明知線紀行(2)恵那駅

中津川から乗車した列車に接続する明知鉄道の列車が、発車してしまっている為、約1時間待ちになる。その間、恵那駅を見学してみよう。

先に、明知鉄道の簡単な歴史について、触れておきたい。国の鉄道敷設計画により建設された簡易線であり、昭和8年(1933年)に、この恵那から阿木(あぎ)まで開通し、翌年、明智(あけち)まで延伸開通した。恵那のある木曽谷から、南の山岳地帯の盆地の明智を経由し、遥か太平洋側に抜ける壮大な鉄道計画であったが、採算や技術的に難しく、明智までの盲腸線になっている。国鉄時代は、小型軽量なC12形タンク式蒸気機関車、無煙化後は、勾配線用気動車の国鉄キハ52形が活躍していた。

昭和末期になると、典型的な国鉄赤字ローカル線であった為、国鉄再建法による廃止路線に選ばれてしまう。そして、地元の支援により、国鉄民営化の2年前に国鉄明知線から第三セクター転換した。

また、路線キロ25kmしかないにかかわらず、ふたつのピークと急勾配・急カーブが連続し、平地を走る区間が大変少ない事から、国内でも有数の山線になっている。線内には、日本で1位と2位の急勾配駅がある。

◆路線データ◆
営業キロ25.1km、軌間1,067mm、全線単線、全線非電化、駅数11駅、
特殊自動閉塞(軌道回路検知式)。

◆略史◆
昭和8年(1933年) 国鉄明知線として、大井(現・恵那)駅から阿木駅まで開通。
昭和9年(1934年) 阿木駅から終点明智駅まで開通。
昭和38年(1963年) 大井駅を恵那駅に改称。
昭和48年(1973年) 旅客列車無煙化(国鉄キハ52形導入)。
昭和56年(1981年) 鉄道貨物の取り扱いを全廃。
昭和60年(1985年) 明知鉄道設立・開業。
平成16年(2004年) 腕木式信号機・タブレット・スタフ閉塞方式の全廃。

明知鉄道改札口の上の駅時刻表を見ると、全て終点の明智行きの平日13往復、休日12往復で、大凡1時間に1本の運行であり、ローカル線の標準的な運転頻度になっている。また、小さな連絡改札口もあり、JR名古屋方面行き上り1番線ホームと直結している。


(改札口上の駅時刻表。)

(JRとの連絡改札口。)

明知鉄道のホームは、3両程度の長さの行き止まりの頭端式一線になっている。第三セクター転換後の増設ホームと思われ、旅客上屋は遊園地の様な可愛いブルーテントである。国鉄時代は、向かいのフェンスのある名古屋方面ホームを使っていた。線路終端には、国鉄時代のものと思われる電光式車止め標識が残っている。


(明知鉄道恵那駅ホーム全景。)

(車止め標識。電光式の為、ランプ扉がある。)

(改札口寄りからの明智方。)

ホームには、駅名標や広告看板に混じって、観光案内看板も掲げられている。時間があったら、ここにも寄ってみよう。事前知識は持たずに、駅員氏に聞いたり、観光案内所や駅に置いてある観光パンフレットで調べたりして、思いがけない発見があると、宝探しみたいで楽しい。この明知線は小さなローカル線であるが、観光名所も多い様で、期待できそうである。


(国鉄風の駅名標。微妙に国鉄と異なるので、交換されたらしい。)

(城下町岩村の観光案内板。)

(終点明智にある日本大正村の観光案内板。)

ホームから、北東方向を眺めると、雪を頂いた高い山が見える。標高3,067mの木曽の霊峰・御嶽山(おんたけさん)である。4つの峰をもつ大活火山は、地元木曽のシンボルでもあり、独自の山岳信仰がある山になっている。ここから見ると、富士山にもよく似ており、木曽や尾張地方の郷土富士としても親しまれている。


(御嶽山の雪峰。火山としては、富士山の次に高い。ズームで撮影。)

まだ、時間があるので、JRのホームも少し見てみよう。一部の旅客上屋の柱に古レールを使っており、国鉄時代の名残が見られる。跨線橋の基本構造は鉄骨であるが、側面と窓枠に無垢材を使っており、地元の木曽檜かもしれない。また、1番線の跨線橋付近名古屋寄りには、人の背丈程ある341kmポストがあり、その巨大さに驚く。


(JR上り1番線名古屋方面ホーム中程から、塩尻方を望む。)

(古レール柱と木造部分がある構内跨線橋。)

塩尻方は駅を出ると、直角に曲がる様な大きな左急カーブがある。暫く見ていると、名古屋行き313系8000番台セントラルライナーが、急カーブを抜けてやって来る。セントラルライナーは、名古屋から中津川間に運行されている座席指定制の快速列車で、乗車券の他に乗車整理券(310円)が必要である(※)。なお、快速であるが、運転速度は特急並みになっている。


(塩尻方カーブ。)

(専用の313系8000番台3両編成単位で運行している。)

今度は、下り長野行きの383系特急「ワイドビューしなの」が、かなりの傾斜角度で高速通過する。この急カーブでは、この特急電車は時速100km位で通過するが、カーブに合わせて車体が傾斜する制御式振り子式車両のなせる技で、普通の車両はこの速度で曲がれない。なお、中央西線の最高時速は130km(特急しなの号)と、山峡の路線としては、非常に高規格な線路になっている。


(ワイドビューしなのが、急カーブを高速通過する。)

明知鉄道のホームにも、人が増えてきて、まもなく列車が到着する様である。下り長野行き特急「ワイドビューしなの」を見届けると、直ぐに、明知鉄道の列車がやって来た。勿論、ローカル線お約束の単行列車である。


(明知鉄道のディーゼル列車が到着する。)

(つづく)


(※)セントラルライナーは、2013年3月に廃止されている。

2017年7月29日 FC2ブログから保存・文章修正・校正
2017年7月29日 音声自動読み上げ校正

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