大井川鐵道の現役電車と電気機関車を紹介したい。昭和24年(1949年)に直流1,500Vで電化された為、戦後直後から、電車や電気機関車を導入している。戦前の開業当初は、蒸気機関車を運行していた。
◆電車◆
蒸気機関車や旧型客車の人気に隠れているが、往年の名車揃いであり、鉄道ファンのみならず、特に、京阪エリア在住の一般観光客には、懐かしい。過去の電車には、関東の小田急電鉄や西武鉄道の譲渡車両も走ったが、現在は、関西の大手民営鉄道の譲渡車両が活躍している。なお、塗装や形式名は、譲渡元の現役当時のまま運用する方針があり、保存鉄道としての役割も担っている。
なお、全ての車両が、2両編成になっている。ワンマン化改造がされており、料金箱、整理券発行機、電光運賃表や自動放送装置(停車駅案内)が備え付けられ、有人駅以外の乗降方法は、後ろ乗り、前降り精算方式になる。また、大井川鐵道では、汚物処理施設が無い為、車内トイレは閉鎖されている。
形式 | 16000系 | 21000系 | 3000系 | 420系 |
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稼働編成数 | 2両編成×3本 | 2両編成×2本 | 2両編成×1本 | 2両編成×1本 |
譲渡元会社 | 近畿日本鉄道 | 南海電気鉄道 | 京阪電気鉄道 | 近畿日本鉄道 |
製造会社 | 近畿車輛 | 帝国車両 | 川崎重工業 | 日本車両製造 |
製造年 | 昭和40年 | 昭和33年 | 昭和46年 | 昭和28年 |
大鐵入線年 | 平成10年 | 平成6年と 平成9年 |
平成7年 | 平成7年 |
全長 | 20.0m | 17.7m | 18.7m | 19.8m |
全幅 | 2.7m | 2.7m | 2.7m | 2.7m |
高さ | 4.2m | 4.0m | モハ4.2m クハ4.1m |
モハ4.1m クハ3.7m |
自重 | 42.0+34.0t | 37.0+37.0t | 35.0+31.0t | 42.2+28.5t |
特記 | 吉野行特急 客扉折戸式 |
ズームカー 全車動力車 初期車 |
テレビカー 京阪本線特急車両 東京営団地下鉄 FS-502A台車 |
旧近鉄特急色 吊掛駆動 冷房無 休車中 (千頭駅留置) |
【大井川鐵道16000系/元・近畿日本鉄道16000系】
現在の主力電車。大きな窓の明るい車内は、往年の近鉄特急の貫禄がある。走行音も静かになっており、フワフワとした空気バネの乗り心地が特徴。特急らしいリッチなシートは、ローカル民営鉄道の普通列車としては、とても豪華である。
(16000系。)
(車内。)
【大井川鐵道21000系/元・南海電気鉄道21000系】
元・高野山行き特急・急行電車。50‰(パーミル)の急勾配を登坂する為、全車モーター搭載になっている。貴重な初期車となっており、全席転換クロスシート仕様である。重心が低く、剛性のある走行感は、16000系と全く違う乗り心地になっており、かなり硬めである。
(21000系。湘南型デザインである。)
(車内。)
【大井川鐵道3000系(2代目)/元・京阪電気鉄道3000系】
有名なハトのヘッドマークを掲げた京阪特急「テレビカー」である。残念ながら、テレビは取り外されている。京阪電気鉄道と大井川鐵道では、軌間(レールの間隔)が違う為、東京営団地下鉄(現・東京メトロ)の台車に履き替えている。転換式クロスシート備え、主力3車種の内では、最も普通の乗り心地である(※)。
(3000系。)
(車内。)
【大井川鐵道420系/元・近畿日本鉄道6421系→のち420系】
元・近鉄特急車両。近鉄時代に格下げされた為、客用乗降口が三扉に改造され、塗色は16000系以前の旧近鉄特急色になっている。千頭駅構内の側線に留置されており、休車状態である(※)。吊り掛け駆動、冷房が無い車両になっている。
(千頭駅側線に留置されている420系。)
◆電気機関車◆
昭和24年(1949年)に電化が完了したが、最初の2年間は電車が導入されず、電気機関車牽引の客車列車が運行されていた。当時は、終戦直後の物資の乏しい時期であり、現在走行している国鉄旧型客車の様な立派な車両ではなく、鉄道省払い下げの古い車両や、エンジンを降ろして付随車化されたガゾリンカーを牽引していた。電車導入後は、貨物列車の牽引に使われたが、昭和58年(1983年)に貨物は廃止された。SL列車復活後から現在は、後部補助機関車や構内入換機関車として活躍している。
合計6両在籍し、3両が稼働し、3両が整備中になってる。SL列車の後部補助機、ビール列車等のイベント列車牽引の他、時々、電力会社の単発契約の貨物列車や工臨(工事用臨時列車)を牽引している。
形式 | E10形 2両 | E500形 1両 | E31形(二代目) 3両 |
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車番 | E101・E102 | いぶき501 | E32・33・34 |
発注会社 | 大井川鐡道(自社発注) | 大阪窯業セメント | 西武鉄道 |
製造会社 | 三菱 | 日立製作所 | 西武鉄道所沢工場 |
製造年 | 昭和24年 | 昭和31年 | 昭和61年(E32・33) 昭和62年(E34) |
大鐵入線年 | 昭和24年(電化時) | 平成12年 | 平成22年 |
電流圧 | 直流1,500V | 直流1,500V | 直流1,500V |
軸配置・ 駆動方式 |
B-B 吊り掛け | B-B 吊り掛け | B-B 吊り掛け |
全長 | 12.8m | 12.6m | 11.0m |
全幅 | 2.7m | 2.7m | 2.7m |
高さ | 4.1m E102は+0.1m | 3.8m | 4.2m |
自重 | 45.0t | 50.0t | 40.7t |
一時間定格出力 | 600kW | 600kW | 520kW |
一時間定格 引張力 |
7,000kg | 9,000kg | 5,300kg |
デッキ | あり | あり | なし |
運転席窓庇 | E101なし E102あり | あり | なし |
特記 | E101はタイフォン E102はタイフォン +ホイッスル |
箱型二灯前照灯 最高速度65km/h |
整備中 重連総括制御可 国鉄80系電車台車DT-20A |
【E10形/101・102】
大井川鐵道が電化した際、自社発注したオリジナルの40t級電気機関車。現在も主力機として使われている。国鉄の旧型電機機関車EF15(長さ17.0m、自重86.4t、1時間定格出力1,900kW)に似ており、ふた回り小さいが、当時の民営鉄道向け電気機関車としては大きく、牽引力もある。また、日立製のE103号機も導入されたが、廃車状態であり、千頭駅構内に留置展示されている。
(E10形102号機。電気機関車としては珍しい、タイフォンを装備する。)
【ED500形/いぶき501】
元・大阪窯業セメント発注の50t級電気機関車。昭和31年(1956年)の日立製になっており、同社伊吹工場で使われ、「いぶき」号の愛称がある。E10形よりも、やや低く、肉薄感のある屋根と箱型ヘッドライトが特徴である。平成11年(1999年)に、同社専用線の廃止により、大井川鐵道に譲渡された。
なお、いぶき502号機も同時譲渡された。平成12年(2000年)の中部国際空港埋め立て工事の際、三重県の三岐鉄道(さんぎ-)に、501は貸与、502は再譲渡された。埋め立て工事終了後、501は返却されたが、502は三岐鉄道三岐線の西藤原駅に静態保存された(※)。
(後部補機仕業中のED500形いぶき501号機。)
【E31形/32・33・34】
元・西武鉄道の40t級E31形電気機関車(二代目)である。長らく、貨物や工臨列車の牽引をしていたが、西武鉄道の廃車に伴い、平成22年(2010年)9月に大井川鐵道に譲渡された。活躍中の旧型電気機関車のE10形(101・102)やED500形(いぶき501)の後釜と言われているが、まだ、本線運用に入っていない(※)。この電気機関車も、大井川鐵道の保存鉄道の方針に従い、ほぼ、西武鉄道時代の仕様のまま、運用される予定である。
E31形は、オリジナルのE10形と比べると全長が約2m短く、出力も約13%小さくなっている。未確認情報であるが、E33号機は部品取り用らしい。なお、トップナンバーのE31号機は、西武鉄道で保存されている。
(E34、E32、E33号機が順に並ぶ。千頭駅にて。)
E31形の台車は、国鉄80系電車の台車を流用したものである。
(E31形の台車。)
(E31形の連結部。)
(つづく)
(※3000系)2014年に廃車された。
(※420系)解体された模様。
(※いぶき502)2015年に解体された。
(※E31形)2017年に、E34が本線運用可能になった。
2017年7月31日 ブログから保存・文章修正・校正
2017年8月4日 文章修正・音声自動読み上げ校正
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