺院、小さな和菓子店、カフェや造酒屋等が、沢山点在している。観音通りの奥には、有名日本画家・中島千波氏の作品を中心に展示する町立美術館「おぶせミュージアム・中島千波館」があり、周辺に小さなギャラリーも多い。


(観音通りの様子。観光客は比較的少ない。)

桜井甘精堂本店の国道向かいには、築180年余りの古民家を改装した、「かんてんぱぱ小布施店」【緑色マーカー】がある。メーカー直販所であるが、休憩処や古い土蔵に囲まれた小さな庭園が利用出来る。「かんてんぱぱ」は、長野県南部伊那市の寒天専門メーカー・伊那食品工業のブランド名である。
伊那食品工業/かんてんぱぱ公式HP


(かんてんぱぱ小布施店。)

この観音通り沿い中程の地元造酒所の松葉屋本店【酒マーカー】は、伝統的醸造法の清酒「北信流」や「本吉乃川」が代表銘柄になっている。江戸時代創業、明治初期に小布施に移転してきた造り酒屋で、後ろの土蔵は江戸時代のもの。敷地内には、赤レンガの煙突も残っている。蔵見学も可能との事(要問合せ)。
北信濃・小布施/松葉屋本店公式HP


(松葉屋本店。松代藩御用達の造り酒屋であった。)

駅から少し離れると、住宅地の中に林檎畑があるのが、北信州らしい。丁度、美味しそうな林檎が、たわわになっていた。


(町中の林檎畑。)

時刻は13時を過ぎており、お腹も空いてきた。しかし、ハイシーズンの観光地のレストランは、何処も混んでいる。町営観光駐車場の近くに、おぎのや【レストランマーカー】の小さな店舗があるのを見つけた。


(おぎのや小布施店。)

もはや、何も説明も要らないと思うが、信越本線横川駅の有名駅弁「峠の釜めし」を購入する。車内で食べようと思ったが、駐車場の案内係氏から、「(事務所横の)休憩所テーブルを利用して良いよ」と言われ、そこで頂く事にしよう。隣接の売店で、地元小布施産の林檎100%ジュース(税込263円)も購入する。


(峠の釜めしと地元産林檎ジュース。)

(峠の釜めしの盛り付け。)

いつ食べても、素朴で染み渡る釜飯の味は飽きない。また、具の種類の多さや量、美味しい御新香が付いているのも良い。駅での購入ではなく、微妙な所であるが、この屋代線の旅での唯一の駅弁になった。益子焼の器は、粥の一合焚き等に再利用出来るという。水道で良く洗い、車に入れて置こう。

おぎのやも、信越本線横川-軽井沢間の廃止以降、観光地や国道沿いのロードサイド店を出したりと、販売方法の転換をしている。30代後半の男性店員に尋ねた所、小布施の店舗は土日のみの営業で、今日はたまたま、団体観光客向けに営業しているとのこと。
峠の釜めし本舗おぎのや公式HP

小布施観光の中心部は、北斎館周辺にコンパクトに集まっていると強く感じた。観光開発がかなり進んでいる為、旧宿場町の観光と言うよりは、お洒落な美術館やギャラリー巡り、和スイート試食、カフェでお茶が楽しい所であろう。

(つづく)


【歴史参考資料】
「信州おぶせ」小冊子(小布施町発行)

2020年4月1日 ブログから転載・文章修正・校正。

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