国道交差点角の水野薬局【十字マーカー】の並びには、純米吟醸酒「女城主」や「幻の城」で知られる造り酒屋の岩村醸造【酒マーカー】がある。今では、こちらの方が全国的に有名で、好きな人も多いであろう。日本酒の良い香りが、ほのかに漂い、店内を覗くと、呑兵衛達で大変な賑わいになっている。
江戸時代中期の天明7年(1787年)創業。元々は、藩御用達の運送業が本業であり、酒造りは副業であったが、明治の廃藩置県以降に本業となった。毎年2月には、お猪口代100円で試飲出来る蔵開きがあり、大勢の観光客で賑わう。また、店内には、大正時代に設置された荷役用トロッコと約100mの軌道が残っている。
岩村醸造公式HP
(岩村醸造。)
(銘柄木札。)
(グーグルマップ・岩村醸造店内ストリートビュー。)
岩村醸造の向かいには、カステラ屋の松浦軒本店【赤色マーカー】があり、大勢の女性観光客が並んでいる。江戸時代、岩村藩お抱えの藩医が長崎に行き、医学の勉強の傍らにカステラの製法を学んで、和菓子屋であったこの店に伝授したと言われている。今では、向かいの岩村醸造の日本酒と並び、岩村の代表的な土産になってる。現在の当主は、七代目になる。
松浦軒本店公式HP
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そろそろ、駅に引き返そう。岩村郵便局の並びにある勝川家【赤色マーカー】は、恵那市の歴史観光施設として、無料公開をしているので、立ち寄ってみよう。江戸時代後期に、材木や年貢米を扱った豪商「松屋」で、幕末には、木村家や浅見家と同様に、藩財政を支えた名家のひとつになっている。
恵那市公式HP・観光ページ「え〜な〜ココ・勝川家」
【江戸城下町の館・勝川家】
入館料無料。火曜日定休及び年末年始休み。
9時30分から16時30分まで開館(12月から2月は、10時から16時まで)。
(勝川家。)
通りから入って直ぐの母屋の座敷は、江戸時代後期の建築である。木造二階建てが二棟あり、土蔵、中庭や後庭を擁する大邸宅になっている。街道の宿場町の様に、通りに面した間口よりも、奥にかなり広い。なお、隣接する浅見家の母屋よりも、古いらしい。
(通りに面した母屋の座敷。)
母屋を通り抜けると、広い中庭に、大きな土蔵が3つ囲む様に並んでいる。一番大きなものは、小さな土蔵を長屋の様に4つ並べた「四戸前土蔵」と呼ばれる大蔵で、米俵3,000俵(1俵は約60kg×3,000=180t)も収納できる。一番奥の蔵には、蕎麦屋のテナントが入っている。当時、町内外には、「松屋山」と呼ばれる勝川家所有の山林が多数あり、そこから伐り出された銘木も貯蔵された。
(中庭入り口横にある土蔵は、江戸時代の土蔵と言われている。)
(最も大きな四戸前土蔵。岩村城の払い下げと言われている。)
大蔵の前から、通りの入口方向を見ると、中庭に面した離れと美しい日本庭園もある。
(中庭に面した離れ。)
離れの中も公開されているので、靴を脱いで、屋内に上がってみよう。岩村の町中では、書院風の離れは珍しく、昭和初期の建築になる。廻り廊下や縁側もあり、懐かしい日本家屋の造りは、とても和む。
この離れには、明治政府の廃城令で取り壊しになった岩村城の用材が、払い下げられ、一部に使われているらしい。この廊下の床板は、城で使われていた用材ではないかと言われている。
(離れの一階廊下。)
座敷にも上がる事ができる。三方が日本庭園に面しており、手入れも良く大変見事である。ちょっと、座って眺めながら、ひと休憩しよう。
(日本庭園。)
急な階段を上がると、二階には、娘の部屋がひと部屋のみある。天井が高く、雨戸も無い、三方がガラスで囲まれたグラッシーな8畳位の部屋になっており、ここから見える蔵が、とても立派である。また、ガラスをよく見ると、わずかに平面が波打つアンテークガラスになっている。
(二階の娘の部屋。)
(近づいてみると、景色が微妙に歪む。)
階段を降りると、一階のお風呂場隣に、昭和の香りが漂う水場がある。他にも、書院、茶室や使用人部屋等多くの部屋があり、当時の暮らし向きを感じる事が出来る。
(昭和風の水場。)
急ぎ足の見学であったが、そろそろ、駅に戻ろう。岩村城址は、あいにく、時間が足りなかった。帰り道、駅に近くに古いバイク屋があり、看板の電話番号も4桁のままで、相当古い感じである。軒下の大きなスバルの看板も、とても重そうである。
(古いバイク屋。)
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【停車駅】
岩村1524==極楽==飯羽間==1534阿木
上り16D列車 恵那行き アケチ10形(12)単行
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徒歩10分程で、岩村駅に到着する。15時を過ぎた所である。岩村の町並みを見学した後は、岩村駅から恵那方三つ先の阿木駅(あぎ-)に行こう。切り欠け階段式の構内踏切を渡って、上り恵那方面2番線ホームに向かう。
恵那行きアケチ10形(12)が到着し、下り明智行と列車交換をする。定刻の15時24分に発車。ガチャリとスプリングポイントを通過し、この岩村ともお別れになる。再び、最後尾からの車窓を眺めながらである。
(岩村駅を発車する。最後尾から、後方を撮影。)
(つづく)
【参考資料】
現地観光案内板・解説板
岩村観光協会公式HP
恵那市公式HP
2017年7月30日 FC2ブログから保存・文章修正・校正
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