天浜線紀行(4)原谷駅

次は、三つ駅先の原谷(はらのや)駅に向かおう。

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【停車駅】
桜木0701==いこいの広場==細谷==0711原谷
下り601列車・遠州森行き(TH2102・単行)
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下り601列車の遠州森行き・単行気動車TH2102に乗車し、忘れずに整理券を取っておく。1日フリーきっぷなので不要であるが、先程のスタンプラリー用になる。上下列車はお互いの汽笛を鳴らし合い、朝日の眩しい桜木駅を同時に発車。大きな右カーブを曲がり、進路を西から北北西に変え、右窓に家々と県道40号線、左窓に区画整理された大水田を見ながら走る。ほぼ平坦な線路を走り、新設駅のいこいの広場駅、昭和31年(1956年)開業の細谷駅に停車。所要時間10分で原谷駅に到着する。


(国鉄風の駅名標。フォントの隅が半端に角ばっており、第三セクター後のものらしい。)

この原谷駅でも、上り208列車・掛川行きと列車交換になる。駅周辺に長閑な田園風景が広がるが、背広姿の通勤客も見られ、数人が上り列車に乗車している。なお、列車交換をこの駅でする事が多く、下り列車は2分から数分間停車する場合が多い。


(原谷駅での列車交換風景。)

原谷駅は、旧国鉄二俣線が最初に開通した区間の駅で、昭和10年(1935年)4月の開業、起点の掛川駅から6駅目、7.9km地点、所要時間は約15分、所在地は掛川市本郷、標高37mの列車交換設備がある終日無人駅になっている。

東西を低山に挟まれた原谷は、原野谷川沿いの南北に伸びる川谷の平坦地にある。駅名の由来も、この原野谷川からであり、川名に「野」が付くが、理由は不明との事。水利も良く、昔から農業が盛んであるが、近年、掛川市のベッドタウンとしても、人口が増えている。また、太平洋戦争末期には、米軍の浜松空襲を避ける為、中島飛行機(現・富士重工業/スバル)の疎開工場があった。

上下列車を見送り、静かな朝の駅に戻った。早速、駅構内を見学してみよう。下車した2番線ホームから眺めると、南北に伸びた長い千鳥式ホームの2面2線、スロープ下の通路と構内踏切がある。また、駅舎南側に貨物側線跡があるが、レールは完全に撤去されている。


(南側・掛川方からの原谷駅全景。)

掛川方の南端は盛り土のままになっている。ホーム横は田畑になっており、向こう側に住宅がある。下り2番線のホームは、近代化工事と開放式の待合所が建てられ、国鉄風の駅名標が掲げられている。


(下り2番線から掛川方を望む。)

(砂利の旧ホーム部分。)

北側のスロープを降りると、15m程の連絡通路があり、構内踏切と接続している。傍らには、二灯式出発信号機や8kmポストもある。なお、信号機の高さは3m近く、黒板下が約2mであるので、かなり低く構えている。


(天竜二俣方の構内踏切と出発信号機。)

(構内踏切と8kmポスト。)

構内踏切を渡り、駅舎側の上り1番線に向かう。天竜二俣方には、かなり低い土台が残っており、かつての客車ホームであったかもしれない。現在は、地元の人達が手入れをしている長花壇になっている。なお、この先には、低山帯を越える小さな峠があり、この駅から急勾配が始まっている。


(天竜二俣方と旧ホーム。)

構内踏切は、1番線ホームに階段で上がらず、改札口に直接接続しており、おそらく、近代化工事された部分であろう。また、1番線ホームよりも、駅舎が低い位置にある為、改札口前にコンクリートの急階段がある。よく見ると、改札横の柱に「おかえり」と手書きの札が掲げられ、何だかホッとする風景である。なお、国鉄二俣線が開通した昭和10年(1935年)当時の古い木造駅舎であり、国登録有形文化財になっている。


(ホーム側からの駅舎。)

改札口を通り、駅舎内に入ってみよう。待合室は10畳程の広さで、出札口が改札口横に飛び出している構造や木製ベンチの位置は、同時開業した桜木駅と同じである。また、テレビドラマ「ウオーターボーイズ2」のロケ時に使われた姫野駅の駅名標が掲げられている。実際には、姫野駅の名称の駅はなく、撮影時の架空設定との事。


(待合室と姫乃駅の駅名標。)

鉄道小荷物窓口は大幅に改装され、駅事務室は集会所として利用されている。平成21年(2009年)11月に無人化された際、「ポッポ屋原谷会」と呼ばれる地元ボランティア会が結成され、天浜線も防犯や設備維持を兼ねて無償で駅舎を貸し出した。地元住民の集会所、趣味の展示会場、イベント会場として利用しているとの事。この活動に触発されて、隣の桜木駅も活動を始めたとという。


(駅舎内のポッポ屋原谷会集会所。)

駅前に出てみよう。時期は少し早いが、鯉のぼりが高く掲げてある。車が何とか切り返し出来る狭い駅前広場があり、商店街は無く、住宅地の中にひっそりとある駅になっている。駅舎は桜木駅よりも若干小さいが、大きな縦型二段窓や白漆喰があるのは、同じである。


(良く整備された駅出入口。)

(駅前からの原谷駅全景。)

◆国登録有形文化財リスト「天竜浜名湖鉄道原谷駅本屋」◆

所在地 静岡県掛川市本郷字西坪1416-2
登録日 平成23年(2011年)1月26日
登録番号 22-0173
年代 昭和10年(1935年)3月
構造形式 原谷駅本屋(木造平屋建、瓦葺一部鉄板葺、建築面積71㎡)
特記 原野谷川橋梁の500m南に位置する。桁行13m、梁間4.5m、木造平屋建。
南北棟の切妻造スレート葺で、ホーム側に庇を張り出す。
北側に待合室、西側に事務室を配し、
待合室には駅務用の窓口や木製の改札口等が残る。
旧国鉄二俣線として最初に開業した駅のひとつ。
駅事務室は、地元の集会所として改装済み。

※文化庁公式HPより抜粋、編集。

改札口には、開業当時の木製ラッチが残っている。なお、駅舎と上り1番線ホームとの間にスペースがあり、左奥には、屋根付きの自転車置き場があるが、このスペースに貨物側線が敷かれていた。


(朝日に照らされる改札口。)

今度の下り列車は、7時31分発になる。駅スタンプを押して、少し待つ事にしよう。

(つづく)


2020年5月5日 ブログから転載・文章修正・校正。

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