大鐵本線紀行(19)家山駅 後編

木造の改札口を通ると、20畳位の広い待合室がある。白いガラス窓枠、電光式広告板、L字に配された座面奥が低い木造ロングベンチ、中央に六角形ベンチも据えられており、大変レトロな造りになっている。これを見る為だけでも、この駅を訪問する価値があると言える。


(待合室。六角形ベンチは、老朽化の為に補修してある。)

(千頭方と線路側にロングベンチがあり、20人位が座れる。)

(改札口と出札口。)

壁面上部には電光広告板がずらりと並び、昭和の雰囲気がたっぷりである。これだけ残っている駅も、今では、少なくなっている。


(待合室天井下の三方に、ぐるりと電光式広告がある。)

その中でも、駅出入口上の眼鏡屋の看板は、市内局番も一桁になっているレトロなデザインになっており、今でも、島田駅前にあると言う。駅弁を製造している大鉄フードの看板もあり、家山の桜並木の国道沿いに、握り飯や弁当等を販売する直営売店がある(※)。


(メガネの岩本の電光広告板。)

(関連会社の大鉄フードの看板。)

出札口は、ガラスの部分がとても大きい。手前の二段木造テーブルや、ガラスに開けられた通話用の小さな穴が、良い雰囲気を出している。駅長氏の手書き発車時刻表や、青色カードのSL急行編成案内板もある。


(出札口。)

駅前に出てみよう。小さめの駅前広場があり、タクシーが2-3台が止まっている。大井川鐵道標準の瓦葺き駅舎が建ち、他の駅の出庇は朱色であるが、この駅の駅前側は青色になっており、爽やかな印象を受ける。また、平成23年(2011年)2月に、駅事務室を一部改装し、直営売店が開店した。団体客の乗降が多い為、以前からの要望に応え、菓子、飲み物、土産や大井川鐵道オリジナルグッズを販売している。暖簾には、大井川鐵道の社章があしらわれている。

売店に立ち寄り、飲料とチョコレートを購入しよう。売店の女性店員の話では、昨年よりも桜の開花が遅く、恒例の桜まつりも中止となり、観光客はかなり少ないとの事。


(駅前からの駅舎本屋。)

(SLの里家山駅売店。)

駅前から見える東屋がある小高い山は、天王山公園と呼ばれ、町のシンボルになっている。この家山は、観光の見所も多く、駅構内の桜並木や通称「桜トンネル」と呼ばれる国道の桜名所、元・三日月湖である野守の池、全国的に珍しい、足のお地蔵様の三光寺があり、名物の食べ物も多い。年間行事としては、3月下旬から4月上旬の「家山桜祭り」が有名になっており、大変な人出になる。


(駅から真っ直ぐ道路が伸びる。天王山公園は、標高168mの古墳である。)

また、駅前も昭和な雰囲気をほのかに残しており、駅前駐輪場の壁に手書きの昭和風商工案内図(商店街地図)もある。これだけ大きいものも、最近は少なくなっている。


(大型の手書き商店街地図。)

近年、駅構内駐車場南側に、一度に20人が利用出来る足湯ができた。金・土・日・月曜日と祝日の12時から16時まで、無料で利用できる。湯は川根温泉の源泉を運んでいる。


(家山駅近くの足湯施設。)

この家山について、少し触れておきたい。元・榛原郡(はいばら-)川根町の中心地として、栄えてきた町である。現在の駅周辺の人口は約2,000人、地名は、中国語の意味で「ふるさと」の意味があり、唐代の詩人である銭起(せんき)の漢詩に由来していると伝えられている。近隣の福用地区も、大陸からの渡来人の伝承があり、その由縁かもしれない。


(国土地理院国土電子Web・家山付近。)

古くは、家山原と呼ばれ、大井川と支流の家山川が合流し、川水が流れ込んでいた氾濫原であった。水利が良く、広く開けたこの土地には、縄文時代から人が住んでおり、大井川流域としては珍しい古墳もある。また、家山川上流の塩本地区には、戦国時代末期の市城(いち-)の跡があり、当時、この付近を支配していた地侍の鈴木源九郎の築城と伝えられている。現在、城址は茶畑になっている。

江戸時代までは、戸数の少ない荒地の寒村であったが、明治に入り、又平庄太郎(またひらしょうたろう)が製材所と木材問屋を設け、野守の池を貯木場に活用し、次第に活気づいていった。明治中頃に、船着場を大井川に建設すると、人の往来も多くなり、旅館、銀行や映画館等もでき、このエリアの中心地になった。昭和35年(1960年)、役場が家山に移転してからは、人口も更に増え、現在も、島田市川根支所、銀行、小学校や商店等が集まっている。なお、駅の直ぐ北側には、又平庄太郎の功績を讃える顕彰碑が建っている。

駅に戻り、ひと休みしながら、列車を待つ事にしよう。改札前には、側線のダルマ転轍機やリアカーが転がっている。このリアカーは、家山止まりの団体SL列車到着後、車内から出たゴミの運搬に使われている。


(改札前のダルマ転轍機。円盤状のものは錘になり、結構重い。)

(駅舎前に置かれたリアカー。)

窓のガラスをよく見ると、わずかに歪むアンティークガラスが入っている。今度の下り千頭行きは、9時48分発になる。それまで、昭和の雰囲気を味わう事にしよう。


(アンティークガラスと改札口。)

NPOまちづくり川根の会公式ブログ
島田市観光協会公式HP


(※)眼鏡屋は、その後に廃業した模様。大鉄フードは、静岡駅の大手駅弁業者・東華軒に譲渡された。家山の直営売店の現状は不明。

2017年8月5日 ブログから保存・文章修正・校正
2017年8月5日 文章修正・音声自動読み上げ校正

NPOまちづくり川根の会様に家山の由来をご教授頂いた。厚くお礼申し上げる。

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