湊線紀行(12)国営ひたち海浜公園

この湊線こと、ひたちなか海浜鉄道の旅では1泊2日の予定で、起点駅である勝田駅前のビジネスホテルに泊まっている。かなり以前に1度だけ宿泊したことがあり、その時と同じ地元系ホテルである。勝田駅前は日立関連の会社が多く、出張需要が大きいためか、意外に宿泊代金は高い。朝食なし素泊まり5,800円もするが、これでも安い方である。泊まることがメインではなく、鉄道旅は安宿で十分なのであるが。元ツインの部屋をシングルにしており、部屋は広く、快適なので良しとしよう。那珂湊の焼きそばだけでは流石に足りないので、チェックインする前にコンビニエンスストアに立ち寄って購入した、おにぎりと缶チューハイでひとり打ち上げる。ひと風呂に入った後は、直ぐに眠たくなった。

朝の6時前に起床。テレビニュースを見ながら、身支度をする。天気予報では、概ね快晴になり、薄雲が広がるとのこと。朝の気温は14度と肌寒いが、日中の最高気温は23度なので、蒸し暑くなるらしい。

準備が整い、7時にチェックアウトする。駅に行く途中のコンビニでサンドイッチと飲料水を手配し、勝田駅に向かう。コインロッカーに大きな荷物を預けた後、JRの有人改札口から湊線の連絡改札口に降りると、50人近くの人達が待っている。2両編成の折り返し阿字ヶ浦行が到着し、100人程がドッと降りてきた。昨日よりも多く、今日がゴールデンウィークのピーク日になるのであろう。隣の常磐線上りホームでは、朝一番の上り特急ひたち2号品川行も到着している。窓越しに指定席を覗くと、席の半分は埋まっており、まあまあの乗車具合である。家族連れも多く、東京観光に出かける雰囲気の人達も多い。


(折り返しの下り阿字ヶ浦行き列車が到着。元・JR東海キハ11形に特製ヘッドマークを掲げる。)

本日2日目のスケジュールは、昨日の最終訪問駅になった殿山駅から終点の阿字ヶ浦(あじがうら)駅までの区間の駅訪問をしたい。それでも、かなりの時間的余裕があるので、午前中は国営ひたち海浜公園に行き、阿字ヶ浦駅に戻った後、昼食後は阿字ヶ浦から平磯まで海岸歩きをする。鉄道自体は昨日全線完乗しているので、今日は沿線周遊をメインにしてみたい。

先程、連絡改札口の中年男性駅係氏から、ひたち海浜公園入園券付き1日フリー乗車券を購入してある。公園も混雑する時期であるので、事前手配が良かろう。ひたちなか海浜鉄道に入園券の販売手数料が入るはずなので、その配慮もある。フリー切符代と入園券、阿字ヶ浦駅から公園までの無料シャトルバスも往復使えて、大人1,100円と大変お得になっている。


(国営ひたち海浜公園入園券付き1日フリー乗車券。個別に購入した場合、湊線の1日フリー乗車券が900円、正規の入園券が410円、更に駅からバス・タクシー代がかかるので、かなり安い。)

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勝田727======754阿字ヶ浦
下り阿字ヶ浦行き・←キハ11-7+キハ11−5・ワンマン運転

(乗り換え)

阿字ヶ浦駅BS757======806海浜公園海浜口BS
無料シャトルバス(期間限定運行)・国営ひたち海浜公園海浜口行
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先ずは、終点の阿字ヶ浦に向かおう。1両目と2両目の連結付近に立ち席になる。そう長い乗車時間ではないので、大丈夫である。7時27分の定刻に発車。ファーンとタイフォンを鳴らし、カミンズエンジンが唸りを上げ、徐々にスピードに乗っていく。


(観光客が多い車内の様子。)

金山(かなやま)から中根谷に降りると、沢山の農家が田植え作業をしている。昨日の農家のお婆さんの言う通りであった。本社駅の那珂湊で10人程下車するが、この那珂湊駅以外の乗降客は非常に少ない。35人程が終点の阿字ヶ浦まで乗車した。その内の30人がシャトルバスに乗り込み、みな目的は同じである。列車からバスへの接続時間も少なく、駅やバスの撮影ができなかったが、ここに戻ってくるので、その時に見学撮影をしよう。

駅のある高台から急坂を降り、海岸沿いの大きな通りに出る。ここから約3km北にひたち海浜公園があり、3つの公園ゲートのうち、駅に最も近い海浜口ゲートに向かっている。右窓には、「東洋のナポリ」と比喩された白い大砂浜が広がり、開放的な風景が続く。しばらくすると、二車線の片側に自家用車が長く連なっている。朝早い時間であるが、公園駐車場が満車らしく、かなりの待ち時間になっているらしい。もちろん、このシャトルバスは優先になり、車列を横目に入園する。ゴールデンウィークの時期は、湊線とシャトルバスで来るのが、渋滞もなく、効率的であろう。

8時過ぎに海浜口ゲート前に到着。勝田駅から所要時間約40分になる。直ぐに入園しよう。ひたち海浜公園は、約200ヘクタールの海に面した都市公園になっており、四季の花々が咲き誇ることでとても有名になっている。関東エリアのテレビニュースでも、よく紹介されているので、ご存知の人も多いだろう。また、夏は、ロックフェスティバルの会場としても知られている。なお、元々は軍用地で、陸軍水戸飛行場があった。終戦後はアメリカ軍の射爆場になり、昭和53年(1978年)の返還後、大規模公園として整備された。現在は、「花の公園」として市民に親しまれ、ひたちなかを代表する観光地になっている。


(国営ひたち海浜公園海浜口「風のゲート」。3つのゲートがあるが、一番小さいゲートになる。)

普段は、花を愛でる上品な趣味はないが、噂に名高いネモフィラの丘を見たく、今回初訪問になった。海浜口ゲートからやや奥にあるため、案内に従って歩く。園内は非常に広く、人工物は少ないが、遠くに大観覧車が見える。


(約8ヘクタールもある大草原[芝生広場]。ボール遊びも可能で、イベントも開かれている。)

歩いて10分程すると、目の前に大きな丘が見えてきた。噂通りにこれは凄い。真っ青である。450万本のネモフィラが植えられており、毎年4月中旬から5月上旬にかけて見頃になる。丘に登れるので、ぐるっと眺めてみよう。なお、夏から秋にかけては、可愛らしいコキア(和名・ホウキグサ)が埋め尽くす。夏は緑、秋は紅葉をし、赤い丘になるとのこと。


(みはらしの丘。頂上の高さは海抜58mあり、ひたちなか市の最も高い場所になる。)

(ネモフィラ。英名では、「ベイビーブルーアイズ」と呼ばれる、北アメリカ原産の可憐な花である。)

(青空と同じ色であるのも、美しい。)

頂上付近から眺めると、なだらかな丘に広がっており、公園の大きさもよく分かる。頂上から反対側に、常陸那珂湊港(新港)が見える。巨大な工業団地や火力発電所があり、海外への輸出港になっている。また、北関東自動車道の起点になっており、公園内を横切る。この丘の背後は、広大な樹林地帯になっており、昔ながらの海岸森林の雰囲気を残す。なお、全敷地の半分程度しか、整備公開されていないとのこと。巨大な敷地から、かつては、東京ディズニーリゾートの建設候補地になっている。


(頂上付近から見下ろした、みはらしの丘。)

(常陸那珂湊港。建設重機メーカーのコマツや日立建機などの大工場がある。)

みはらしの丘の麓には、約350年前の茅葺き古民家を移築復元しており、家の前に畑も再現している。今の時期は、菜の花畑となっており、ネモフィラの青との対照が美しい。夏にヒマワリやジニア(キク科のヒャクニチソウ)、秋に蕎麦の白い花が咲くとのこと。


(みはらしの里の古民家。自由に出入りができ、休憩所として開放されている。)

(古民家前の菜の花畑。花の盛りは少し過ぎているが、一面に咲いていた。)

チューリップのイベントも開催されているので、西口ゲートの近くに行ってみよう。例年4月中旬から下旬にかけてらしいが、今年は開花が遅かったらしい。人の流れに乗り、10分程度歩く。森林の中なので、とても涼しく、気持ちがいい。そして、たまごの森フラワーガーデンに到着。高い木立の中に、色とりどりのチューリップが咲き乱れている。とてもメルヘンチックで、木陰の明暗に富み、写真撮影も楽しめそうである。


(たまごの森フラワーガーデンへ。)

(237品種、約25万本のチューリップが、お絵描きの様に咲いている。手前は、イエロープリシマと名付けれたフォステリアナ種。)

(鮮やかな原色系のアソートコーナー。赤色と黄色は、ダーウィンハイブリッド種。)

(白いネモフィラとのコンビネーション。)

(少し和風なチューリップ達。花びらの咲き方も、かなりの違いがあるのがわかる。)

(実物大の跳ね上げ橋の模型があり、そこからみると、花の川になっていた。)

近くの西口ゲート前には、大きな噴水付きステージがあり、イベント会場として使われているとのこと。また、空き地や道端には、軽食や飲み物、ビールなどを販売する移動販売車も多数並び、このイベント時期ならば、食事も困らない感じである。


(水のステージ。サイクリングコース専用橋が横切る。向こうの建物が、西口ゲート「風のゲート」。)

(園内の移動販売車。メニューも多彩で、ついつい、立ち寄りたくなる。)

この巨大な自然公園には、自然散策路(沢田湧水ネイチャーハウス)、サイクリングコース、BMXコース(バイシクルモトクロスコース)、パーターゴルフ、ミニ遊園地、バーベキュー広場、陶芸教室、クラブハウス(シービューカフェ)なども整備され、家族連れや子供達も楽しめる。また、ゆっくり過ごすとなると、丸1日掛かるだろう。今回は時間がなく、約2時間の早足の滞在であったが、予想以上に楽しめた。シャトルバスが発着する海浜口ゲートに戻り、阿字ヶ浦駅に戻ろう。


(帰りのシャトルバスに乗車する。茨城交通の路線バスで運行している。)

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海浜口BS947======956阿字ヶ浦駅BS
無料シャトルバス(期間限定運行)・阿字ヶ浦駅行
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【国営ひたち海浜公園】
9時30分から17時まで開園(閉園時間は季節変動あり)、毎週月曜日休園(祝日の場合は直後の平日。花のイベント時は休園なし。年末年始は休園)、有料駐車場あり、大人一般入園料410円(取材時)。※休園日や開花情報など、詳しくは公式サイトを参照。
国営ひたち海浜公園 公式サイト


(YouTube【国営ひたち海浜公園公式チャンネル】国営ひたち海浜公園 紹介動画。※音量注意。再生時間15分40秒。)

(つづく)

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※4月29日から5月7日までの入園者数は、58.3万人と過去最高とのこと。シャトルバスの利用者数は2万2千人。取材当日の3日と翌4日がピークで、4日の1日入園者数は10万人、バスは2,400人で大盛況であった。

【参考資料】
国営ひたち海浜公園来園者用 公式ガイドマップ(同園発行・平成29年3月)
現地観光歴史案内板

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