川根温泉笹間渡駅は、県道から高い位置にあり、小さな駅前広場がある。県道からの入口横には、古い商店や民宿が数軒並んでおり、県道向かいに花桃の並木がある。
(県道からの駅。)
(県道の花桃並木。)
金谷方の川根温泉と鉄橋の方に行ってみよう。この温泉は、平成7年(1995年)、笹間渡温泉茶里夢の泉としてオープンし、3年後の平成10年(1998年)に、川根温泉ふれあいの泉としてリニューアルしている。それに合わせ、駅から連絡歩道が整備された。また、駅舎にテナントが入り、ホームの改修と延長がされている。
(川根温泉への連絡歩道。)
(陽が良く当たる為か、蜜柑や枝垂れ桜が早々と咲いている。)
舗装された歩道を数分歩くと、道の駅併設の川根温泉ふれあいの泉に到着する。湧出温度49.0℃・水素イオン濃度ph7.9(ほぼ中性)のナトリウム泉100%掛け流し、毎日1,000人以上の利用客がある大温泉施設になっている。毎分2.1tも湧出する大源泉であるが、それを調節し、毎分約860Lを取り出している。露天風呂、檜湯舟、プールや宿泊用コテージも完備し、SLが見える温泉として有名である。
川根温泉ふれあいの泉公式HP
また、かつての笹間川は、現在の川根温泉付近で合流しており、江戸時代初期の寛永10年(1633年)頃に、「瀬替え」と呼ばれる大規模な治水工事が行われた。土手や岩を人力で削り、笹間川の合流点を現在の場所に替え、治水と農地開墾を行った。
(川根温泉。)
入浴料は、大人500円(タオル代は別)と安い。なお、大井川鐵道では、金谷駅から川根温泉笹間渡駅までの往復運賃と入浴料がセットになった切符を販売している。鉄橋でのSL撮影後のひと風呂も、利用してみたい。「川根温泉クーポン券」(日帰りのみ/大人1,820円、小人920円/往復運賃と入浴料込み。)を、金谷駅で毎日発売しており、500円分お得になる。
(川根温泉は、道の駅と併設している。)
温泉の露天風呂からも見えるデッキガーター鉄橋の大井川第一橋梁は、本線にある四つの鉄橋のうち、長さ275mの最も長い鉄橋になっている。昭和5年(1930年)に架橋され、翌年に満州事変が起き、日本が戦争の時代へ突入した頃である。
なお、大井川と笹間川がありながら、笹間渡地区は長年のダム取水の為、飲料水確保が困難となっており、対岸の抜里地区から送水している。鉄橋の下流側、側壁の下部に黒い水道管が設置されているのが見える。
(上流側。SL急行列車の長編成も収まり、大井川鐵道本線一の撮影アングルである。)
(下流側。架線柱が取り付けられ、橋桁の側面に水道管が吊り下げられている。)
橋北詰の橋桁側面にある塗装標記を見てみると、正式名称は、「第13号大井川第一橋梁」、起点の金谷駅から19.448km地点、1本あたりの橋桁長22.25mの十二連、金谷方より九連目位から大きくカーブをする。また、軸重制限(荷重計算/クーパー荷重)は、クーパーE27と表記されており、当時のアメリカ式表記法で27,000ポンド、一軸当り12.2tまでになる。なお、国鉄では、明治42年(1909年)から、クーパーE33(14.9t)が標準となり、その後の主要幹線はE40(18.1t)が標準になっている。E33と比べても、軽い規格になる。
なお、日本の鉄道はイギリス式を参考にして整備されたが、台風や急峻な河川が多く、蒸気機関車の大型化に伴い、構造理論に優れ、頑丈なアメリカ式を後に採用した。各地のローカル線に、アメリカンブリッジ社製の古い鉄橋が見られるのは、その為である。
(橋桁の真下から。平成20年(2008年)冬に、橋桁の再塗装がされている。)
17時30分を過ぎ、山に陽が隠れて暮れて来た。そろそろ、駅に戻ろう。駅事務室には、ギャラリーのテナントが入っており、切符の委託発券もあるが、営業日が限定されているらしい。なお、温泉側にテナントの出入口があり、一部改装をしている。案内板を見ると、毎週月・水・金曜日の11時から15時の営業になっている。
(ぎゃらりー「ひと花館」。)
駅舎内の待合室は、10畳程の広さがあり、少し荒れているが、昔のままになっている。出札口や鉄道小荷物窓口も、板で塞がれていない。
(待合室。窓際にロングベンチがある。)
(出札口と鉄道手小荷物窓口。)
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川根温泉笹間渡1745======1823金谷
上り 普通 金谷行き
大井川鐵道16000系 2両編成
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17時45分発の上り金谷行き元・近鉄16000系に乗車し、起点駅の金谷駅に戻ろう。行楽帰りの家族連れ等の20人程が乗車し、少し賑やである。
第一大井川橋梁を渡り、抜里の大茶畑、家山や福用を過ぎ、神尾に向かって走る頃には、大分暗くなってくる。ちなみに、神尾のイントネーションは平坦になっており、「尾」は下がらない。
(神尾駅付近で暗くなってくる。)
18時23分、起点の金谷駅に到着する。もう、完全に日没になっている。金谷駅から出る場合は、2日間の有効期間内でも、フリー切符が回収になるが、駅員氏に申し出をすると、訪問記念に切符を貰う事が出来る。
(無事に金谷駅に到着。)
金谷駅から大井川を渡り、東京方の隣駅である島田駅前のビジネスホテルに泊まり、明日の天竜浜名湖鉄道の再訪問に備えよう。夕食は、いつもの弁当屋の幕の内を手配する。大盛り50円加算の税込み510円は安い。この弁当屋は、静岡を本拠地とする地元チェーンになっており、ボリュームがある。東京にも出店して欲しい。
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最後に、平成28年(2016年)2月に訪問した五和駅(ごか-)を紹介したい。金谷駅から四駅目の神尾駅のひとつ手前の駅になり、金谷から大井川西岸に続く市街地の最北端の地区になる。
昭和2年(1927年)6月開業、起点の金谷駅から5.0km地点、4駅目、所要時間約10分、島田市竹下、標高84mの島式ホーム一面二線の列車交換可能駅・終日無人駅である。なお、この駅を出発すると、金谷の町を離れ、大井川の自然の中を北上して行く。
(五和駅ホーム全景。)
静かな今風の住宅地の中であるが、開業当時の小さな木造駅舎が、ミスマッチの様に佇んでいる。最近は、駅名の語呂合わせから、「受験御利益の合格駅」として有名になっている。
丁度、受験シーズンにあたり、地元ボランティア会長のW氏が飾り付けを行っていた。この凧の飾り付けは、取り外しが可能になっており、鉄道ファンの撮影にも考慮している。また、五つの村が集まった事が、五和の地名由来になっているとの事。元々は、戦国時代末期、大井川の「天正の瀬替え」(1573-93年頃)により開拓された農村地帯であった。
(ホームから駅舎本屋。)
(凧で飾り付けされた改札口。合格祈願列車にも、タイアップしている。)
荒れた駅事務室や待合室を整備し、出札口周辺も有人駅の様に大変綺麗になっている。なお、木目の板や窓枠も水で丁寧に洗い、その熱意に驚かせられる。出札口には、木彫の合格地蔵尊も安置され、正月・鯉のぼり・紫陽花等・七夕等の季節折々の飾り付けもされている。平成27年(2015年)11月には、全国テレビ生中継も行われ、地元の新しい名物となっていると言う。
今日は、NHK静岡放送局の取材があり、駅に出向いたと言う。将来的には、駅事務室を開放し、住民のコミュニティ施設に使ったり、金谷地区の他の駅も整備したい意向もあり、大井川鐵道も活動に協力している。
(待合室と出札口。鉄道手小荷物窓口も、綺麗な状態になっている。)
(五和駅出入口。)
(おわり/大井川鐵道本線編)
2017年8月6日 ブログから保存・文章修正・校正
2017年8月9日 文章修正・音声自動読み上げ校正
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