大鐵本線紀行(26)川根温泉笹間渡駅 前編

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地名1640======1645川根温泉笹間渡
上り 普通 金谷行き
大井川鐵道3000系(元・京阪電気鉄道)2両編成
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地名駅(じな-)を16時40分に発車する。3000系の乗客は10人程度である。20‰(パーミル)勾配の地名坂を下り、三本のトンネルと笹間川鉄橋(ささま-)を渡る。

笹間川鉄橋は有名な撮影名所になっており、川の辺りには、小さな茶畑と早咲きの大桜が植わっている。大井川の代表的な支流のひとつの笹間川は、上流に中部電力の発電用ダムの笹間川ダムがあり、農業用水や上水道の水源に使われている。
国土地理院国土電子Web・笹間川鉄橋


(早咲の大桜と笹間川。本線一の早咲き桜になっている。)

この笹間川は、駿河徳山東方の無双連山(むそれやま/標高1,083m)が源流になっている。昔は、大きな淵が幾つもあり、河童伝説もあった。また、大井川との合流付近に東海パルプ笹間渡発電所があり、笹間川から取水し、佐間川ダムが完成した昭和36年(1961年)まで、地名発電所と共に使われていた。今も、川沿いの茶畑の中に、コンクリートの建物が残っている。

笹間川鉄橋を渡った後、下り左大カーブを90度近く曲がり切ると、所要時間約5分で、隣駅の川根温泉笹間渡駅に到着する。この駅で下車しよう。直ぐに、乗車してきた3000系が発車して行く。


(3000系が発車。)

(川根温泉笹間渡駅ホーム。)

金谷方の川側は木立、山側は住宅があり、少し奥まった感じの場所に駅がある。この先は、木立が開け、右カーブをしながら、大井川第一橋梁を渡る。


(金谷方。)

4-5両編成が停まれる長さのホームは、近代化されている。近年、下りSL急行列車が停車する事になった為、新しい旅客上屋から金谷寄りは、新設延長されたホームになっている。


(金谷方からホーム全景。)

千頭寄りに開業当時の旧ホームがあり、改修されている。向こうの踏切先から、地名駅までの標高差約50mを登る20‰の急勾配が始まる。下り千頭行きSL急行列車は、この川根温泉笹間渡駅に停車すると、坂を登れない為、大井川第一橋梁の手前より助走を付けながら、この駅を通過する。

なお、最急勾配は、崎平駅から千頭駅間にある田代トンネルの22‰であるが、距離対標高差では、この地名坂が本線で最もきつい坂になっている。


(千頭方。)

南寄りの暖かい場所である為か、花桃や木蓮の仲間のコブシ(辛夷)が咲いている。なお、大井川側は木立になっており、ホームから川は見えない。


(コブシ。)

(花桃。)

笹間渡の地名の由来は、江戸時代以前の古文書が発見されおらず、不明である。元は、「笹間郷(篠間郷)」の一村であり、「渡」は後から付いたらしい。「渡」は、大井川と笹間川の合流点、「川の瀬」に由来するのではないかと思われる。なお、地元の古老の伝承によると、古から、何軒かの農家が焼畑等を行っていたらしく、戦国時代には、甲斐武田氏家臣の市川氏が帰農して村を作ったと言われている。また、戦国時代に入る直前の寛正3年(1462年)創建と伝わる八幡神社が鎮座している。


(国土地理院国土電子Web・笹間渡付近。)

駅舎の中を通り、駅前に出てみよう。ホームは近代化されているが、開業当時の木造駅舎が残っている。

昭和5年(1930年)7月に地名駅まで延伸開通した際に開業、起点の金谷駅から20.0km地点、10駅目、所要時間約35分、島田市川根町笹間渡、標高153mの簡易委託駅である。なお、平成15年(2003年)に、川根温泉の名が冠となった。


(ホームからの駅舎本屋。)

(旅客上屋から、小階段が駅舎に繋がっている。)

(ホーム側改札口。)

大井川鐵道本線の標準的な中型木造駅舎になっており、駅舎の外壁は補修され、駅名標も新しい。よく見ると、出入口の上の軒下の支えは、洋風の金属製になっている。


(駅前からの駅舎。)

(駅出入口。)

(つづく)


笹間渡の地名と歴史について、島田市教育委員会様からご教示頂いた。
厚く御礼申し上げる。

2017年8月6日 ブログから保存・文章修正・校正
2017年8月9日 文章修正・音声自動読み上げ校正

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