わ鐵線紀行(9)神戸駅 その3

神戸駅(ごうど-)の上り2番線ホームにある列車レストラン清流では、定食や麺類等の他、駅弁の製造販売をしている。トロッコ列車の車内で販売され、観光シーズン繁忙日の駅ホームでは、昔ながらの駅弁立ち売りも行われている。
わたらせ渓谷鐡道公式HP・列車レストラン清流

レストランの名物料理は、地元特産の舞茸をたっぷり使った「舞茸ごはん定食(1,200円)」と「舞茸天ぷらそば(各800円/うどんに変更可)」であるが、今回は、駅弁を食べてみよう。二種類あり、昔からの定番である「トロッコ弁当(予約推奨・900円)」と、新たに発売された「やまと豚弁当(予約推奨・1,000円)」がある。新しい方の「やまと豚弁当」を前日に予約しておいた。


(列車レストラン清流の駅名標風店看板。)

中央部のプレハブの引き戸から店内に入る。通常は、出入口の左横にある自動券売機の食券を購入し、注文をする。今回は、駅弁予約である事を伝え、用意して貰う。

客席である間藤方車両内で食べよう。シートも当時のままになっており、状態も良い。ゆっくり食事ができる様、向かい合わせの席に大きい木のテーブルが置かれている。車載エアコンは使われておらず、吊り下げ式エアコンが、強烈なオレンジ色のデッキ扉の上にある。


(間藤方の東武1720系車内。桐生方の車両は、団体予約席として使われている。)

早速、「やまと豚弁当」を食べてみよう。少し小振りな長方形の容器に、レトロ感を出した掛け紙が付いている。掛け紙には、「わ鐵」のロゴと、わたらせ渓谷鐡道の看板観光列車である「トロッコわたらせ渓谷号」の写真があり、裏面に沿線の観光案内が載っている。


(やまと豚弁当。)

掛け紙の色も、わたらせ渓谷鐡道のイメージカラーである銅色(あかがねいろ)になっており、地紋には、スポーク動輪のシャドーイラストがあしらわれ、鉄道ファンの心を揺さぶる。なお、わたらせ渓谷鐡道では、「わ鐵」の「わ」を「輪・和・話・環」の4つの「わ」とし、

「輪」→連携。沿線地域の連携やネットワーク、チームワーク。
「和」→みんなが平和で仲良く、和やかな気持ち。
「話」→常に話題性を発信。
「環」→鉄道と環境、地域を大切にする心。

のテーマを持つと考えており、第三セクター鉄道として、具体的に策定しているのは珍しい。また、スポーク動輪も、未来へ走り続けるわたらせ渓谷鐡道をイメージしていると言う。


(掛け紙表面。)

(掛け紙裏面。沿線観光案内が印刷されている。)

蓋を開けてみると、香ばしい香りが漂う。白飯の上に肉が乗っている丼タイプになっており、シンプルである。肉はとても柔らかく、さっぱりとした感じのジェレ状甘口醤油味が染み渡り、美味しい。また、甘くてホクホクした薩摩芋と新香も良い。全体的な味付けも、塩辛くなく、ヘルシー指向と言える。某カルチャー系有名テレビ番組でも、紹介された。


(盛り付け。)

群馬県内の牧場で飼育された国産ブランド豚「やまと豚」の肉を使い、きめ細かで柔らかく、ほんのりとした甘味があるのが特徴になっている。また、大間々(おおまま)駅前にある地元醸造メーカー「日本一醤油」岡直三郎商店(おかなおざぶろう-)の醤油を使っている。
岡直三郎商店公式HP

更に、わたらせ渓谷鐡道訪問のお土産も兼ね、特製日本手拭いが付いている。わ鐵のロゴ、「トロッコわたらせ渓谷号」の牽引機のDE10-1537号機、国鉄蒸気機関車C12-187号機、全17駅名とスポーク動輪がプリントされている。

なお、国鉄足尾線の蒸気機関車時代は、このC12形タンク式蒸気機関車が活躍していた。下り間藤行きの重量貨物列車の場合は、この神戸駅で蒸気機関車を増結し、C12形の重連で運行されていた。なお、国鉄足尾線の蒸気機関車全廃は、昭和45年(1970年)10月になる。


(手ぬぐいのトロッコ列車。)

(手ぬぐいのC12形蒸気機関車。)

駅の南側を見てみよう。2番線ホーム南側は、元・3番線になっており、レールも残されている。現在、上り下り方向共に本線と繋がっておらず、自由に散策が出来る。

国鉄時代には、貨物列車の待避に使われていたが、第三セクター化後に合理化の為、廃止になっている。ホームの擁壁は玉石積みになっており、長らく使われていない為、一部は崩れてしまっている。


(ホーム中央部から間藤方を望む。古枕木の車止めがある。)

(間藤方ホーム端から桐生方。)

列車レストランの横には、ブルーシートが被せられたレールバイク(軌道自動自転車)がある。わたらせ渓谷鐡道のイベントでは、この元・3番線の線路を使い、体験運転会も開かれている。


(ブルーシートが被さったレールバイクと古枕木の階段がある。)

レールの刻印を見つけた。目を凝らして見ると、「丸Sマーク 60 A 1925」と読める。大正14年(1925年)製造の八幡製鉄所製・30kg国産レールである。駅開業の大正元年(1912年)より後のものであり、何かしらの理由で交換されたか、その頃に3番線が増設されたのであろう。また、この駅には、桐生方面行きの貨物ホームや貨物側線跡が残っていない。3番線ホームが、桐生行き貨物ホームの代わりに、使われていたかもしれない。


(ポンド表示の国産古レール。)

桐生方には、花木や草に覆われた線路が残り、徐々に自然に帰る長い時の流れを感じさせ、その先の水仙も良い感じである。


(桐生方の3番線。)

(水仙と本線。)

駅の南側は一段低くなっており、自然堤防の向こうに、渡良瀬川が流れている。最近、親水公園として整備されたらしい。石が多い浅い渓谷に、コンクリート護岸が設置され、散策や休憩が取れる様になっている。なお、ここから約1.5km上流に、多目的ダムの草木ダムがある。


(スロープのカーブを降りると、親水公園があり、広さもある。)

(上流方。大きな護岸で守られている。ダム直下の為、水量は少ない。)

神戸駅は、渡良瀬川の河床に近く、行き止まりの様な低い回廊状の場所にある。ダム放流水の水温が冷たく、霧が発生しやすいと言う。
国土地理院電子国土web・わたらせ渓谷鐡道神戸駅南側

少しばかり、川の流れを眺めていると、時々、パーンと鉄砲の様な大きな音がし、周囲の山々に山彦する。地元住民の話によると、狩猟の鉄砲音では無く、椎茸栽培の猿害を防ぐ威嚇音との事。

駅の見学も大体終わった。下り1番線ホームに戻ると、桐生方に大型観光案内板が設置され、駅周辺も見所が多い様である。ちょっと、ミニハイキングに行ってみよう。


(神戸駅周辺の観光案内板。)

(つづく)


レストラン営業開始時間は、午前11時からの為、春の追加取材時。

2017年8月10日 ブログから保存・文章修正・校正
2017年8月10日 文章修正・音声自動読み上げ校正

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