銚子電鉄紀行(10)ぬれ煎餅、終点外川へ

素晴らしい春の大海原を楽しみ、とても、良い気分である。もう少し、のんびりとしたいが、犬吠駅に戻る事にしよう。灯台の門前には、土産屋と中小の温泉観光ホテルがあるが、東日本大震災の影響の為なのか、閑散な雰囲気で、土産店は閉店している。

上の舗装された道路を歩くと、軽食スタンドの海幸【食事マーカー】がある。壁に描かれた絵は、何とも良い味を出していて、楽しませてくれる。実は、いつも立ち寄って、新鮮な貝焼きを頬張るが、今日は休みで残念である。ここで軽食を買い込んで、大海原を見ながら食べるのも、最高であろう。


(軽食スタンド海幸。)

店向かいのピンク色の派手な建物は、地元水族館の銚子マリンパーク【魚マーカー】である。屋上展望台や食堂があり、王道のイルカショーは勿論の事、海辺なのに何故か恐竜もあって、混沌とした雰囲気が好きな昭和ファンに堪らないとの噂がある。
銚子マリンパー公式HP


(銚子マリンパーク。)

灯台から徒歩10分程で、犬吠駅に戻る。時刻は10時20分前、駅ロビーも照明が付いて、観光客が何人か訪れている。

出札口は、ホテル風の洒落たカウンター風になっており、女性駅長氏が日中の時間に勤務していて、犬吠埼周辺の観光案内もしてくれる。本銚子から銚子行きの開運硬券切符があるので、記念に購入しておこう。なお、銚子行きであるのは、「上り(列車)」と「銚子=調子(行き)」の二重願掛けになっている。


(出札口の様子。)

銚子電鉄の直営売店は、待合ロビーの半分を占める程に大きい。ぬれ煎餅の実演製造も行っているので、香ばしい香りを周囲に漂わせている。有名なぬれ煎餅の他、魚の佃煮、地元の農産加工品や特製アイスクリーム等も販売している。


(直営販売所。)

香ばしい醤油の香りに誘われ、年配の女性店員が慣れた手付きで、焼き上げている。1日フリーきっぷに試食引換券が付いているので、頂く事にしよう。ご好意で、焼きたてを頂いた。鰹だしが良く効いた、やや辛口の醤油味になっている。鉄道事業収入減を補う為、平成7年(1995年)にオリジナル品を開発し、販売している。


(煎餅焼き作業。※作業風景は、撮影承諾済み。)

(出来たてのぬれ煎餅を試食する。)

実演製造は、9時30分頃から正午までと、昼休み後から15時頃までとの事。状況によっては焼かない日もあり、店は夕方17時までの営業になる。銚電支援の為、今追加で食べる1枚入りと土産用にパックも購入しよう。

銚子電鉄のぬれ煎餅は、鉄道部門の年間売り上げの二倍を稼ぎ出し、鉄道存続の源になっている。10年前の資金難の際、車両の法定検査費用が捻出出来なくなる事態になり、このオリジナルぬれ煎餅の販売で窮地を脱したのは、良く知られている。なお、ぬれ煎餅自体は、昭和40年頃から、銚子市内の米菓店の名物になっている。味付けに使われている醤油は、仲ノ町駅至近のヤマサ醤油製オリジナルを使い、銚子駅前の老舗煎餅店から製造方法の伝授を受けたとの事。「この銚子には、鉄道が必要」と言う、地元の大きな支援もあると感じる。

最近は、「銚子電鉄の佃煮」にも、力を入れている。以前は、「犬吠駅の佃煮」の商品名であったが、商品名を一部変更し、こちらも大々的に売り込んでいる。秋刀魚、鰯と鰹の三種類あり、青魚は特有の香りが無く、とてもまろやかな味である。


(銚子電鉄の佃煮コーナー。)

また、この駅舎は二階建てで、有名日本画家の後藤純男美術館が二階に開館していた。しかし、平成16年(2004年)1月に閉館してからは、倉庫や展示場として使われているらしい。

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犬吠957======1000外川
下り外川行き(2000形2002+2502・2両編成)
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さて、終点の外川駅(とかわ-)に向かおう。白い2000形2両編成が、グリーントンネルの長い勾配を上って来る。乗客は2-3人しかおらず、ふかふかで、懐かしい臙脂色のロングシートに腰掛ける。


(グリーントンネルから、列車が出て来る。)

列車は直ぐに発車し、県道踏切を越えると、真っ直ぐの線路を時速30km位でゆっくりと走る。この周辺は畑と住宅が半々位で、旧犬吠駅があった暁鶏館前踏切(ぎょうけいかん-)先には、ホーム跡らしい空き地が線路右脇にある。

三つ目の踏切付近を過ぎると、犬吠駅からの8.3パーミルの登り勾配は水平になり、左側に中学校の校舎が見えると、半径400mの右大カーブを曲がり始める。そして、線路が真っ直ぐに戻り、住宅地に入って行くと、終点の外川駅に到着する。


(終点の外川駅に到着する。)

(銚子寄りからのホーム。)

外川駅は、銚子遊覧鉄道時代には無かった駅なので、銚子鉄道開業時(戦後、銚子電気鉄道に移行)の大正12年(1923年)7月に設置された駅になる。時間限定の有人駅で、銚子から6.4km地点、9駅目、所要時間は19分、銚子市外川町、標高25mになる。なお、銚子遊覧鉄道と銚子鉄道時代の旧・犬吠駅からは、500m延伸した事になる。延伸区間は、開通を望む地元からの土地の寄付があった。

開業当時の古い木造駅舎に、一面一線の単式ホームと機回し線があり、かつては、多客時に増結した小型客車や貨車の付け替えを行っていた。機回し線として使われていない今は、留置線として使われている。なお、国鉄気動車がこの外川まで直通で乗り入れていた頃は、この小さな駅に、最大5両編成の列車が乗り入れる事があった。

ホームには、昔ながらの木造梁組み波形トタン直葺き屋根が、駅舎本屋から庇状に伸び、屋根下に白熱灯が残されていているのも、大きなポイントである。こうして眺めると、まるで昭和30年頃の光景の様で、不思議な気分になってくる。


(旅客上屋とデハ801。)

機回し線には、銚電最後の吊り掛け駆動電車であるデハ801が留置されている。予備車扱いであるが、屋根上に台を乗せて、架線等の保守工事車に使われる事もある。しかし、各部の腐食が進んでいるので、それほど長くは持たないかもしれない(※)。

終端方のホーム南端は、機回し線側にレールが曲がっていて、ホームとの間隔が広くなっている。この長い機回し線には、途中に渡り線もあったらしい。線路の終端部は、引き上げ線で終わっているのが、終わりを一層強調させている。


(終端方。今は、留置線として、車両を押し込む場合がある。)

銚子方のホームの幅は狭く、二両固定編成の2000形導入の際、ホームを若干延長している。かつて、駅舎の北並びには、貨物ホームと本線から逆さト字に配線した貨物側線1本があり、外川港で水揚げされた魚介類や、近くの愛宕山で産する砕石を積み込んでいた。今は、砂利敷きの駐車場になっており、その面影も無くなっている。


(ホーム端から、銚子方を望む。)

(つづく)


(※)現在、引き上げ線側に移動し、車内公開されている模様。

【参考資料】
RM LIBRARY 142「銚子電気鉄道(上)」
(白土貞夫著・ネコパブリッシング刊・2011年)

2017年7月15日 FC2ブログから保存・文章修正(濁点抑制)・校正

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