天浜線紀行(1)掛川へ

1日目の大井川鐵道訪問の夜は、JR島田駅前の常宿としているビジネスホテルに宿泊し、2日目の今日と明日は、大井川鐵道の西隣にある天竜浜名湖鉄道に訪問しよう。朝一番の始発電車に乗る為、ホテルの朝食サービスは辞退し、夜明け前の島田駅に向かう。ホテルから徒歩3分程で、島田駅に到着。建て替えられた近代的な駅舎は、ガラスパネルを多用し、開放的な印象がある。時刻は早朝の5時10分、吐く息が白い程に冷え込みが強く、川根本町の今朝の最低気温はマイナス2℃との事。温暖な土地柄の静岡の3月末としては、異常な低温になっている。


(JR島田駅。前年の4月日中に撮影。)

まずは、此処から西に行き、天竜浜名湖鉄道の起点である掛川駅まで行こう。たったの3駅隣でありながら、片道運賃は400円と高い。隣の金谷(かなや)駅から先の駅間距離が、かなり長い為である。5時27分発の普通岐阜行きが、下り2番線からの発車になる。

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島田0527===金谷===菊川===0545掛川
JR東海道線下り127F列車・普通岐阜行き
313系0番台4両編成・クモハ313-15(クロスシート車)乗車
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風は無いが、とても寒いので、橋上の改札口付近で待ち、発車時刻3分前にホームに降りる。静岡からやって来た下り岐阜行き列車が定刻通りに到着。自分を入れて4人が乗車し、車内は数人の乗客が乗っている。進行方向の左側席に陣取った。

この313系0番台は、中間車の無い2両の短編成をふたつ連結し、4両編成で運行している。座席も転換クロスシートになっており、少し硬いクッションであるが、しっかりとした座り心地で、中々良い感じである。JR東海管轄内の東海道本線では、列車運行区間の短距離化が進んでいるが、管内をほぼ全通する為、この早朝の静岡発岐阜行き列車に使われているらしい。


(早朝のJR東海313系0番台車内。)

そろそろ夜明けになる。昨日下車した大井川鐵道の接続駅である金谷駅を発車し、長い牧之原トンネルを抜けると、茶畑や水田が広がる長閑な風景の中を、大きくカーブを描きながら快走する。次の菊川駅までは、菊川の流れに沿い、なだらかな山間の谷間に線路が敷設されている為、意外に距離があり、時間がかかる。乗車から20分程すると、5時45分に掛川駅下り3番線ホームに到着。列車は直ぐに発車して行く。天竜浜名湖鉄道の始発列車の時刻まで、40分程あるので、駅構内を見学してみよう。


(JR掛川駅下り1番線を発車する、下り127F岐阜行き普通列車を見送る。)

牧之原台地西方の内陸部に位置する掛川は、東海道五十三次の26番目の宿場町として、また、掛川城を擁する城下町である。かつては、あの山内一豊が城主であった時代もあった。江戸時代に盛んだった火除詣の秋葉山に行く秋葉街道も、ここから分岐し、その先の信州への街道に更に接続していた。
秋葉山本宮秋葉神社公式HP

掛川の地名の由来は、市内を流れる逆川(さかがわ)が、切り立った崖状になっている事から、「缺けた川(かけたかわ)」、「懸川」、「掛川」になったという。茶栽培等の農業と古くから林業が盛んで、現在の市人口は約11万人になっている。また、市のシンボルの掛川城は、東海の名城のひとつといわれ、山内一豊が完成させたとされる。国内初の本格的な木造復元天守閣が平成6年(1994年)に復元され、桜の名所にもなっている。

市の玄関駅であるJR掛川駅は、在来線2面3線の地上駅と新幹線高架ホームがあり、駅舎は橋上化しておらず、南口と北口に別々の駅舎がある。ホーム内の地下通路と連絡跨線橋の他、東側線路下に地下自由通路が設けてあり、改札を通らずに行き来が出来る。

新幹線口も兼ねている近代的な鉄筋コンクリート駅舎の南口は、地上の在来線とは別に新幹線の高架ホームがある。なお、新幹線の掛川駅は昭和63年(1988年)3月に追加設置された駅で、のぞみ号やひかり号は通過し、各駅停車のこだま号のみの停車になる。また、駅前に大きなロータリーが設置され、比較的新しい町並みになっており、大きなビジネスホテルが建ち並んでいる。


(JR掛川駅南口。)

反対側の北口は、旧市街地・繁華街側になり、掛川城が聳える方面になる。新幹線の停車駅として、全国唯一の大型木造駅舎が残っており、市のシンボルにもなっている。かつて、掛川市長を歴任した榛村(しんむら)氏が、強く保存を働きかけたのがきっかけで、市を上げての保存活動をしている。

昭和15年(1940年)築の2代目駅舎の内部は、木造の雰囲気を残しつつ、改装されているが、外観は原形のまま補修され、大変良い状態を保っている(※2)。ちなみに、掛川駅の開業年は明治22年(1889年)4月の静岡駅から浜松駅までの延伸時開業、起点の東京駅から229.3km地点、所在地は掛川市南1丁目、標高28mの社員配置有人駅(直営駅)で、1日約1万人の乗車客がある静岡県西部の主要駅になっている。


(JR掛川駅北口木造駅舎。)

在来線ホームを見てみよう。2面3線のホームは東西に配され、北口駅舎に接続した単式の1番線と島式の2・3番線になっている。北口側の1番線が朝夕の上り静岡方面、南口側の3番線が下り名古屋・浜松方面で、真ん中の2番線は日中の上り用として使われる。1番線は、2番線から分岐する副本線の珍しい番線の振り方であるが、昔、南口側の3番線が1番線であった名残との事。

また、1番線の浜松方には、木造の旅客上屋が一部残っている。なお、天竜浜名湖鉄道のホームは、1番線ホーム浜松方の横にあり、ホーム側に設置された連絡改札口と、ビル駅舎側の外からの出入口がある。


(JR掛川駅1番線ホームの木造旅客上屋。)

木造旅客上屋を見ると、昔ながらの白いペンキ塗りの柱と切羽板、斜め梁構造が良く観察でき、とてもレトロな感じになっている。


(A形の斜め梁が、傾斜が緩やかな切妻屋根を支えている。)

(末端妻部の切羽板。柱が短足に見えるが、ホームの嵩上げがされているので、もっと長かったはずである。)

(1番線ホームに停車する普通岐阜行き313系0番台。)

JR掛川駅のホームを見学した後、もう一度、北口改札を出る。駅前のコンビニエンスストアで、朝食のおにぎりや飲料水を手配しよう。手配後は、JR掛川駅北口西並びの天竜浜名湖鉄道の駅ビルの階段を上がる。


(天竜浜名湖鉄道掛川駅。細長いビルである。屋上には、社章も掲げられている。)

(駅出入口は、あまり駅の感じがしない。)

(つづく)


(※)
原則として、駅長室がある側から1番線となるが、改装や改良工事などで変更され、当てはまらない場合もある。
(※2)
平成26年(2014年)に耐震化工事をし、解体された。外観は木造駅舎の用材を使い、同じ様にしてある。

2020年4月21日 ブログから転載・文章修正・校正。

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