上信線紀行(13)おきなわ屋

南蛇井駅(なんじゃい-)の近くに、面白い店があるそうなので、ちょっと行ってみよう。駅前の路地を右に歩いて行くと、おきなわ屋と言う地元商店がある。実は、テレビの有名昼バラエティ番組に、紹介された店である。


(おきなわ屋。)

(賑やかな店頭。一見して、何屋であるかは、判らない。)

店頭の圧倒的な情報量に驚きつつ、左手の古い木戸をカラカラと開けると、「いらっしゃい」と元気な中年の店主夫婦が迎えてくれる。ローカル線の旅の途中に立ち寄ったと言うと、「どこからきたの」と、二人とも大変話好きな人柄で、急に話が弾む。しかしながら、店内を見渡すと、まるで祭りの様な凄い状態である。


(中央通路は、駄菓子と玩具の山である。小学校が近い事もある。※許可を受けて撮影。以下同。)

(本当は、魚屋である。右隣の冷蔵ケースには、肉が置いてある。)

この甘楽の里山近くに、「おきなわ」と言うのも面白く、由縁を尋ねてみると、太平洋戦争中に、沖縄から疎開してきた叔母が開いた店であるとの事。最初は、「栄屋」の屋号であったが、「おきなわ屋」と頻繁に呼ばれるので、その屋号に改称した。元々は、鮮魚と法事の仕出し料理店であり、地元客の要望をあれこれと聞いて、品揃えした所、野菜、魚、肉、食品、雑貨、駄菓子や玩具までも置く様になった。昔で言う萬屋(よろずや)、今で言うならば、地元のコンビニエンスストアの感じである。

この店では、手作り惣菜も沢山販売しており、魚・肉・佃煮と豊富である。海産系が多いのは、元・魚屋の名残で、南蛇井は高齢者が多く、濃い目な味を好む土地柄であるらしい。昔ながらの目方売りや一切れ売りをしてくれるので、高齢者のひとり暮らしや少食でもありがたい。大鍋がそのまま置かれ、種類も多いので、ここに来れば、おかずに困らない。


(店内奥の惣菜コーナー、肉系、魚系、佃煮系と、三つもテーブルが置いてある。)

(こちらは、魚系のおかずコーナー。大鍋の煮魚は良く染みていて、美味しそうである。)

(焼き魚や炒め物もある。おかずに困らない位、種類が多い。)

出来たての揚げ物も販売しており、ホルモン揚げと言う名物があるので、注文してみよう。実は、これが目当てで、やって来たのである。

店主にお願いすると、5分程で揚げてくれる。ホルモン揚げと言っても、肉では無く、竹輪を縦に半分に切って、揚げたものである。普通のソースに果物や出汁を加えたオリジナルソースがかかっていて、ほんのり甘酸っぱさのある懐かしい屋台の味になっており、結構いける。昔は、本物の肉のホルモンを使っていたが、生肉の扱いがシビアである事や油分が多いので、何時しか、食感がよく似ている竹輪になり、富岡周辺のご当地B級グルメになっている。なお、高崎周辺では、本物のホルモンを使ったホルモン焼きが名物である。


(ホルモン揚げ。一本税込42円と言う安さ。硬めの安い竹輪を使うのが、ポイントらしい。)

(手作りの揚げ物メニュー表。安い上、色々選べて楽しい。コンビニも顔負けである。)

こちらの手作り青しそ巻きも、看板商品である。味噌に唐辛子等の香辛料を練り合わせ、紫蘇葉で煙草状に巻いた、古くから伝わる南蛇井の冬期保存食である。丁度、地元の常連女性客が来店し、10パックも購入していったので、よく売れているらしい。

青紫蘇の葉は、露地物を採取に行くそうで、スーパーで売っている品種と違う。その為、冬期は採れない。元々、冬の保存食なので、それが真っ当であろう。


(名物の青しそ巻き。10本入り税込325円と、大パックの21本入り税込650円がある。)

(辛口、中辛、甘口があり、中辛でも、結構辛い。ご飯の友や酒の肴によく合う。)

店はのんびりとしており、主人が煙草を嗜みながら、店の話、下仁田や南蛇井の風土や食べ物の話を教えてくれた。南蛇井は冬の季節風は厳しいが、年間を通じて穏やかな気候で、雪も殆ど降らない。地質も固い岩盤で、地震や水害も少なく、とても暮らしやすい土地柄であると言う。しかし、若者の都会に出て行ってしまい、過疎化と高齢化が進んで、困っているらしい。やはり、日本の地方市町村の共通の問題である。

また、上州と言うと、うどん等の小麦食文化が有名であるが、甘楽は水利が良い為に米栽培がメインで、桐生の方が小麦栽培メインになっている。しかし、甘楽も小麦食文化圏であり、うどんの打ち粉を落とさずに鍋に入れ、トロトロ汁に仕上げたうどんが、ご当地名物になっている。昔から、農家の作り置き食として、重宝されてきた。

なお、富岡周辺では、幾つかの郷土粉食料理があるそうで、その代表的なものとしては、

「こしね汁」
蒟蒻、椎茸、葱を入れた、具沢山の汁物。それぞれの名前の頭文字から由来。冬は、豚肉、里芋、うどんを加える事も多い。

「おっきりこみ」
小麦粉で作った手打ちの太麺を、野菜やきのこや山菜と一緒にたっぷりの汁で煮込む。煮込みうどんの一種。

「じりやき」
小麦粉に水と少量の砂糖を加え、ゆるい生地を、垂らして焼いたもの。

「おやき(やきもち)」
小麦粉に味噌やニラ、ふきのとう等を混ぜて捏ね、焼いたもの。

等が、ある。

他に下仁田葱や南牧村の話等、小一時間ほど、楽しいひと時を過ごさせて貰った。お礼を言い、土産に青しそ巻きを購入して、そろそろ駅に戻るとしよう。帰りには、店猫のチョコ嬢も見送ってくれる。子猫を含めて、5匹もいるらしい。


(店猫のチョコ嬢。なかなかのべっぴんさんである。)

店のパワーに圧倒され、心暖かい気分で、駅に戻る。こんな寄り道も、たまには良い。店主夫婦も気さくで、とても面白い店である。南蛇井駅に訪問した際は、ホルモン揚げや青しそ巻きも目当てに、是非、立ち寄りたい。

【南蛇井・おきなわ屋】
年中無休(元旦のみ休み)、朝7時から夜20時まで営業、専用駐車場あり。
ホルモン揚げ等の揚げ物は、平日午後13時から15時まで販売休止、夜は19時まで。
(土日祝や事前予約は、午後も販売可。)、富岡市南蛇井439番地(南蛇井駅近く)。


【参考資料】
「なんじゃいコクヤ・こくや通信/ホルモン揚げ」
(佐藤商店公式HP/地元の米穀・酒販店)
関東農政局公式HP「甘楽の郷土料理」

おきなわ屋の画像は、同年秋の追加取材時に訪問。
カメラ機種が違うので、若干色調が異なる。ご容赦願いたい。

2017年7月18日 FC2ブログから保存・文章修正(濁点抑制)・校正
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