大鐵本線紀行(14)電車と機関車

大井川鐵道の現役電車と電気機関車を紹介したい。昭和24年(1949年)に直流1,500Vで電化された為、戦後直後から、電車や電気機関車を導入している。戦前の開業当初は、蒸気機関車を運行していた。

◆電車◆

蒸気機関車や旧型客車の人気に隠れているが、往年の名車揃いであり、鉄道ファンのみならず、特に、京阪エリア在住の一般観光客には、懐かしい。過去の電車には、関東の小田急電鉄や西武鉄道の譲渡車両も走ったが、現在は、関西の大手民営鉄道の譲渡車両が活躍している。なお、塗装や形式名は、譲渡元の現役当時のまま運用する方針があり、保存鉄道としての役割も担っている。

なお、全ての車両が、2両編成になっている。ワンマン化改造がされており、料金箱、整理券発行機、電光運賃表や自動放送装置(停車駅案内)が備え付けられ、有人駅以外の乗降方法は、後ろ乗り、前降り精算方式になる。また、大井川鐵道では、汚物処理施設が無い為、車内トイレは閉鎖されている。

形式 16000系 21000系 3000系 420系
稼働編成数 2両編成×3本 2両編成×2本 2両編成×1本 2両編成×1本
譲渡元会社 近畿日本鉄道 南海電気鉄道 京阪電気鉄道 近畿日本鉄道
製造会社 近畿車輛 帝国車両 川崎重工業 日本車両製造
製造年 昭和40年 昭和33年 昭和46年 昭和28年
大鐵入線年 平成10年 平成6年と
平成9年
平成7年 平成7年
全長 20.0m 17.7m 18.7m 19.8m
全幅 2.7m 2.7m 2.7m 2.7m
高さ 4.2m 4.0m モハ4.2m
クハ4.1m
モハ4.1m
クハ3.7m
自重 42.0+34.0t 37.0+37.0t 35.0+31.0t 42.2+28.5t
特記 吉野行特急
客扉折戸式
ズームカー
全車動力車
初期車
テレビカー
京阪本線特急車両
東京営団地下鉄
FS-502A台車
旧近鉄特急色
吊掛駆動
冷房無
休車中
(千頭駅留置)

【大井川鐵道16000系/元・近畿日本鉄道16000系】

現在の主力電車。大きな窓の明るい車内は、往年の近鉄特急の貫禄がある。走行音も静かになっており、フワフワとした空気バネの乗り心地が特徴。特急らしいリッチなシートは、ローカル民営鉄道の普通列車としては、とても豪華である。


(16000系。)

(車内。)

【大井川鐵道21000系/元・南海電気鉄道21000系】

元・高野山行き特急・急行電車。50‰(パーミル)の急勾配を登坂する為、全車モーター搭載になっている。貴重な初期車となっており、全席転換クロスシート仕様である。重心が低く、剛性のある走行感は、16000系と全く違う乗り心地になっており、かなり硬めである。


(21000系。湘南型デザインである。)

(車内。)

【大井川鐵道3000系(2代目)/元・京阪電気鉄道3000系】

有名なハトのヘッドマークを掲げた京阪特急「テレビカー」である。残念ながら、テレビは取り外されている。京阪電気鉄道と大井川鐵道では、軌間(レールの間隔)が違う為、東京営団地下鉄(現・東京メトロ)の台車に履き替えている。転換式クロスシート備え、主力3車種の内では、最も普通の乗り心地である(※)。


(3000系。)

(車内。)

【大井川鐵道420系/元・近畿日本鉄道6421系→のち420系】

元・近鉄特急車両。近鉄時代に格下げされた為、客用乗降口が三扉に改造され、塗色は16000系以前の旧近鉄特急色になっている。千頭駅構内の側線に留置されており、休車状態である(※)。吊り掛け駆動、冷房が無い車両になっている。


(千頭駅側線に留置されている420系。)

◆電気機関車◆

昭和24年(1949年)に電化が完了したが、最初の2年間は電車が導入されず、電気機関車牽引の客車列車が運行されていた。当時は、終戦直後の物資の乏しい時期であり、現在走行している国鉄旧型客車の様な立派な車両ではなく、鉄道省払い下げの古い車両や、エンジンを降ろして付随車化されたガゾリンカーを牽引していた。電車導入後は、貨物列車の牽引に使われたが、昭和58年(1983年)に貨物は廃止された。SL列車復活後から現在は、後部補助機関車や構内入換機関車として活躍している。

合計6両在籍し、3両が稼働し、3両が整備中になってる。SL列車の後部補助機、ビール列車等のイベント列車牽引の他、時々、電力会社の単発契約の貨物列車や工臨(工事用臨時列車)を牽引している。

形式 E10形 2両 E500形 1両 E31形(二代目) 3両
車番 E101・E102 いぶき501 E32・33・34
発注会社 大井川鐡道(自社発注) 大阪窯業セメント 西武鉄道
製造会社 三菱 日立製作所 西武鉄道所沢工場
製造年 昭和24年 昭和31年 昭和61年(E32・33)
昭和62年(E34)
大鐵入線年 昭和24年(電化時) 平成12年 平成22年
電流圧 直流1,500V 直流1,500V 直流1,500V
軸配置・
駆動方式
B-B 吊り掛け B-B 吊り掛け B-B 吊り掛け
全長 12.8m 12.6m 11.0m
全幅 2.7m 2.7m 2.7m
高さ 4.1m E102は+0.1m 3.8m 4.2m
自重 45.0t 50.0t 40.7t
一時間定格出力 600kW 600kW 520kW
一時間定格
引張力
7,000kg 9,000kg 5,300kg
デッキ あり あり なし
運転席窓庇 E101なし E102あり あり なし
特記 E101はタイフォン
E102はタイフォン
+ホイッスル
箱型二灯前照灯
最高速度65km/h
整備中 重連総括制御可
国鉄80系電車台車DT-20A

【E10形/101・102】

大井川鐵道が電化した際、自社発注したオリジナルの40t級電気機関車。現在も主力機として使われている。国鉄の旧型電機機関車EF15(長さ17.0m、自重86.4t、1時間定格出力1,900kW)に似ており、ふた回り小さいが、当時の民営鉄道向け電気機関車としては大きく、牽引力もある。また、日立製のE103号機も導入されたが、廃車状態であり、千頭駅構内に留置展示されている。


(E10形102号機。電気機関車としては珍しい、タイフォンを装備する。)

【ED500形/いぶき501】

元・大阪窯業セメント発注の50t級電気機関車。昭和31年(1956年)の日立製になっており、同社伊吹工場で使われ、「いぶき」号の愛称がある。E10形よりも、やや低く、肉薄感のある屋根と箱型ヘッドライトが特徴である。平成11年(1999年)に、同社専用線の廃止により、大井川鐵道に譲渡された。

なお、いぶき502号機も同時譲渡された。平成12年(2000年)の中部国際空港埋め立て工事の際、三重県の三岐鉄道(さんぎ-)に、501は貸与、502は再譲渡された。埋め立て工事終了後、501は返却されたが、502は三岐鉄道三岐線の西藤原駅に静態保存された(※)。


(後部補機仕業中のED500形いぶき501号機。)

【E31形/32・33・34】

元・西武鉄道の40t級E31形電気機関車(二代目)である。長らく、貨物や工臨列車の牽引をしていたが、西武鉄道の廃車に伴い、平成22年(2010年)9月に大井川鐵道に譲渡された。活躍中の旧型電気機関車のE10形(101・102)やED500形(いぶき501)の後釜と言われているが、まだ、本線運用に入っていない(※)。この電気機関車も、大井川鐵道の保存鉄道の方針に従い、ほぼ、西武鉄道時代の仕様のまま、運用される予定である。

E31形は、オリジナルのE10形と比べると全長が約2m短く、出力も約13%小さくなっている。未確認情報であるが、E33号機は部品取り用らしい。なお、トップナンバーのE31号機は、西武鉄道で保存されている。


(E34、E32、E33号機が順に並ぶ。千頭駅にて。)

E31形の台車は、国鉄80系電車の台車を流用したものである。


(E31形の台車。)

(E31形の連結部。)

(つづく)


(※3000系)2014年に廃車された。
(※420系)解体された模様。
(※いぶき502)2015年に解体された。
(※E31形)2017年に、E34が本線運用可能になった。

2017年7月31日 ブログから保存・文章修正・校正
2017年8月4日 文章修正・音声自動読み上げ校正

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