長鉄線紀行(5)終点北濃へ

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【停車駅】〓→長良川本流を渡る鉄橋
山田801==徳永==郡上大和=〓=万場=上万場=〓=大中==大島==820美濃白鳥
下り北濃行(ナガラ300形(305)単行)
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山田駅と徳永駅を過ぎ、長良川から離れ、町と水田の中を走る。この付近からは、長良川の蛇行も穏やかになり、一定幅の川谷が真っ直ぐに北に続く。郡上大和駅先の第七長良川橋梁まで、ほぼ直線の線路になっている。

次の郡上大和駅は、小ぶりな古い木造モルタル駅舎と列車交換設備がある途中主要駅になっており、駅事務室に喫茶店が入っている。昭和7年(1932年)7月に郡上八幡駅からこの駅までの延伸開通時に開業、起点の美濃太田駅から57.3km地点、29駅目、所要時間約1時間40分、郡上市大和町剣、標高280mの終日無人駅である(※)。長良川鉄道転換前は、美濃弥富駅(みのやとみ-)の駅名であった。なお、長良川鉄道では珍しい千鳥式ホームが設置されている。


(郡上大和駅全景。ウィキペディア公開ファイルから引用。撮影者・レルバ ※撮影者の共有許諾画像。)

郡上大和駅を発車し、大きく左カーブをした後に第七長良川橋梁を渡るが、直ぐに川から離れてしまう。この先は、万場駅、上万場駅、大中駅(おおなか-)、大島駅にひとつずつ停車して行く。美濃白鳥駅までは、この様な単式一線のホームと開放式の小さな待合所のみの駅が続く。沿線には、美しい田圃が広がり、一層、ローカル線らしい風景になる。

上万場駅を発車。緩い上り勾配の直線区間が続き、列車はとても軽快に走る。郡上大和駅以北は、第三種や第四種踏切が多くなり、通過時に汽笛を鳴らす。なお、山田駅、郡上大和駅と大中駅は開通時開業の古い駅であるが、他の駅は追加設置された駅になる。


(上万場駅付近。郡上八幡駅方を撮影。)

そして、再び、東海北陸道の高架橋を潜り、第八長良川橋梁を渡ると、大中駅に到着する。大中駅横の水田を見ると、ピンと微動せずに水が張り、水鏡が見事である。


(大中駅前の水鏡。)

次の大島駅を過ぎると、徐々に住宅が増え、郡上八幡駅から約30分、8時20分に美濃白鳥駅(みのしろとり-)に到着する。
マピオン電子地図・美濃白鳥駅


(美濃白鳥駅に到着。)

郡上八幡と並ぶ途中主要駅として、千鳥式ホーム、車両庫や大きな木造駅舎がある駅になっており、社員配置の終日有人駅である。昭和8年(1933年)7月、美濃弥富駅(現・郡上大和駅)からの延伸開通時に開業し、この駅の折り返し列車も何本か設定されている。起点の美濃太田駅から66.1km地点、34駅目、所要時間約2時間、郡上市白鳥町白鳥、標高370mになり、美濃太田から302m、郡上八幡駅から160m登って来ている。美濃太田からの路線キロ相対平均勾配率は4.6‰(パーミル)、郡上八幡からは8.3‰である。


(改札口周辺。)

長良川最奥部の盆地にある美濃白鳥は、役場や商店等が集まり、奥美濃エリア第二の中心地になっている。昔は、林業や繊維の原料となる麻栽培、最近では、スキー等の観光が盛んになっており、夏の白鳥おどりも有名である。また、福井方面に行く美濃街道こと、国道158号線の分岐点になっている。


(国土地理院国土電子Web・美濃白鳥駅周辺)

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【停車駅】〓→長良川本流を渡る鉄橋
美濃白鳥825=〓=白鳥高原==白山長滝==833北濃(終点)
下り北濃行(ナガラ300形(305)単行)
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終点の北濃駅(ほくのうえき-)までの残り6kmは、単線スタフ閉塞式の区間となり、駅長から運転士にタブレットホルダーが渡される。美濃太田駅で見た運転台のあのU字の部品は、これを置いておく専用ホルダーである。しかし、使い難いせいか、運転士のカバンと一緒に置いてある。なお、単線スタフ式である為、この美濃白鳥駅から北濃駅間の末端部は、常に一列車のみの運行である。現在、1日当たり下り列車9本、上り列車8本の運行になっている。

汽笛の合図と共に、8時25分に美濃白鳥駅を発車する。郡上八幡駅以北からの乗客を入れ、数人の乗客が終点まで向かう。


(駅長に見送られながら、美濃白鳥駅を発車する。)

(末端区間を北上する。速度は速い。)

美濃白鳥駅以北は、川谷も狭くなり、長良川の最上流域に近くなる。暫くの間、列車は真っ直ぐに走ると、大きな左カーブ先の最後の第九長良川橋梁を渡る。橋上から遠くの山の中腹に見える巨大な高架道路は、難所の県境を越える油坂峠道路(中部縦貫道/有料道路)になる。


(第九長良川橋梁を渡る。下流方を撮影。)

長良川を渡ると、線路は右に折り返し、16‰(パーミル)の長い直線の上り勾配を力走する。川から離れ、家も大分少なくなり、奥美濃らしい感じの景色が広がっている。ハイパワーなこの軽快気動車は、結構な速度で快走するが、美濃白鳥駅以南よりも線路状態が悪く、かなり揺れる。


(美しい奥美濃を走る。)

(左右には、田圃が広がる。最後部から、後方を撮影。)

標高が上がった為か、周りの景色は、高原風になってきている。左手に小森の神社の高木が見えてくると、単式一線ホームの小さな白鳥高原駅に停車。国鉄時代は、二日町駅と言われ、長良川鉄道発足時に改称されている。
マピオン電子地図・長良川鉄道白鳥高原駅

白鳥高原駅からは、10‰(パーミル)の上り勾配になり、400m先の70kmポスト付近から、22‰の上り急勾配が始まる。そして、国道156号線をアンダーパスすると、長良川と並走し、勾配が緩やかになり、駅前に大きな神社がある白山長滝駅に停車する。


(グーグルマップストリートビュー・長良川鉄道白山長滝駅)

美濃エリアの本拠地である長滝白山神社の門前駅になっており、毎年1月6日の「六日祭」の勇壮な花奪いで有名な大社である。なお、白山(標高2,702m)は、富士山、立山と並ぶ日本三大霊山(山岳信仰)のひとつになっており、石川県と岐阜県の県境(美濃側から見ると大日ヶ岳の後方)にある。古くから、日本海の船乗り達の航海の目印や天候を予測する拠り所となっていた。なお、岐阜県内は、白山信仰が盛んなエリアになっており、末社が500社以上ある。
グーグルマップ・白山

最後の途中駅である白山長滝駅を発車する。長良川鉄道のラストスパート区間になり、再び、16‰(パーミル)の上り勾配となる。川谷は幅300m位になり、かなり狭い。長良川の源流地の大日ヶ岳(標高1,708m)が、正面に見えて来る。


(大日ヶ岳が見えてくる。)

山際の一段高い土手を走り、勾配も緩やかになり、右に大きくカーブする。そして、終点の北濃駅(ほくのう-)に8時33分に無事到着。路線キロ72.1km、約2時間の旅であった。


(終点の北濃駅に到着。)

(つづく)


(※)テナントの喫茶店は、駅業務を委託されていない。

2017年8月17日 ブログから保存・文章修正・校正
2017年8月17日 文章修正・音声自動読み上げ校正

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