長鉄線紀行(2)洲原へ

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【停車駅】〓主な鉄橋
富加636=〓=関富岡==関口==刃物会館前==646関
下り北濃行(ナガラ300形(305)単行)
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富加駅を発車し、田畑と住宅地が入り交じった真っ直ぐな線路を高速で走る。平野部である為、カーブ曲線もかなり緩やかになっており、速度も落とさない感じである。関富岡駅と関口駅を過ぎ、西に向かっていた線路は、お椀を伏せた様な「一ツ山」と呼ばれる小山の右横を過ぎると、90度近く右に大きくカーブをする。北に進路を変え、左右に住宅が建て込んでくると、刃物会館前駅に停車。ここまで来ると、もう、関市の中心部に近い。

6時46分に有人駅の関駅に到着し、列車交換の為に7分間停車するアナウンスが入る。交換待ちが多いのも、急ぎ過ぎない、のんびりとした国鉄時代を思い出させる鉄道情景でもある。この関駅は、大正12年(1923年)10月に美濃町駅(現・美濃市駅)まで初開通した時に開業した駅になっており、起点の美濃太田から12.0km地点、7駅目、所要時間約20分、関市東桜町、標高58mである。国鉄時代は、美濃関駅の駅名であったが、長良川鉄道発足時に関駅に改称した。


(駅名標。)

また、700年の歴史のある刃物の町として有名である。鎌倉時代、九州から高名な刀匠が移り住んだのが始まりとされ、戦国時代までは、「兼元」や「兼定」に代表される日本刀の名刀の産地として、全国に名を馳せた。平安の世になった江戸時代以降は、包丁や農機具等の家庭用品の名産地として栄えた。

少し時間があるので、ホームに降りてみよう。本日運行予定の「臨時快速さわやかおくみの号」が、ホーム西側の側線に待機している。

この富士重工製のナガラ200形(201)は、平成6年(1994年)にイベント用車両として、1両のみ新製された車両になっており、16mの車体に250馬力エンジン搭載を搭載している。国鉄気動車風の平面運転席窓と、長良川をモチーフにした大きなイラストが、車体側面に描かれているのが特徴である。


(ナガラ200形201。)

駅舎を見ると、年期が入った立派な黒瓦葺きの木造平屋になっている。構内は二面三線の配線であるが、ナガラ200形が留置されている一番西側は乗降に使われていない。また、駅舎南隣には、長良川鉄道本社と車両区(車両基地/検査修理工場)がある。

構内踏切中央の2本の支柱の装置は、列車接近警報機のセンサーである。改札口は、ワンマン運転開始時に廃止されたらしい。また、この関駅には、平成17年(2005年)まで、路面電車の名古屋鉄道美濃町線が岐阜方面から乗り入れており、下りホーム南側に専用ホームが隣接していた。


(関駅も、対向式ホームの中央部に、構内踏切がある。)

(構内踏切と改札口。庇状の旅客上屋の下に、接近警報機とスピーカーがある。)


(グーグルマップストリートビュー・関駅前と長良川鉄道本社)

駅舎南側には、車両検修区(車庫・検査修理工場)がある。暗くて見え難いが、車庫内に2両留まっているのが見える。この列車の運転士のM氏曰く、気動車は全部で11両あるとの事。


(車両検修区。)

わざわざ車内までやって来た駅員氏から、1日フリーきっぷを発券して貰う。すると、上り列車のナガラ500形(501)単行も到着し、発車時刻になる。なお、列車交換が多いが、美濃太田駅から美濃市駅間の朝夕時間帯のダイヤは、単線でありながら、30分間隔の運転になっている為であろう。

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【停車駅】
関653==関市役所前==関下有知==松森==702美濃市
下り北濃行(ナガラ300形(305)単行)
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6時53分に関駅を発車。この先の線路も、ほぼ真っ直ぐに北進する。関駅から、観光客風の中年女性客が数人乗車し、車内も少し賑やかになった。関市役所前駅から関下有知駅(せきしもうち-)までの右窓には、一面に青々とした田圃が広がっているのが見える。窓を開け、爽やかな風を受けながら、景色を堪能しよう。

県立高校に隣接した関下有知駅から松森駅までは、上り勾配になる。15kmポスト付近から山間のピーク越えとなり、一時、森の中に入って行く。進行方向正面の高低差のあるコブがふたつ並ぶ松鞍山(標高316m)を目指す様に走る。


(国土地理院国土電子Web・松鞍山周辺)

松鞍山の西麓を廻り込み、東海北陸自動車道をアンダーパスし、山際から離れると、関駅から約10分で美濃市駅に到着。ホームより一段低い位置に駅舎があり、屋根のみが見える。この美濃市には、うだつの古い町並みが残っている。帰りに寄ってみよう。

大正12年(1923年)10月の越美南線初開通時に開業、当初、美濃太田駅から美濃市駅までの開業であった。起点の美濃太田から17.7km地点、11駅目、所要時間約35分、美濃市亀野町、標高90mの有人駅になる。長良川鉄道で一番新しい車両のナガラ500形(503)単行の上り列車と交換となり、お互いに汽笛の挨拶を交わし、7時6分に発車する。


(ナガラ503は、長良川鉄道発足時のオリジナルカラーになっている。)

(美濃市駅を発車。側線2本と貨物ホーム跡も残り、保線用車両が停まっている。)

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【停車駅】〓→長良川本流を渡る鉄橋、】【→トンネル
美濃市706==梅山==】【=湯の洞温泉口==〓】【==713洲原
下り北濃行き(ナガラ300形(305)単行)
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美濃市駅を発車する。山の裾野の木立の中を暫く走り、切り通し部を抜けると、駅の真横に高校がある梅山駅に停車。この梅山駅は、濃尾平野の最北端に位置し、長良川沿いの狭い川谷に入る玄関口になっている。この梅山駅を過ぎると、人里から離れた深い森の中に入って行く。線路の両側の木立も高く、あまり展望は良くない区間である。なお、峠越えではなく、勾配やカーブは緩やかになっており、かなりの高速で走り抜ける。

長い緩やかな上り勾配を走ると、次の湯の洞温泉口駅の手前から、左窓高台下に長良川が見えて来る。この付近から、鉄道、国道、長良川が狭い川谷に並走し、長良川鉄道の川線としての見所の始まる。


(湯の洞温泉口駅手前の長良川。)

長良川鉄道の一番目のトンネルを抜け、下り勾配を減速して行くと、湯の洞温泉駅に到着。この駅は、ホームに大きな藤棚や花が植えられており、長良川鉄道一の花の駅になっている。昔は、列車交換設備があったが、現在は撤去されており、その名残なのか、この駅で折り返す列車も何本か設定されている。途中駅の単式一線の本線上の直接折り返しは、今は珍しい。湯の洞温泉は、長良川を渡った対岸の山の中にあり、少し離れている。
マピオン電子地図・湯の洞温泉

湯の洞温泉駅を発車。川の周りは明るく開けているが、もう、山は結構深い。山側から川側に寄ると、第一長良川橋梁を渡る。その後、直ぐにトンネルに入る。なお、長良川本流を渡る鉄橋は9本あり、目まぐるしく車窓が変わり、目が離せない。列車の速度も、ローカル線としてはかなり速い。


(第一長良川橋梁を渡る。高速道の橋と上下二重橋になっている。下流方を撮影。)


(国土地理院国土電子Web・第一長良川橋梁付近。)

トンネルを抜けると、速度を落とす。赤いトラス橋が右手に見えて来ると、洲原駅(すはら-)に停車。近くには、鯉のぼりの川渡しが、気持よさそうに泳いでいる。駅の周辺には、大きな集落はなく、県道の赤いトラス橋を渡った対岸にある。


(洲原の鯉のぼりの川渡し。)

単式ホームの無人駅である洲原駅を発車する。隣の道路は、長良川に沿って北上し、白川郷を経由し、富山県高岡市まで結んでいる国道156号線である。奥美濃・郡上八幡方面への唯一の主要国道の為、交通量も多い。


(洲原駅を発車。最後部から、後方を撮影。)

(つづく)


2017年8月16日 ブログから保存・文章修正・校正
2017年8月17日 文章修正・音声自動読み上げ校正

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