大鐵井川線紀行(3)奥大井湖上へ

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【停車駅】 #→アプト式区間 〓→主な鉄橋
アプトいちしろ1406####長島ダム=ひらんだ=〓1426奥大井湖上
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トンネルを抜けると、コンクリート橋があり、大井川西岸に渡る。振動も少なく、意外に急坂を感じ無いが、後方を見ると、この急勾配がよく判る。なお、このアプト区間には、三つのトンネル、ロックシェッドとコンクリート橋梁がある。速度は速くなく、自転車並みの速さであり、ここからの絶景を堪能出来る。


(アプト区間上流方向。)

(ロックシェッドを潜ると、編成が良く見えるカーブに差し掛かる。)

(下流方向。聳え立つ山には、所々に山桜が咲いている。)

アプト式電気機関車ED90形は、ディーゼル機関車DD20形1両と客車7両を押し上げる事ができ、重連にすると、最大二編成(ディーゼル機関車2両と客車14両)に対応できる。定格速度は時速14km、五種のブレーキシステムを搭載し、停電時であっても、時速5kmで安全に降坂出来る様になっている。また、この区間では、DD20形のエンジンはアイドリング状態になり、無動力(力行無し)になる。

ロックシェッドを潜り、二つ目のトンネルを抜けると、スクエアなデザインの長島ダムが右手に見えて来る。中部電力の発電用ダムではなく、治水や利水目的の国土交通省直轄多目的ダムである。手前には、しぶき橋と呼ばれる橋が架かり、両岸にある放水口からの放水時には、飛沫が掛かると言う。

なお、平成14年(2002年)竣工、高さ109m、幅308mの大井川最大級の重力式コンクリートダムになっている。コンクリート打ち込みには、10年も掛かった。


(長島ダム。)

新線の付け替え案は、そのまま通過出来るループトンネル案が検討されたが、景観が良く、観光の目玉になる事や建設期間が短い理由から、このアプト式の採用になった。また、姉妹鉄道のブリエンツ・ロートホルン鉄道が、全線アプト式鉄道であり、それも参考になったと言う。大井川鐡道らしい選択と思う。

ダム本体左岸の土手下には、旧線の第18番トンネル「寄倉トンネル」のポータル跡が見える。内部も三分の一程度残っており、行き止まりの遊歩道になっている。また、アプトいちしろ駅側にも、二本の旧トンネルが遊歩道として残っており、徒歩30分程度で、アプトいちしろ駅まで行く事が出来る(但し、照明設備は無し)。

三つ目のトンネルを抜け、急勾配が緩くなってくると、巨大な法面の上にある長島ダム駅が見えてくる。千頭行きの列車が先着している様である。駅開業は、アプト新線切替時の平成2年(1990年)10月、起点の千頭駅から11.4km、7駅目、所要時間約50分、榛原郡(はいばら-)川根本町犬間、海抜485mになり、千頭駅から187m登って来た事になる。なお、アプト式電気機関車の付替えを行う構内係はいるが、駅員は終日無人になっている。


(長島ダム駅と巨大法面。線路下には、県道388号線と観光用駐車場がある。)

長島ダム駅に到着。アプト式電気機関車ED902の切り離しと、列車交換を行う。千頭行きには、「らんまん」の手作りヘッドマークが付いており、展望車両も連結されている。平成13年(2001年)に新造された半室展望合造車スロフ316のベンチは、川側に向けて設置されており、気持ち良さそうである。


(上り千頭行き列車と列車交換になる。)

(開放展望客車のスロフ316は、1両の半分が展望室の半室合造車である。)

押し上げてきたED902を千頭行き列車に付け替え、今度は、ブレーキ役として活躍する。なお、最後尾の制御客車クハ600形は、アプト式電気機関車ED90形も、遠隔制御出来る。


(ED90形が増結される。千頭方には、電気機関車の留置線もある。)

(井川方の制御客車クハ600形。)

この井川行き列車も、4分程遅れて、14時18分に同時発車する。発車して直ぐに第19号トンネルに入り、トンネル内のポイントを通過して、単線にまとまる。このトンネルを出ると、デッキガーター鉄橋をカーブしながら渡り、短いトンネルに再び入る。

トンネルを抜けると、高い場所から、ダム湖の接岨湖(せっそ-)が右窓に見えてくる。コバルト色の雪解け水がキラキラと反射し、とても綺麗である。「ひらんだ駅の下には、旧線の川根唐沢駅がありました。今は、カヌーの競技場になっています」と、車掌氏からアナウンスが入る。


(平田付近の満水のダム湖面。)

ひらんだ駅を発車後、第21号トンネルである長い平田トンネル(ひらんだ-)を抜け、有名な奥大井湖上駅に進む。幅100m程の細長い半島状の地形の前後二本の大鉄橋に挟まれているこの駅は、井川線のハイライトのひとつになっており、タイフォンを一声鳴らし、巨大なアンダートラス鉄橋を渡って行く。

この奥大井レインボーブリッジは、下流側は長さ280m、上流側は195m、高さは70mある。ホームの一部が下流側にかかり、上流側は、歩道も設置されている。ちなみに、レインボーブリッジの名前は某湾のものより、こちらが元祖である。
ウィキペディア公開ファイル・奥大井湖上駅大俯瞰(1.5Mbyte)


(奥大井レインボーブリッジ下流側。)

新線区間の新しい駅であるが、「中部の駅100選」に選ばれ、紅葉の名所になっている。上流側のレインボーブリッジの歩道を通り、接阻峡温泉へのハイキングコース(片道50分)や展望台もあるので、シーズン中の乗降客も多い。また、湖水の少ない時期は、対岸の旧線のトンネル跡や鉄橋跡も見られる。なお、長島ダム駅から5mしか登っておらず、この2.5km区間の平均勾配率は2‰(パーミル)と、ほぼ平坦線となっている。


(奥大井湖上駅に到着。ホームには、記念の鐘がある。)

なお、アプト新線以前の旧線区間は、大井川の川底に沿って線路が敷設され、奥大井湖上駅手前までは、アプト新線よりも南側を走っていた。旧線区間の路線キロは約5.8km、途中停車駅は3駅、トンネルは16番から26番の11本、大加島仮乗降場手前の第二大井川橋梁を使い、大井川の東岸から西岸に渡っていた。なお、アプト新線になってからは、トンネルは8本に減っている。また、湖水の少ない時期は、旧線が現れる事がある。

◆旧線区間の駅◆

川根市代(現・アプトいちしろ駅の南付近)

大加島 仮乗降場。昭和56年(1981年)追加設置。長島ダム下のしぶき橋南側対岸付近。

川根唐沢 ひらんだ駅下の水辺付近。12.1km地点。

犬間 平田トンネル井川方出口の南付近にあり、満水時は水没するらしい。13.1km地点。

川根長嶋(現・接岨峡温泉)

※大加島仮乗降場以外の各駅は、昭和34年(1959年)8月に開業。

(つづく)


2017年7月16日 ブログから保存・文章修正・校正
2017年8月2日 文章修正・音声自動読み上げ校正

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