笠上黒生駅(かさがみくろはえ-)には、開業当時の木造駅舎が残っており、築90年近くになるはずである。この駅と仲ノ町駅、本銚子駅、外川駅(とかわ-)の四駅に、古い木造駅舎が残っているが、観音駅、君ヶ浜駅と犬吠駅は、観光駅舎に建て替えられている。
(上り2番線からの駅舎本屋。)
駅舎は北東側の下りホームに隣接し、切妻屋根と大きなトタン庇が二方に張り出している。国鉄風の波形スレート屋根で、葺き替えられているが、全体的に原型を留めている。外川方に駅出入口、改札口と待合室、銚子方に駅事務室と倉庫があり、ホーム側外壁は、金属トタンの補修やシャッターが増設されている。
(ホーム側駅舎。)
改札口も、木造のまま残っており、開業当時のものであろう。横には、屋根から雨樋を伝ってきた雨水を利用した、防火用水槽も設置されている。しかし、下の方に水抜き穴が開けられているので、今は使っていないらしい。
(木造の改札口。国鉄の古い木造改札口よりも、やや細い木を使っている。)
(コンクリート製の防火用水槽。)
待合室に入ってみよう。八畳位の広さの待合室は、陽当たりの良い南西に面している為か、木造駅舎の独特な湿った感じは無く、明るい印象を受ける。木造のロングベンチが、改札口を見る様に据え付けられている。
右書き表示の出札口があり、鉄道手小荷物の窓口跡もあるが、掲示板で塞がれている。銚子電鉄では、昭和59年(1984年)に、鉄道貨物輸送が廃止になっている。この駅にも、黒板書きの旅客運賃表が掲げられ、時刻表も手書きである。
出札口の下には、オリジナルキャラクターのヘッドマークが置かれている。このゴリラには、アル・カポネをもじった、「アル・カッポネ」の名前が付けられており、地元建設会社に一時買収された際、観光鉄道化する際に作られた。銚子駅や観音駅の観光駅舎も、この時期に建て替えられている。
(出札口とオリジナルヘッドマーク。)
訪問記念に、硬券の普通入場券(大人150円)を購入しよう。この笠上黒生駅に到着した800形電車と、デハ3の二種の裏側絵柄あるそうなので、両方購入する。フリーきっぷだけでは、鉄道会社としては赤字なので、こういう所で存続カンパをしたい。
(笠上黒生駅の普通硬券入場券。)
(裏面のイラストがあるのは、珍しい。)
駅舎本屋と給電設備の間には、転轍器操作てこ小屋(てんてつき-)も残っており、ポイント(転轍器)と腕木式信号機を、手動で切り替えていた時代の名残である。現在は、上り下り線方共に、スプリングポイントを導入しており、自動化している。
(転轍器操作てこ小屋。)
駅出入口周辺を見てみよう。駅舎とホームが高い場所にあるので、ラウンドしているコンクリート階段とスロープがある。住宅地に隣接しているが、住宅地の間の砂利道奥に駅がある為、通りからは駅が見えない。
出入口横の広告付きのプラスチック製ベンチも古い。フルヤ牛乳は、昭和20年(1945年)創業の千葉の地元乳業メーカーで、銚子にも工場があった。
(駅出入口側の駅舎。)
(古いプラスチックベンチ。)
(通り側から見た、笠上黒生駅。)
この黒生地区(くろはい-)は、銚子外港の磯場が広がり、漁業や製塩業が昔から盛んであった。また、良質な粘土を産出する事から、江戸時代末期から戦前までは、国内有数の黒瓦生産地(黒生瓦・銚子瓦)でもあった。資源の枯渇で廃れてしまったが、その名残で、瓦販売業者が10軒位集まっている。
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笠上黒生1551======1553西海鹿島
下り外川行き(デハ1001・単行)
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笠上黒生駅から、隣駅の西海鹿島駅(にしあしかじま-)に行こう。ここで列車交換をした、上り銚子行きの青いデハ1001が、折り返してやって来る。なお、笠上黒生駅より終点外川駅までは、スタフ閉塞となり、信号機が全く無い区間になる。実質的に同時運行できるのは、全線で二列車となっており、線路や架線設備の関係で、最高速度が時速40kmまでに制限されている。平均速度は時速20km程度なので、普通鉄道でありながら、路面電車に近い感覚である。
スプリングポイントを越え、キャベツ畑の中を真っ直ぐに走って行く。若干、下り勾配になっていて、この先の住宅が集まっている場所に駅がある。踏切警報機と遮断機のある第一種踏切と、踏切標識だけの第四種踏切の親子踏切を通過すると、西海鹿島駅に到着する。
この駅は、周辺の宅地化により、昭和45年(1970年)に新設された住民嘆願設置駅で、一面一線の単式ホームと小さな待合所の終日無人駅である。銚子方は、2000形2両編成に対応する為、ホームが延長されており、ホームの向かいには、錆色に汚れた3kmポストが、斜めに埋まっている。また、この駅も難読駅名になっており、この付近の海岸にニホンアシカがいた事が由来である。明治の頃までは、300頭近く生息していたが、乱獲等で絶滅したと言われている。
(ホーム全景と外川方。外川方も、キャベツ畑が続く。)
(笠上黒生方。500mしか無いので、笠上黒生駅も見える。)
駅の周辺は、「灯台キャベツ」のブランドで有名なキャベツ畑が一面に広がり、春キャベツの生産量は全国1位になっている。ホームに立っていると、油っぽいキャベツの香りが漂ってくる。
銚子半島の内陸部は、水捌けが良く、ミネラルが豊富な関東ローム層の土壌と、年間平均気温15℃と言う温暖な海洋性気候で、キャベツ栽培に適しているとの事。なお、10月下旬から6月上旬まで栽培されるので、冬でも緑の畑が広がっている。また、首都圏向けの野菜やメロン等が栽培され、大近郊農業地帯になっている。
(このキャベツ畑を走る列車も、銚子電鉄の風物詩になってる。)
夕方になってくると、雲が大分出て来た。時刻は17時前で、まだ明るいが、この駅までの取材にしよう。明日は、外川方の残り4駅の訪問と下車観光である。ここから、外川までの事前ロケーションをしながら、折り返して、今晩の宿泊予定地の銚子まで戻る事にする。
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西海鹿島1649===1657外川1704===1723銚子(泊)
下り外川行き(デハ1001・単行)
上り銚子行き(デハ1001・単行)※折り返し乗車
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(つづく)
2017年7月15日 FC2ブログから保存・文章修正(濁点抑制)・校正
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