岳南線紀行(11)岳南原田駅と本吉原駅

比奈駅(ひな-)から、日本製紙のコンビナートを再び通り抜けて、隣駅の岳南原田駅に行こう。特製ヘッドマークを正面に掲げた7000形(7003)に乗車する。今度の2月20日と21日には、「吉原まるごとフェスタ2016×B-1グランプリ」が開催されるという。B-1グランプリとは、最近人気を博しているB級グルメコンペである。その告知ヘッドマークになっている。

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比奈1334======1337岳南原田
上り吉原行き 7000形(7003)単行
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コンビナート内を通過し、約3分で岳南原田駅に到着する。昭和26年(1951年)12月の延伸時開業、起点の吉原駅から4.4km地点、所要時間約10分、所在地は富士市原田にあり、海抜5.3mである。丁度、岳南線のほぼ中間地点にあり、この駅で列車交換がされる場合も多い。また、岳南線の架線給電設備(変電所)が吉原方に設置されているのも、路線末端部の架線電圧降下が小さくなる利点からである。

長編成の貨物列車の交換を行う為、非常に長い直線線路がある。構内西端に、一面二線の島式ホーム、構内踏切と木造駅舎がある。小型4柱のきのこ形旅客上屋が設置され、上り側のみ新しい旅客上屋の延長部がある。旅客上屋には、比奈駅と同じ様な国鉄風の吊り下げ式駅名標を設置する。


(岳南原田駅ホーム。上り旅客上屋の延長部は片勾配屋根である。)

(国鉄風吊り下げ式駅名標。)

(ホーム全景。駅舎前に貨物側線が二本残っているが、その先は駐車場になっている。)

ホーム端から吉原方を眺めると、大きく左にカーブしながら側線が纏まり、通行量の多い踏切を通過する。幅広のスロープ下には、もう手入れされていない枯れた庭池が佇んでいる。岳南富士岡駅のものと同じ位の結構大きなものだ。


(吉原方と庭池跡。)

岳南江尾方は、長い構内直線の後、滝川の小さなデッキガーター鉄橋を渡ると、日本製紙のコンビナートの中に入って行く。ここからの風景は、岳南線の紹介記事や鉄道写真として、雑誌等にもよく掲載されている。鉄橋はふたつ並んでおり、北側のレールは撤去されているが、貨物引き込み線の跡らしい。かつては、近隣の中堅製紙メーカーと化学工場にも、専用の引き込み線があったという。


(岳南江尾方。左手の建物は、貨物ヤードを取り壊して造られた葬祭ホール。)

北側の葬儀会社ビルの付近には、かつては、大きなプレハブ建ての貨物ホームと側線二本があり、日本製紙の北側工場から製品の出荷を行っていた。なお、貨物列車はこの駅から吉原方に発車せず、貨車を比奈駅まで引き上げて纏めた。不定期で貨物量が少ない事や、貨物側線は吉原方に分岐器が接続しているので、貨車を側線に押し込む際、吉原方に機関車を連結していた方が勝手が良い理由からである。

吉原寄りにある駅舎に行ってみよう。基本的に、日中は無人駅であり、朝の通勤通学時間帯のみ通勤通学客を捌く為、駅員が詰めている。


(ホームからの駅舎。)

一部残っている貨物側線を渡る構内踏切を通り、駅舎に入ってみる。広さは10畳位ある開放的な造りで、出札口はそのままであるが、鉄道手小荷物窓口は閉鎖されている。基本的な構造や配置は、比奈駅と同じの様である。出札口の反対側の元倉庫と思われる場所には、テナントが入る。


(出札口。)

(待合室と改札口。テナントの飲食スペースとしても、使われている。)

根方街道(ねほう-/現・県道22号線)に面して、北向きに駅舎が建つ。この付近の根方街道は、二車線に拡張されて、交通量も多く、商店も幾つか街道沿いに並んでいる。駅舎西側の貨物ホーム跡は、鉄道貨物廃止後に撤去され、葬儀会社に賃貸されているという。


(駅前からの駅舎。)

この駅には、「早い・安い・旨い」と地元で評判の駅蕎麦店「めん太郎」が、テナントで入っている。昭和44年(1969年)に、吉原駅、吉原本町駅と本吉原駅の三駅に店を構え、大変繁盛していた。しかし、岳南線の利用客の減少に伴い、本吉原駅のみの営業になった。その後、本吉原駅の駅舎取り壊しの為、この岳南原田駅に20年位前に移転したらしい。

鶏ささみ蕎麦が名物で、営業マンや土木関係者で昼時は賑わう。隣の駅待合室も、臨時の食事処になる程である。折角なので、名物の鶏ささみ蕎麦を食してみよう。


(駅蕎麦店のめん太郎。)

カラカラと引き戸を開けると、数席の椅子付きカウンターが並ぶ。注文方法は、かけ蕎麦、もしくは、かけうどんを注文し、好みの具を選ぶトッピング方式である。中年女性店員に、基本のかけ蕎麦300円と鶏ささみ120円を注文。他のお客を見やると、麺の大盛りや豪快に3-4品の具を載せる客が多く、この店のトレンドらしい。


(かけ蕎麦に鶏ささみをトッピング。)

代金は受け取り時に現金で支払う。標準的な駅蕎麦店の茹で麺であるが、めんつゆが濃厚で真っ黒であるのは、あの静岡おでんに通じるのかもしれない。甘さがやや強いつゆに、長さ10cm以上、厚さ2cmもある大きな鶏ささみが美味しい。あまりにも大きいので、麺が少なくなると、鶏ささみが沈んでしまうのが笑える。なお、お願いすれば、鶏ささみを切ってくれるとの事。

夜18時頃まで開店しているそうなので、岳南線の旅の昼食や小腹の足しに良いだろう。但し、鶏ささみは人気があるので、昼過ぎに売り切れる場合があるらしい。多少混雑はするが、昼までに来店した方が良さそうである。

【めん太郎(岳南原田駅)】
日曜日と祝日定休。朝9時から18時まで営業。出来上がり時に現金支払いのみ。
カウンター席式(立喰ではない。混雑時は、駅待合室も利用可)。
駐車場(普通車6台)あり。

ここで、本取材時に訪問できなかった、隣駅の本吉原駅(ほんよしわら-)を紹介したい。岳南原田駅からひとつ吉原方の駅になる。

◆本吉原駅(ほんよしわら-)◆
昭和25年(1950年)4月延伸時開業、起点の吉原駅から3.0km地点、所要時間約7分、所在地は富士市今泉、海抜4.0m。吉原本町駅から岳南原田駅間にある。開業時は、今の岳南吉原駅が鈴川駅と呼ばれていた為、この駅が吉原駅の駅名であった。昭和31年(1956年)4月に、鈴川駅の改称と共に、現在の本吉原駅に改称された。

島式ホーム一面二線の列車交換可能駅で、駅舎は老朽化のために取り壊されている。貨物ホームと側線も撤去され、跡地は書店などの商業施設が建つ。この駅も、貨物列車交換の為、構内の直線がとても長い。駅前には、親会社の岳南鉄道本社と岳南電車が入る社屋がある。なお、ホーム南側の大プラントと建物は、大王製紙グループの大日製紙の製紙工場である。


(吉原方からの本吉原駅ホーム全景。)

(駅出入口と岳南鉄道本社。)

(岳南江尾方。古い大日製紙工場の壁と長い構内直線が続く。)

(つづく)


本吉原駅は追加取材。

2017年7月13日 文章修正・校正
2025年1月9日 文章修正・加筆・校正

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