この天竜二俣の町を少し散策してみよう。この付近の中心的な大きな町になっており、駅レンタサイクルを借りる事にする。最近、貸し出しを始めたそうで、電動補助付き自転車や普通の自転車を借りられる。出札口の初老の男性駅員氏に申し出て、申請書に記入。1日料金500円と保証金1,000円(返却時に返金)を支払う。なお、年中無休、各5台有り、9時から16時まで貸し出し可能との事。この町は、城址以外の町中心部は急坂が無いので、普通の自転車を借りよう。
早朝5時に出発した為、かなりの空腹である。先に、昼食を摂る事にする。町の東の外れに駅があり、西側の秋葉街道の国道152号線沿いに、商店街、飲食店や旅館が集まっている。実際には、西隣駅の二俣本町駅(ふたまたほんまち-)の方が、町の中心部に近い。
改札の元気な中年女性駅員氏に、「いってらっしゃい」と見送られ、出発する。駅から町の中心地まで、距離は余りなく、駅前の県道はかなりの交通量がある。駅前の道を西に550m、5分程走ると、天竜川支流の二俣川を渡る。国道と接続している道路橋から、天浜線の鉄橋【赤色マーカー】が見えるので、行ってみよう。
(天竜浜名湖鉄道二俣川橋梁。下流側から撮影。)
この国登録有形文化財の二俣川橋梁は、開業時の昭和15年(1940年)に架橋された。八幡製鉄所の鋼材を使い、日本橋梁株式会社が製作した国産のデッキガーター鉄橋である。鉄橋上で緩やかにカーブしており、両端は鉄橋ではなく、コンクリート橋であるのが特徴になっている。鉄橋の中央部に銘板らしきものがあるが、肉眼では見えない。
◆国登録有形文化財リスト「天竜浜名湖鉄道二俣川橋梁」◆
所在地 | 静岡県浜松市天竜区二俣町二俣40-2、1601-29地先 |
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登録日 | 平成23年(2011年)1月26日 |
登録番号 | 22-0161 |
年代 | 昭和15年(1940年)、製作時期は銘板が判読不可の為、不明。 |
構造形式 | 鉄筋コンクリート造単桁及び鋼製二連桁橋、橋長58m、橋台及び橋脚付。 |
特記 | 天竜川橋梁の1,000m北東に位置し、二俣川に架かる。 橋長58mの単線仕様で、両端部にコンクリート造単桁橋を配し、 中央部に鋼製二連桁橋を用いる。鋼製桁はデッキガーダー。 緩やかにカーブする橋梁で、市街地景観に彩りを添える。 |
※文化庁公式HPから抜粋、編集。
鉄橋と並んでいる踏切前の横道を150m程入ると、二俣本町駅がある。この駅には、テナントの手打ち蕎麦屋「葉月」【食事マーカー】が入っており、天浜線訪問時にいつも立ち寄っている。今日は店休日に当たる為、駄目もとで来たが、幸運にも営業していた。ここで、昼食を摂る事にしよう。
(手打ちそば処葉月。駅事務室を改装してテナントとして、入居している。)
アルミの引き戸をカラカラと開けると、蕎麦屋としてはモダンな感じの15畳位の店内に、木製のテーブルが3つあり、10人位入れる。めかぶおろし蕎麦(かけ・1,000円)が名物であるが、おろし大根は苦手なので、田舎蕎麦(ざる・800円)を注文する。
暫くすると、出来たての蕎麦が出て来た。生蕎麦の良い香りと昔ながらの田舎蕎麦の味わいがたっぷり楽しめ、ぼそぼそとした感じも少なく、滑らかで食べ易い田舎蕎麦である。蕎麦汁も上品な甘さで、良い感じである。なお、レギュラー盛りでも、蕎麦屋としては量があり、満足できる。希望ならば、更に大盛りにも対応可能との事。
(田舎蕎麦ざる。普通盛り800円。)
蕎麦湯とお茶を頂き、食後に少し休んだ後、この二俣本町駅も見学しよう。旧市街地の南端の天竜川と支流の二俣川が合流する場所にある、単式一線の終日無人駅になっている。開通年の昭和15年(1940年)開業ではなく、戦後の昭和31年(1956年)12月になっており、地元の設置要望による駅であろう。起点の掛川駅から16駅目、26.8km地点、所要時間約60分、浜松市天竜区二俣町二俣、標高は48m、天竜二俣駅から東に0.6km・所要時間2分のため、徒歩でも行ける距離になっている。
駅舎側が低く、コンクリート階段でホームまで上がる築堤駅となっており、昭和中期の典型的な国鉄風の木造モルタル駅舎になっている。駅前も少し広いが、住宅地の中にあり、バスやタクシーの発着は無い。
(二俣本町駅。)
出入口の庇の派手な色と駅名の切り抜き文字が、この駅舎の特徴になっている。出庇と切り抜き文字は補修され、出入口横に元の二段窓が残っている。
(駅名の切り抜き文字。※追加訪問時に撮影。)
木製の白い吊り扉を開けると、10畳位の広さの待合室になっており、壁は白く、天井が高い。西側の新所原方に木製ベンチがあり、改札はアールのある細い金属製が取り付けられている。なお、待合室に飛び出した出札口や鉄道小荷物窓口は、テナントの蕎麦屋があるので、ベニア板で閉鎖されている。
(改札口とロングベンチ。窓が大きく、明るい印象である。)
改札を通ると結構な高低差の急階段で、ホームの中央部掛川寄りに上がる。ホームを見てみよう。
(ホームに上る急階段。)
東側の掛川・天竜二俣方は、踏切先に二俣川橋梁が見え、緩くカーブしている。向こうの大きなビルは、「テピア」と呼ばれる地元大型ショッピングセンターであったが、現在は閉店しているとの事。また、掛川寄りには、国鉄時代と思われる照明付き駅名標がそのまま残っている。
(掛川方。)
(国鉄時代と思われる照明付き駅名標。)
掛川寄りから、単式ホーム全景を眺める。新所原方は盛り土ホームであるが、掛川方はコンクリートパネルの床面を下から鉄骨柱で支えている戦後国鉄の省力化構造になっている。コンクリートは風化が激しく、表面はかなり荒い。
(二俣本町駅ホーム全景。)
新所原寄りには、小さな木造待合室も設置されている。外装はトタン風、窓ガラスも取り外されているが、中は木造ベンチがあり、老朽化とガラス破損防止の為に補修改装されたらしい。
(ホーム待合室。)
(待合室内。簡易な作りであるが、駅開業当時のものと思われる。)
西側の新所原方は、急崖下と盛り土部を走ると、カーブの先にトンネルと天竜川を渡る大鉄橋がある。しかし、カーブがあるので、全く見えない。なお、鳥羽山が天竜川の河岸近くまで迫り出しているので、山の背面の斜面部にこの駅があり、周りの住宅地よりも高い位置になっている。
(新所原方を望む。)
今年の春、ホーム階段横に「天使の椅子」と名付けたアート椅子が置かれた。地元特産の天竜杉を使い、宮大工とチェーンソーアーティストが共同制作した。地元産の木材を使ったアート作品を、ローカル線の無人駅に設置する第一弾との事。とても面白い企画だと思う。此処に座っての記念撮影も可能である。
(アート椅子「天使の椅子」と観光駅名標。観光駅名標は転換時に設置された。)
(つづく)
2021年1月16日 ブログから転載・文章修正・校正。
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