わ鐵線紀行(7)神戸駅 その1

朝の7時42分。桐生駅から約1時間で、神戸駅(ごうど-)に到着する。東中学校(あずま-)の子供達が、運転士に挨拶をしながら元気良く下車した後に、下り1番線ホームに降りる。列車交換は無く、乗車してきた列車は直ぐに発車して行く。


(神戸駅を発車する下り間藤行き列車。)

わたらせ渓谷鐡道は、路線キロ44.1kmの長い盲腸線になっている。今旅では、沿線の下車観光もじっくり楽しみたい為、1日目は沿線南側の桐生から神戸間、2日目は北側の神戸から間藤間のふたつに分ける。今日は、この神戸駅までになり、再び、桐生方に引き返す事にする。

神戸は、渡良瀬川中流域の川谷にある。北側の山麓がテーブル状になっている場所に家々が集まり、小学校や中学校も置かれている。そのテーブル状の下の低い河岸に駅がある。また、上流1.5kmに草木ダムがあり、ダム直下の町になっている。


(国土地理院国土電子Web・神戸駅周辺。)

駅の開業は、足尾鐡道開通時の大正元年(1912年)9月、北東南西に配された相対式ホーム二面二線の列車交換可能駅になっており、間藤方に保線車両の引込線が1本ある。国鉄時代は、単式ホームと島式ホームの二面三線の配置であった。起点の桐生駅からは26.4km地点、11駅目、所要時間約1時間(大間々からは約40分)、みどり市東町神戸(あずままちごうど)、標高336mにある。

また、わたらせ渓谷鐡道の主要途中駅のひとつになっている。路線のほぼ中間地点にあり、大間々駅(おおまま-)に次ぐ、運行上の重要な駅でもある。また、駅の見所や観光名所も多く、観光ポスターやテレビの旅番組でも、よく紹介されており、沿線で最も有名な駅になっている。

平日のこの時間帯は、観光客や鉄道ファンは誰もいない。空気もとても澄んでおり、清々しい気持ちになる。

先ずは、駅構内北側の下り1番線ホームに面した駅舎を見てみよう。大正元年(1912年)の足尾鐡道開業当時の木造駅舎は、下り1番線ホームと共に、国の登録有形文化財になっている。なお、改札口は撤去され、サイドの鉄製ポールのみが残っている。


(ホーム側からの駅舎本屋と改札口。)

(改札口。)

8畳程の待合室は、補修や改装がされているが、往年の雰囲気が残る。間藤方の窓下に、コの字の小さな木造ベンチが据え付けられている。天井はやや低く、白ペンキで厚塗りされた民家風の竿縁天井(さおぶち-)になっており、四角蓋のストーブ排煙口もある。


(待合室のコの字ベンチ。)

(竿縁天井とストーブ排煙口。)

向かいの駅事務室は、大幅に改装されているが、出札口らしい窓口の一部が残っている。現在、「神戸・山の幸ステーションはなもも」として、観光案内、地元農産物や土産品の即売所に利用されている。


(駅事務室跡の「神戸・山の幸ステーションはなもも」。)

なお、週末や観光シーズンの日中には、社員やスタッフが居るが、基本的に無人駅である。自動券売機も一台設置されており、発券時間外は、乗車時に整理券を取るワンマン乗車方式になる。駅時刻表を見ると、上下列車共に1時間に1本になっており、列車が無い時間帯もある。


(自動券売機。)

(駅時刻表。)

駅前に出てみよう。駅出入口側は、往年の雰囲気を一番残している。間藤方に駅舎本屋、桐生方に小屋が並んで建てられている。どちらも、本瓦葺きではなく、コンクリート瓦葺きの木造切妻平屋建てになっている。


(駅出入口周辺。)

(駅舎本屋全景。)

本屋前には、東町(あずままち)のアルファベットAをかたどった記念碑がある。平成6年(1994年)8月23日に、皇太子殿下と妃殿下が、わたらせ渓谷鐡道に乗車し、この駅に訪問した記念に建立されたものである。なお、松の木もあったが、文化財の駅舎を保護する為に伐採された。


(皇太子殿下妃殿下わたらせ渓谷鐵道乗車記念碑。)

このブリキ製駅名標の掲げ方も、国鉄時代を思い起こさせ、よく見ると、神戸の「戸」が、「土」に上書きされている。相老駅(あいおい-)と同様に、東海道本線神戸駅(こうべ-)と錯誤を防ぐ為、漢字を置き換えられた。第三セクター転換時に、相老駅は変更されなかったが、この駅は本来の「神戸」に戻されている。


(ブリキの駅名標。)

駅舎本屋の桐生方並びには、乗務員の休憩所があり、国の登録有形文化財に指定されている。現在、夜間滞泊は行われていないが、臨時列車運行時や週末等のイベントスタッフの控室に使われている。


(乗務員休憩所。2012年春、社員専用駐車場の看板が外され、外壁が補修された。)

駅前は大変広く、大型観光バスもUターン可能になっており、無料市営駐車場もある。向かいには、古い昭和風の旅館・食堂兼たばこ販売所があるが、廃業しているらしい。また、急な崖が聳えており、渡良瀬川沿いの低い場所に駅がある。


(駅前には、駅前旅館みどりがある。)

(東村時代のたばこ税納税啓蒙看板。イラストも味が出ている。)

暫く見学をしていると、富弘美術館方面に連絡している路線ミニバスがやって来た。今度は、ホームを見てみよう。


(赤城観光バスと神戸駅。)

◆国登録有形文化財リスト◆
「わたらせ渓谷鐡道神戸駅本屋および下り線プラットホーム」

所在地 群馬県みどり市東町神戸886-1 他
登録日 平成21年(2009年)11月2日
登録番号 10-0282
年代 大正元年(1912年)、大正12年(1923年)増設、
昭和5年(1930年)と昭和30年(1955年)頃改修。
構造形式 [本屋]木造平屋建、瓦葺一部鉄板葺、建築面積81㎡。
渡上屋及び梯子上屋付、[プラットホーム]石造、延長134m。
特記 桁行13m・梁間3.7mの木造平屋建、東西棟の切妻造セメント瓦葺。
ポイント切替装置を置く梃子上屋を西方に付属、
南に間知石練積のプラットホームを配する。
当初の規格駅舎が基本的に残り、時代の雰囲気を伝える。

(文化庁公式ページの国指定文化財等データベースを参照・編集。)

「わたらせ渓谷鐡道神戸駅休憩所」

所在地 群馬県みどり市東町神戸886-1
登録日 平成21年(2009年)11月2日
登録番号 10-0283
年代 昭和3年(1928年)
構造形式 木造平屋建、瓦葺、建築面積17㎡。
特記 梃子上屋の北、本屋の西方に続く木造平屋建。
桁行4.6m・梁間3.6m、東西棟の切妻造セメント瓦葺。
竪板壁とし、本屋側に出入口、西・北面に引違い窓を開ける。
内部には六畳の休憩室などを設ける。
職員の休憩等の為に、本屋と一体的に使用される施設。

(文化庁公式ページの国指定文化財等データベースを参照・編集。)


2017年8月10日 ブログから保存・文章修正・校正
2017年8月10日 文章修正・音声自動読み上げ校正

© 2017 hmd all rights reserved.
文章や画像の転載・複製・引用・リンク・二次利用(リライトを含む)や商業利用等は固くお断り致します。