樽見線紀行(9)谷汲口駅

樽見駅から、折り返しの上り16列車・大垣行きに乗車し、谷汲山華厳寺(たにぐみさんけごんじ)の玄関駅である谷汲口駅(たにぐみぐち-)まで、行ってみよう。

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樽見1028=======1050谷汲口
上り16列車・普通大垣行(ハイモ295-516・単行)
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定刻の10時28分に樽見駅を発車。自分を入れて、3人の乗車である。今度は、長い下り勾配を軽快に下って行く。復路は、写真撮影はあまりせずに、車窓を観る事に専念しよう。なお、途中駅で下車する乗客は居らず、高尾駅で1人、鍋原駅(なべら-)で2人、神海駅(こうみ-)で2人が乗車して、合計8人になる。この区間の日中の時間帯は、上り列車の方が利用客が多い様である。

約20分で、谷汲口駅に到着。運転士に挨拶をして、途中下車となる。樽見から乗車した上り大垣行き列車は、汽笛を鳴らして、直ぐに発車して行く。

この谷汲口駅は、昭和31年(1956年)3月に、大垣駅からこの谷汲口駅までの初開通時の駅で、2年後の美濃神海駅(現・神海駅)への延伸開通時までは、国鉄樽見線の終点であった。起点の大垣駅から11駅目、21.6km地点、所要時間約40分、所在地は揖斐郡揖斐川町谷汲長瀬、標高66mの終日無人駅になっている。


(上り大垣行き列車が発車。)

(国鉄風の駅名標。交換されているらしい。)

この周辺は、根尾川と支流の菅瀬川(すがせがわ)が合流する平坦地で、比較的広い川谷になっていて、山側に家々が集まり、川沿いに水田が広がっている。駅所在地の字(あざな)と駅名が異なるが、西に約3kmはなれた古刹谷汲山華厳寺(けごんじ)と旧村名の谷汲村からの由来になっている。また、構内には、桜が沢山植えられており、樽見線一の桜名所駅として知られている。


(国土地理院国土電子Web・谷汲口付近。)

ホームは緩やかなカーブにある。樽見方に2両程度が停まれる盛り土の旧ホームと、大垣方に新設された3両程度が停まれるコンクリートパネルホームがあり、合わせて4-5両編成が停車出来る長いホームになっている。かつて、通勤通学や花見シーズンに運行された客車列車対応する為、延伸された。

昔は、島式一面二線の列車交換駅として使われていたらしく、側線の跡も残っている。現在、使われていないレールは完全に撤去されており、川側が単式ホームとして使われている。大垣方から見ると、左側は線路跡で、右に貨物側線があったのであろう。


(大垣寄りからホーム全景。)

樽見方の旧ホーム部分は、南半分がアスファルトで舗装され、北半分は砂利のままである。昔のホームの感じが残っており、アスファルトと縁石の隙間から小さな花が咲いている。なお、左側の線路跡は埋め立てられ、ホームと線路を挟む様に桜並木が並ぶ。


(樽見方の旧ホーム側。昔ながらの盛り土である。)

(樽見方と末端部。桜が沢山植えられている。開花シーズンは見事である。)

(縁石の隙間から、小花が力強く咲いていた。)

旧ホームと新ホームの境目付近から、大垣方を見ると、カーブの先に第一根尾川橋梁があり、トラス橋の上端の一部が見える。駅の南側は明るく開けており、横幅がとても広い。


(大垣方と新ホーム側。)

駅舎は、旧ホームと新ホームの境目付近にあり、近年建て替えられた様子である。駅事務室や窓の無い、簡素な開放式待合室のみの長屋門構造になっている。また、駅前には、大きなロータリー、運動公園や公衆トイレがあるが、商店は無く、人家も数軒のみの静かな山里の駅になっている。


(ホーム側からの駅待合所。)

駅前から西3㎞にある古刹の華厳寺(けごんじ)まで、路線バスが運行されており、地理的に名鉄バスと思ったが、近鉄バスである(※)。平日は8往復、土日祝日は5往復半あり、下り列車の到着に合わせて発車している。


(谷汲山行きの近鉄バス。)

樽見方の運動公園の並びには、樽見鉄道で使われていた旧型客車のオハフ502が、静態保存されている。保存状態はかなり悪いが、デッキが開いており、中の様子を覗くと、両端二箇所のクロスシート座席を取り払い、石油ストーブがふたつ設置されている(少し気分が悪くなったので、外観と内部の撮影は取り止めた。ご了承願いたい)。


(オハフ502。ウィキペディア公開ファイル、撮影者の共有許諾画像。撮影者;Kone )

元は、国鉄オハ33系のオハ35-1042で、車掌室取り付け改造後は、オハフ33-1527の車番になっている。昭和22年(1947年)の日立製作所製造、戦後形折妻屋根、シル・ヘッダー付き車両であり、国鉄時代は、青15号塗装、TR34形台車、後に車掌室を取り付け改造し、国鉄末期には、紀勢本線の和歌山市駅から新宮駅間で運用していた。昭和59年(1984年)の樽見鉄道発足時に、当時の朝夕の通勤通学ラッシュに対応する為、購入された旧型客車4両のうちの1両で、平成2年(1990年)に廃車されている。入線時は、青いハイモ295-516の様に青地に赤白帯塗装になったが、後に、国鉄三等級制時代のぶどう色(茶色)と窓下赤帯白線三本(三等席表示)の現塗装に塗り替えられた。

【樽見鉄道オハフ502 主要諸元】
元・国鉄オハ35-1042、昭和22年(1947年)製造、全長20.0m、全幅2.9m、全高4.0m、
自重31.8t、定員68名。平成2年(1990年)老朽化の為に廃車。

暫くすると、11時18分発の下り15列車・樽見行きが、トラス鉄橋を渡る音を甲高く響かせて、駅に到着する。本巣駅の出発時に列車交換をした元・三木鉄道ハイモ295-617の折り返し列車である。下車客は居らず、直ぐに発車。根尾谷の森の中に走って行った。


(下り樽見行き列車ハイモ295-617がやって来る。)

(つづく)


2017年7月28日 FC2ブログから保存・文章修正・校正
2017年7月28日 音声自動読み上げ校正

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