改札口を通って、駅舎内に入ってみよう。先程の改札掛の中年女性駅員氏に、撮影見学のお礼を言おう。改札口は木製ではなく、銀色の金属製ラッチに交換されている。待合室の広さは30畳程ある。白壁に黒の角材が格子状に走り、天井板の無い吹き抜けの船底天井は、屋根の傾斜がそのまま見られる。壁には、観光案内用の大きなタペストリー、登録有形文化財の案内パネルやコインロッカーも、設置されている。通勤通学客が主な利用者であるが、週末には、大勢のハイキング客で賑わうという。
(改札口と待合室。ドラえもんの様な顔の謎の人形看板が気になる。)
(国登録有形文化財の案内解説パネル。右下の写真が、認定プレート。)
(大型タペストリー。国鉄二俣線時代の同線での主力蒸気機関車・C58形蒸気機関車の勇姿の大きな写真が飾られている。)
改札口横に飛び出した出札口の構造は、他の天浜線掛川方(二俣東線)の駅と同じである。以前の待合室内は、原形を留めていなかったが、有形文化財に指定された折、駅舎外観と共に復原改装された。また、自動券売機も一台設置されているが、有人の出札口では、硬券切符も数種類扱っている。
(出札口周辺。手前の鉄道手小荷物窓口跡は、観光案内所兼天浜線グッズ販売所になっている。)
(改札口からのホームを眺める。※前年4月に撮影。)
(駅出入口。手造りの無垢板の駅名標が掲げられている。右下に建物財産標がある。)
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駅前に出てみよう。広い歩道と大きなロータリーがあり、地方ローカル線でも規模が大きく、中核駅らしい雰囲気である。西側から、待合室、駅事務室と並んでおり、入口横にラーメン屋「ホームラン軒」がテントで入っている。
勿論、開業時から使われており、平屋建て、桁行20mもある大きな総瓦葺の木造駅舎は、国登録有形文化財になっている。同時に開業した遠江一宮駅の駅舎に良く似ており、縦の下見板(外壁)が特徴である。建物基礎部は煉瓦積みであるという。なお、昭和後期に改装され、テナントが入店している為、窓等は交換されている。
(駅舎正面を望む。タクシー乗り場があり、磐田方面の遠鉄バスも発着している。)
(斜めから望む。)
駅舎本屋東側の寄棟部には、天竜浜名湖鉄道の本社が入っている。こちらの屋根には、段差と車寄せがある。
(駅舎東端の天竜浜名湖鉄道本社。)
◆国登録有形文化財リスト「天竜浜名湖鉄道天竜二俣駅本屋」◆
所在地 | 静岡県浜松市天竜区二俣町阿蔵字札木114-2 |
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登録日 | 平成23年(2011年)1月26日 |
登録番号 | 22-0162 |
年代 | 昭和15年(1940年)1月、 昭和41年(1966年)〜平成元年(1989年)改修 |
構造形式 | 木造平屋建、瓦葺、建築面積460㎡ |
特記 | 桁行20m、梁間13m、木造平屋建、東西棟の切妻造桟瓦葺で、 正背面を吹き放つ。 西側を待合室、東側を事務室とする。外壁は竪板張で、煉瓦積基礎。 吹放ちの深い軒が単調な外観に陰影を与える。 |
※文化庁公式HPから抜粋、編集。
西側の公衆トイレ前には、腕木式信号機が静態保存されている。左の主本線用出発信号機は、レンズは赤と青、紅白の腕木までの高さは約5.8m。右の遠方信号機は、レンズは黄と青、警戒色の腕木までの高さは約7.0mになる。間近で見ると、非常に高く、腕木もかなり大きく見える。
(静態保存されている腕木式信号機。説明解説板もないが、国鉄二俣線時代に使われていたものと思われる。)
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また、駅前ロータリー向こうの県道際に、機関車公園と呼ばれる小さな公園があり、国鉄C58形蒸気機関車が静態保存されている。旧国鉄二俣線で、最後まで活躍した遠江二俣機関区所属の389号機であるが、塗装の剥離、悪戯や部品の破損・盗難も見られ、大変残念である。なお、前後やキャブ左右の赤ナンバープレートや製造銘板は、幸いにも、全て付いている。
昭和21年(1946年)7月24日製造、汽車會社(現・川崎重工業)製、製造番号はNo.2525になり、C58戦後形の船底テンダー仕様である。
(鉄道公園のC58形389号機。駅前の県道に平行し、置かれている。)
(キャブ右側の赤ナンバープレートと汽車會社の製造銘板。)
北海道函館本線の稲穂機関区に初配置され、その後、北海道内の機関区を幾つか転属。そして、本州に渡り、高山本線の高山機関区で長らく活躍した。同線のSLさよなら列車を牽引した後、昭和44年(1969年)10月に遠江二俣機関区に転入している。国鉄二俣線の国鉄ディーゼル機関車DE10形導入による動力近代化(無煙化)の為、昭和46年(1971年)3月31日に廃車されている。廃止時の走行キロは、15万5,487kmであった。
なお、遠江二俣機関区に最後まで残っていた蒸気機関車は、C58形のみの合計8両であった。無煙化後は、6両が南九州や東北等に転出、この389号機とさよなら列車を牽引した200号機の2両が廃車になっている。地元小中学生の教材として、当時の天竜市に貸与され、市町村合併後は浜松市が管理しているという。
(機関車前部。前照灯と煙室扉ハンドルが破損・盗難されている。)
(機関車後部。傷みが激しいが、船底型の形が良く判る。)
(つづく)
2020年6月9日 ブログから転載・文章修正・校正。
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