屋代線紀行(23)屋代駅 その2

そろそろ、この列車の発車時刻になる。ホームに降りよう。この3500系は斜めから側面見ると、微妙な光の反射具合のコルゲートが美しく、とても雰囲気がある。鉄道ファンからの「マッコウクジラ」の愛称も頷ける。暫くすると、民営鉄道風の「ルルルル」の懐かしい電子音の発車ベルが鳴り、屋代発7時29分発・上り406列車須坂行きが、数人の乗客を乗せて発車して行く。


(発車間際の3500系。車内保温のため、一箇所だけ乗降ドアが開いている。)

(定刻通りに発車して行く。)

上り電車を見送った後、この駅の木造旅客上屋をよく見てみよう。かなりの高さと幅があり、M字の斜め梁が、両側の支柱間を結んでいる特徴的な構造が判る。また、積雪対策の為か、30度位ある急傾斜屋根になっている。


(旅客上屋の梁構造。)

旅客上屋の南寄りには、須坂駅や松代駅にも無かった、電光式駅名標が吊り下がっている。駅名部分が透明であるのは、ホームの照明も兼ねているらしい。現在、夜は点灯しておらず、残念である。


(透明タイプの吊り下げ電光式駅名標。)

この屋代線5番線ホームから駅舎へは、木造跨線橋が架けられており、これも見所になっている。摩耗防止の為、コンクリートを階段の踏み面に流し込んであるが、側壁や渡り廊下は木板のままである。なお、階段側壁は原形で、渡り廊下側壁は灰色のベニア板で補修されている。歩いてみると、厚い木の床のコツコツとした柔らかな踏み心地が心地良く、優しい気持ちになる。


(木造跨線橋階段部。)

(階段上からホームを望む。)

(渡り廊下部。)

階段を上がり、渡り廊下の採光窓から車輌工場を覗いてみると、意外に大きい。工場引込線は3本あり、右手前の引込線が、しなの鉄道側と接続している。工場内に入って、一度折り返しをすると、相互に乗り入れが可能との事。昔、この場所には、石油タンクのヤード(積み込み場)があったという。当時、貨物留置線が4本あり、屋代線と国鉄信越本線(現・しなの鉄道)の接続もされていた。駅舎側の旧4番線ホームは、主に貨物列車の一時留置や発車準備に使われたらしく、タンク車の入れ替えに電車を機関車代わりに使う事もあった。


(跨線橋から、長電テクニカルサービス工場を望む。)

実は、屋代線への連絡部分を、しなの鉄道側の鉄柱製跨線橋と繋ぎ合わせてある。しなの鉄道側の内部も補修されているが、レールをトラスに組んで梁に使っており、基本構造は木造なので、国鉄時代に建て替えられたのであろう。


(しなの鉄道側跨線橋との接続部。幅がやや狭くなる。)

(2・3番線ホームから見た、元・国鉄のしなの鉄道側の跨線橋部分。)

しなの鉄道2・3番線ホームに降り、屋代線ホームを眺めてみよう。先程、7時56分着の下り407列車が到着しており、16分後に折り返し発車する。屋根の傾斜が急で、大棟部の高い旅客上屋であるのが、良く判る。コンクリート架線柱の設置の為、屋根のトタンが一部交換されているのが、惜しい。

なお、閉鎖されている旧4番線(手前側)は、客車ホームのままで、擁壁も開業当時のものである。現在は、検修線1番の線路になっており、そのまま車輌工場に引き込まれている。平成24年(2012年)3月の「ありがとう さようなら 屋代線記念特別企画」イベントで、この検修線1番線に、元・小田急ロマンスカーの長野電鉄1000系「ゆけむり」が入線し、隣の中線にしなの鉄道の元・国鉄169系電車湘南色が並び、共演撮影会が開かれたと言う。
レイルファンJP公式HP「屋代駅で、169系湘南色&長野電鉄1000系”ゆけむり”撮影会」


(しなの鉄道3番線ホームから、屋代線ホームを望む。)

(待合室。)

(松本寄りから。)

しなの鉄道2・3番線の南側に移動し、屋代線の木造跨線橋を観察してみよう。床下には、架線を支持する碍子と架線防護板も付けられている(※)。古い木造跨線橋に架線が取り付けられているのは、全国的にあまり例が無いと思う。また、階段接続部の下回りも複雑な構造で、木造トラスの力強さが印象的になっている。なお、この木造跨線橋の建築年は不明であるが、屋代線開業時に設置されたと考えられる。


(屋代線の木造跨線橋外観。)

(木造跨線橋廊下床下。)

(木造トラス支柱部。)

(つづく)


(※)
蒸気機関車時代、跨線橋床下の線路真上には、蒸気機関車の煙を避ける除煙板が付いていた。電化により、取り外される場合が多く、今は殆ど見受けらない。

2019年10月2日 ブログから転載・文章修正・校正。

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