知多蔵めぐりの旅(1)名古屋鉄道豊橋駅から知多半田駅へ。

静岡県東部の岳南電車(がくなん-)と名古屋鉄道蒲郡線(がまごおりせん)の取材の途中、丸一日は、あまり訪れる機会のない、愛知県内の観光をしようと考えた。

名古屋鉄道沿線をキーポイントとし、候補地はいくつか考えたが。知多半島か有名な犬山城や明治村、もしくは、名鉄線を利用せずに渥美半島にしようかと悩む。とりあえず、愛知県東部の玄関駅である豊橋駅まで向いながら、考えよう。今旅のベースホテルとしている掛川駅前のビジネスホテルには連泊をするので、着替えなどの大きな荷物はホテルに置いてあり、たすき掛けの小型カメラバックだけの軽装である。

朝一番の下り東海道本線岐阜行きの列車に乗車し、7時前に豊橋駅に到着。平日の朝なので、駅のコンコースは慌ただしく、通勤通学の人々が往来している。実は、豊橋到着時でも、まだ行き先を決めかねていて、改札前で暫く思案していたが、改札横に名古屋鉄道の有人出札口があるので、ちょっと聞いてみよう。


(朝の豊橋駅在来線改札口。新幹線停車駅でもあるので、立派な駅になっている。)

朝の慌ただしい中、恐る恐る、「どこか、お勧めの場所はないですか?」と尋ねてみると、発券業務の合間に3-4人の出札係が総出で対応してくれた。色々と話を聞くと、「初めての訪問ならば、知多の半田周辺が良いですよ」とのこと。知多半島には、焼き物で有名な常滑(とこなめ)もあるが、意外に見所が少ないそうで、半田ならば、歴史のある蔵も沢山見られるらしい。

出札係の人達の勧めで、半田方面に行くことにしよう。愛想の良い中年の出札係氏が、観光パンフレットと名鉄路線図を引き出しから探して渡してくれ、名鉄の1日フリー乗車券「まる乗り1DAYフリーきっぷ」(大人3,100円)も発券して貰う。また、8時を過ぎれば、名古屋方面行きの列車の混雑も少なくなるとアドバイスを受け、もう少し待ってから出発することにする。お礼を言い、朝食をまだとっていなかったので、改札内コンコースにある喫茶店に入る。

焼き立てパンとコーヒーをとりながら、パンフレットを見て、大まかな予定を立てる。半田とその南の武豊(たけとよ)も、蔵の町らしいので、両方行ってみようと思う。散策マップや詳しい情報は、駅か現地の観光案内所で入手しよう。

8時を過ぎたので、人々の流れに乗って、名古屋鉄道の3番線ホームに向かう。朝の8時台と言っても、東京程の窮屈な感じはなく、列車のホーム到着時に混む感じで、車内も新聞が広げられる程度の混雑である。名鉄の車両はロングシートの通勤型電車であるが、特急列車にはリクライニングシートの特別車両が併結されているそうで、別に特別車両券(360円)を買えば利用できる。名鉄では、「ミュー(μ)チケット」と言うらしい。


(右隣1・2番線はJR飯田線ホームになっており、名鉄は乗り入れている感じになっている。なお、線路配置の関係で、名鉄線と飯田線は入線と発車に相互制限がある。)

名鉄線3番線とJR飯田線1・2番線ホームは、頭端式の様になっている。丁度、名鉄岐阜行き特急の発車間際であり、どんなものかと思ったので、ホーム頭端にある特別車両券出札口に行き、前の乗客に倣って購入しよう。特別車と言う言葉も関東では聞き慣れず、戸惑ったので、乗務員室窓から身を乗り出した車掌氏に聞くと、そのまま最後尾方の車両に乗車すれば良いと言う。普通の通勤電車に、関東で言う通勤ライナーの指定席の車両が、付いているみたいな感じである。

豊橋寄りの2両が、乗降デッキ付きの特別車になっており、座席も指定になっている。乗車率は30%程で、通勤客と観光客が半々の感じである。座面が国鉄やJRよりも低いのに驚く。車内は昭和の特急デザインが満載で、豊橋方先頭車両は展望車(パノラマカー)になっている。

なお、名鉄全線乗り放題の「まる乗り1DAYフリーきっぷ」は、10時から16時まで、特別車フリーの特典が付いているのが面白く、関東民鉄には見られないサービスである。但し、席の指定は出来ず、空いている席に座れば良いとのことだが、指定席客が来た場合は席を譲るルールである。


(名古屋鉄道本線特急の特別車の様子。懐かしい昭和の雰囲気と厚いシートが良い。)

(名鉄まる乗り1DAYフリーきっぷとミューチケット。)

半田最寄りの知多半田駅までは、この豊橋駅から名古屋方面に向かい、途中の神宮前駅で下車し、河和線(こうわせん)に乗り換えになる。神宮前駅からは、特急も含めて行ける。定刻の8時15分に豊橋駅を発車して暫くすると、車掌氏の車内検札が始まる。名鉄特急の車内放送は、学校風電子チャイムの後に肉声の案内であるのも、懐かしい昭和のままのスタイルである。

列車は豊橋市街を抜けると、山がちな緑の多い車窓になり、名鉄特急の本領発揮となる。国鉄時代から名古屋・豊橋間のスピード競争で有名な名古屋鉄道本線は、同じ狭軌路線ながら、直線区間では飛ぶように走り、度肝を抜かれる。デッキ扉上の速度表示器は、時速100km前後で、長い直線区間では115kmを示すこともあり、新設路線を除く国内在来線の最高時速上限120kmに近い(※)。これと比べると、関東大手民鉄の古い路線は、割りとのんびりと走るものだ。また、名古屋鉄道本線に乗車するのは初めてであり、見知らぬ駅ばかりなので、注意深く、貰った路線図と現位置を確かめる。

なお、名古屋鉄道は、中小の地元鉄道会社が頻繁に合併を繰り返した会社なので、本線の歴史は複雑であるが、愛知電気鉄道として、大正6年(1917年)に神宮前駅から四駅豊橋方の笠寺駅(現・本笠寺駅)まで、開業したのが始まりである。昭和2年(1927年)には、神宮前駅から吉田駅(現・豊橋駅)までが開業し、昭和10年(1935年)に、現在の名古屋鉄道に社名変更をしている。

特急は、国府(こう)・東岡崎・新安城(しんあんじょう)・知立(ちりゅう)の四駅のみに途中停車し、豊橋駅から62.2km・所要時間約45分で、神宮前駅に到着する。もうここは、名古屋市内の駅であり、三駅先(特急は二駅先)は名鉄名古屋駅である。

二面四線の中規模駅であるが、半田方面の河和線と中部国際空港セントレア方面の空港線が分岐しているので、名古屋方面との直通列車の発着は数分おきと非常に忙しく、発着の度にホームも混雑している。しかし、暫く眺めていると、6-8両編成の特急が発着するかたわら、ローカル線並みの2両編成の普通列車や準急が、この繁忙な本線を走って来るのも、関東では見られず、面白く感じる。また、名鉄と言えば、吸い込まれるようなスカーレット一色の車両が有名であるが、最近の車両には白色、銀色や帯付きもあり、列車種別などに応じて、2両、4両、6両、8両編成と柔軟に編成されている。

なお、JR東海道本線が横に走っているが、ここでは旅客接続はせず、500m名古屋寄りにあるJR熱田駅が、最寄りの接続駅になっている。時折、JR東海313系電車が、けたたましく猛スピードで通過して行く。


(神宮前駅を発車する特急名鉄岐阜行きパノラマスーパー1000系。運転席は1階にある。)

(伝統色スカーレットトレインの普通金山行き6800系2両編成が到着。)

9時18分発の河和線・知多新線特急内海行き6両編成に乗り換えになる。知多半田駅までは三つ目なので、特別車には乗らず、転換クロスシートの一般車に乗車する。河和線は終点のひとつ手前の駅まで、複線になっており、太田川駅で空港線と分岐すると、時速100km前後の高速運転と普通列車を追い抜き、田畑が混在する町中を走って行く。この付近は、なだらかな丘陵地帯になっている。

次第に田んぼが多くなり、長閑な車窓になってくると、所要時間約20分で知多半田駅に到着。半田駅は高架駅になっており、駅の階段を降りると、大きなロータリーがある。気温は低く、風も少しあるが、日差しは暖かい快晴なので、今日一日大丈夫であろう。なお、時刻は9時40分を過ぎた所である。


(知多半田駅に到着。丁度、特急同士の行き違いになる。)

(名鉄知多半田駅の東口。)

橋上の改札口から、半田の中心地方面の東口に降りてみよう。階段下には、ふたつの観光案内板があり、駅周辺の見所を簡単に紹介している。運河や蔵の他、レンガ建物もある。また、童話「ごんぎつね」で有名である、昭和初期の児童文学作家・新美南吉(にいみなんきち)の故郷になるとのこと。確か、小学校の教科書に載っていた覚えがある。


(階段下の観光案内板。)

(半田市についての観光案内板。)


(YouTube【ごんぎつね】新美南吉の童話朗読・動く絵本/日本の昔話。※音量注意、再生3分38秒。)

(つづく)


(※在来線の速度上限)
旧来の在来線の最高速度上限は、時速120km(一部に130kmあり)であるが、新設の在来線では、時速160km運転をする路線があり、国内在来線の最高速度になっている。京成成田空港線のスカイライナー、北越急行ほくほく線の特急はくたか(現在は廃止)がある。時速90km以上の走行は、踏切安全性や高い線路保守技術、車両の高ブレーキ性能が求められる為、コストも掛かり、主要幹線を除いて、開業の古い路線やローカル線は難しい場合が多い。

【参考資料】
名鉄沿線のご案内・名鉄路線案内図(名古屋鉄道発行・2015年)
知多半島ぶらぐる散歩(知多半島観光圏協議会・名古屋鉄道発行)

2018年4月22日ブログjから転載・校正。

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